ライカ親爺のうんちく(その又続き)

MLリング
 遥か昔、と言っても20年ぐらい前だろうか、キャノン製ライカスクリューマウント135/3.5(黒鏡筒)をM3で使おうと思い、一緒に国産のリングを買った。その後、レモン社がライカ社との取引を始めた時に純正のリングを買ったのだが、純正リングを使うと無限が出ないことに気付いた。リングを変えて無限が出ないのなら、リングが悪いのが分かったが、理由がわからなかった。
 或る業界関係の方に、リングの作り方をお聞きしたことをふっと思い出した。作り方は(株)コシナのHPに掲載されている“コシナこだわりの理由”をご覧いただきたいが、意外と手をかけて作っている。簡単に言うと①MLリングより大きい真鍮のリングを削って形を作る②クロームメッキを掛ける③レンズ側を基準にボディ側の面を削って厚さを調整するのだが、③の厚さ調整が曲者だ。ライカMマウントとライカスクリューマウントはフランジバックが、27.8ミリ対28.8ミリでスクリューマウントが厚い。レンズ面を基準として削って、1ミリの厚さを出すのだが、それを思い出した。どうやってリングの厚さを測ろうか?ノギスかマイクロゲージを持っていれば楽だが、買うのもばからしい!手元に治工具が無いのに、厚さを調べる為にはどうするか?厚みではなく、高さだ!ブラタモリではないが、段差だ!真鍮の削り出し面とメッキ面との段差を測れば、良い事に気づいた。手元にあったレンズリアキャップではじいてみると音が違う!部分的にではなく、何カ所か計ってみると、持っていた純正と国産では音が違う!高いと音は大きく、高さが低いと大きくない。それで、相対的に厚さが違う事を確認した。
 その後、最初のカメラの師匠(メーカーOB)宅にお邪魔した時、かくかく云々と申し上げたら、マイクロゲージをお持ちという事で、厚みを計らせていただいた。2/100だったか1/100か覚えていないが、純正が厚かった。厚さ確認のアイデアをお話したら、お前よくやるなあ!と呆れられた。それ以降、MLリングでピントが来ないという話は聞いたことが無いので運悪く、はずれを引いたとあきらめた。そのリングはどうしたか覚えていない。
KIPONのMLリングは、真鍮が見えない。作り方が違うのだろう。


見えている真鍮の部分で、リングの厚さの加工を行う。真鍮部分とその外周との高さの差を、音で調べた。