ニコン AFマイクロニッコール60mmF2.8Dをいじるの巻

今回試したのは「ニコン AFマイクロニッコール60mmF2.8D」。調べてみると実は発売日が1993年の暮れだったりして、使う前に軽いショックを受けました・・・まだまだ現役なんだね、君!すっごいよ!
私自身はE-M5/E-P5にCanonの旧MFレンズ「NewFD50mmF3.5」の組み合わせで愛用しているもので、よくよく考えると「マクロ撮影はMFが基本・AF性能は大して問題にしない」方も多いのでしょうかね?

MF/AFはヘリコイド手前のリングで切り替えます。

今回試用にあたって「普段使ってるのが50マクロ・・・でもマイクロフォーサーズで使ってるんだよね」と35判換算の事が頭をよぎりましたが、「FX/DX切り替えれば似た感じでいけるんじゃね?」と云った安易な信頼感をこのレンズに抱きつつ、レモン社から自宅へとお持ち帰りさせていただきました。

お持ち帰りの目的は、朝しか咲かない花を撮りたかったからでして。ところでこの花は朝顔って事でよろしいんでしょうか・・・

F6.3AE NewFD50mmマクロよりシャープな印象でした。

小学生の観察日記的な生え方ではないので、単に「朝咲いてて帰宅時には閉じてる朝顔的なアレ」と普段認識している近所の花です。正面からのアップではこんな感じに。

F9AE。結構奥行きが出ているので絞りました。

絞り開放で素敵なイメージを作り上げる方もいらっしゃいますが、被写体が風で揺れる・自分の膝が笑う等の事情から、個人的にはマクロ近接時はそこそこ絞る事が多いです。
そして目を振れば足下には露草も群生していました。

こちらも昼頃には閉じてしまいます。

古くから和歌にも詠まれてきたこの露草、指先に摘んで軽く「わしゃわしゃ」するとあっと云う間に指が真っ青になります。愛人の元に通った男が帰り際に露草に裾をうっかり絡ませ、帰宅後に青く染まった裾を見遣りながら後朝の和歌を女に送る・・・なんてのがお決まりの万葉・平安恋愛パターンだったりします。尚、この染まった青、結構落ちやすいのも事実です。すぐに閉じてしまう事も併せて、移り気・儚さを感じさせる可憐な雑草さんです。

F7.1AE なんとなく二股っぽい印象も・・・

この印象的な青い花、昼頃にはすっかり閉じてしまいまして、ぱっと見にはどこに露草があったか判らなくなります。花の後ろに袋状と云うか二枚貝的な構造がありまして、その中に花が収納されてしまうんですね。

作業中。でもこれから咲く?それとも閉じる?

つまりこんな具合です。こんな隠れんぼもあと一月ちょっとで今年は見納めだな、と思うと確実に夏の終わりが近付いているのを感じます。

60mmと云う焦点距離、当然FXモードであればほぼ標準的な使い方も楽しめますので。スナップにも対応できます。

F5.6AE お、俺の角に何してくれるんじゃ~!

AF方式は古いですが、動き自体はキビキビした印象です。シングルAFメインの方では、AF-Sよりこれらのタイプの作動感を好まれる方がしばしばいらっしゃるようですね。

ところでDXモードに切り替えれば90mm相当の画角になりまして、この点フルサイズ機とAPS機を完全別システムにしているC社よりも応用が効くのが嬉しいところです。

DXモード F6.3AE 私の小指の爪と同じくらいの大きさでした。

DXモードでほぼ最短距離、約22cmで撮影

ライカⅢFのシャッターダイヤル部のアップをば。膝が笑い始めたのでちょっとピントの位置がずれていますが・・・ま、これくらい寄れます、と云う事でご容赦下さい。

こちらもDXモード F7.1AE


萩が風に揺れる・・・風情のある光景が浮かぶかも知れませんが、マクロ撮影時には厄介な現象だったりします。

マイ
クロニッコール60mmF2.8D

距離を詰められないこの時もDXモードでフォローしました。

こうなると歩留まりの問題、風が緩む一瞬に賭けて連写です。
まだまだ暑い日ではありましたが、萩って秋の七草ですよね。「くさかんむり」に「秋」ってくらいですから。やっぱり夏は終わりに向かっていますね・・・


マクロのお楽しみの一つに「昆虫・小動物」があります。撮影する事自体も楽しいのですが、マクロレンズで小さな者達の世界を覗いているうちに何か自分の世界もあちら側に引き込まれるかのような愉楽があったりするわけですね。さらに云えば、虫とか撮ってるうちに童心に還ってたりするのもまた楽しいものでして・・・

DXモード F8AE 見事な迷彩でした。

バッタさん、写真ではきっちり見えますが、実際には背後に上手く溶け込んだ色調・質感でして、こういった存在を目敏く見つけていくのもお楽しみになっていきます。

DXモード F10AE

シオカラトンボに身体ごとズームイン!にも程があるのでこちらもDXモード。時間をかけて観察しているうちに、何となく距離の詰め方が上手くなったりするのが子供っぽくも嬉しいものです。F10まで絞ってはいますが、それでも羽の先端・尾部は被写界深度から外れています。ま、これ以上絞っても木目が煩くなるかとも思います。

DXモード F6.3AE

こちらはシジミチョウの仲間。多分、浪越さんの親指の爪よりも小さいと思います。多分。
ファインダーではきっちり見えていたのですが、実はF8以上に絞るつもりだったのに操作を忘れていまして・・・拡大すると羽の模様、先端の方がボケかけていました。反省・・・

こちらはセセリチョウ。やはりDXモード。

気がつくと、昆虫・小動物相手の時は圧倒的にDXモードを多用していました。フルサイズ機であれば使い方・楽しみ方も増えそうデスね。
ただし、昆虫狙いの際には「一度で良いから200mmマクロに挑戦したい」という欲求も沸々と。60mmでジワジワと距離を詰めていくのも良いのですが、近付きたくない相手もままおりまして・・・
実はこの日、キイロスズメバチにすごまれまして。水溜まりで休憩中のキイロスズメバチに近付いたところ、約1mで警戒態勢に入られてしまい(心拍数急上昇)、1枚も撮影できませんでした。これから秋が始まれば、スズメバチの攻撃性はもっと増えるかと思いますので、皆様も不用意な近接撮影にはご用心下さい。


最後は日常的なスナップ撮影から2枚ばかり。

FXモード F7.1AE 二の鳥居を過ぎた石段途中でキイロスズメバチと遭遇

通常撮影でも立派な解像力を持ち、木の葉の一枚一枚がしっかり写し込まれています。デジタルカメラなんて何かの冗談?なんて時代に生まれたレンズですが見事なもんです・・・って云いながら。雑誌等で「設計が古い」「デジタルのセンサーを意識していない設計」とかあれこれ云われるレンズ達だって、結構良い仕事してるんですよね。
私の手元にある20世紀のレンズ諸君、君達だってまだまだ頑張れるぞ!

F5.6AE FXモード

マイクロニッコール60mmF2.8D
レンズ構成:7群8枚
最短撮影距離:0.219m
最大撮影倍率:1.0倍
フィルターサイズ:62mm
絞り構成:7枚
質量:440g
寸法:φ70x745mm