今回は古くからのレモン社のお客様、写真家の吉野? 信様からいただいた寄稿文を掲載させていただきます。
お忙しい中御寄稿いただいた事、厚く御礼申し上げます。
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写真家人生 吉野 信
? 僕が本格的な写真というものに目覚めたのは、デザイン学生の時。写真の授業でフイルム現像をはじめ、基礎的なことをいろいろと学んだのだった。卒業した後、2年ほど会社勤めをして写真事務所のアシスタントを経て、29歳の時フリーの写真家として活動し始めたが、当然のこと、使ったのはフイルムカメラだった。
最初からの目的が、野生動物の撮影だったからレンズは超という文字が付く望遠レンズが必然だった。必要に応じて、400、600、800ミリのレンズを購入し、使いまくったが、最初はフイルムさえ思うように買えなかったから、機材も最小限度のもので我慢した。
しかし、50歳に近づいたころ、いわゆるクラシックカメラに目覚め、ライカをはじめとして、使ってみたいいろいろなサイズのカメラとレンズを買い始め、キャビネットからはみ出すぐらいになってしまったが、どのカメラも設計者や技術者たちのアイデアと英知に満ちていて、それを持つだけで幸せな気分になった。とはいえ、集めて触るだけでなく必ずフイルムを通して撮影に臨んだ。そんな僕自身の経験と思いは、僕自身の著書、「アナログカメラで行こう、Ⅰ、Ⅱ」と「ブロニカ」に写真と共にまとめて出版されている。
もちろんのこと、かなりの数の写真集も出版されたが、いづれもフイルムカメラで撮影されたものである。デジタルカメラ全盛の時代に、フイルムで写したものこそ写真であるなどと、反論する気持はないだけでなく、最近は野生動物の撮影には、主にデジタルカメラを愛用しているが、自然景観などの撮影には、今でも大型カメラでフイルム撮影を続けている。
こんな雑感はともかくも、僕自身は何と幸せな写真人生を送ってきたものだと感じている。カメラの機構にしろ、マニュアルからオートフォーカス、そして全自動からデジタルへと時代の流れと共に、いろいろなカメラを手にして使うことができたというのは、戦後に生まれ、70数年生きてきたという事実なのである。
さて、デジタルカメラはまだ発展進歩するのだろうが、それについていくかどうかは、自分でもわからないが、死ぬまだ元気でいる限りは、興味ある被写体を写し続けることは終わりそうもない。
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1943年日本の一角で生まれる
桑沢デザイン研究所リヴィングデザイン科卒業写真家事務所に勤務後、1972年フリーの写真家として独立以後、日本国内にとどまらず世界各国を訪れ、野生動物や自然景観の写真を撮り続けている。写真集や著書に、「ロッキーの野生」「アラスカの詩」「密林の王者・ベンガルタイガー」「アダ-ジオ」「アクアオデッセイ」「自然写真館全5巻」「野生のカメラ」「ネイチャーフォト入門」などがある。
現在、日本写真家協会、日本写真協会会員