今回はsmc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limitedを使ってみました。
登場は2002年。AFレンズとしては超ロングセラーレンズと云えるレンズですが、当時はまだまだ銀塩一眼レフが今ほど追い詰められていない時代。PENTAXさんが初のレンズ交換式デジタル一眼「ist D」を投入するのはそれから1年と少々後の事でして、当然ながら35判カメラで使用する前提ですから「フルサイズ」カバーレンズなのです。なのですが・・・現状、PENTAXさんからは「フルサイズ」デジタル一眼機は「K-1」しか出ておらず、残念ながら今回の使用ボディはK-5となりました。普及価格帯のフルサイズ機が待たれるところです。
●外観・操作性
本来は大口径広角レンズとして登場したFA 31mmF1.8AL Limited。「Limited」を名乗るだけあって外装・操作の感触は上々です。私個人はマイクロフォーサーズ使いでして、換算30mm相当の某レンズを愛用していますが、35mmでも28mmでもないこの焦点距離が実は扱いやすかったりします。単焦点35mmを中途半端に感じられる方にはオススメしたい・・・と云いたい処ですが。これは唯一のフルサイズ機、K-1ユーザーさんの特権でしょう。
現状APS-C機で使われる事が多いとなると、開放F1.8の標準レンズとして使う事になります。
又、一体型のフードは大変カッコ良いのですが、標準レンズ用としてはちょっと寸足らずな感を否めません。聞いた話ですと、このレンズに対して「魔改造ウェポン化」と呼ばれるフードの延伸処置を行う方々もいらっしゃるようですね。
MF操作はちょっと軽い印象です。AF操作は・・・ホールディングの際にフォーカスリングをしっかりKEEPしていると、急にフォーカスリングが回転しようと暴れだしてちょっとビックリします。AF作動&音は、「登場から15年」と云う時間をしっかりと思い出させてくれる物でした。
●気になる?楽しい?色収差
特別に収差チェックをするまでもなく、あれこれと色収差が目につく事の多いレンズでした。場合によっては気になり、場合によっては色気を添えてくれるような微妙な印象・・・絞り開放でハイキー気味に撮ろうとすると、殆ど確実に現れます。
白い花弁のエッジにしっかりと色が乗ってしまいました、と云うべきか。色づいたと云うべきか。デジタル時代以前の設計でもありますので、あまりキツい事は云えませんが仕事としては問題アリの場合も出てくるのでは・・・?
次のカットも結構な色ノリでして・・・
あれこれとカラフルな文字が刻みこまれているようですが、少しずつ絞るにつれて右側の緑色の文字が黒っぽく変わっていきます。まさか、絞り値によって色が変わる塗料・・・だと?そんな事はないですよねぇ・・・
多少絞るにつれて色収差は目立たなくなりますが、F8程度でも画面周辺部では完全に消えるワケではなさそうでした。
上部左側の輪郭に、やはり色味が見られますが・・・
画像はとにかく拡大して見る!と云う方には問題アリかも知れません。
いやいや、写真の楽しみ方はそうじゃないだろ?とおっしゃる方には何とか許していただけるかな・・・と云ったレベルだと思います。
開放時には色収差のみならず、一緒に現れ易いフレアっぽさも意識した絵作りをした方が良いかもしれません。
●逆光
時代的にも逆光には気を遣うハメになるだろうと覚悟してはおりましたが、太陽を入れたシチュエーションでは多少コントラストが下がる、分かりやすく小さいゴーストが出る、と云った程度で収まりました。
いずれも同じような場所に同じような色のゴーストが出ています。
画面からギリギリ太陽を外したシチュエーションでは・・・
今回目についたフレアはこの1回だけとなりました。
そう云えば、徐々に陽が高くなりつつあるのを感じる今日この頃。昼間は、余程上向きアングルでない限り大きな影響は無さそうです。
●甘い開放/絞れば凛々しい描写
先日、Nokton 25mm F0.95を使って「開放はハロハロだな・・・」と感じたものですが、今回のFA 31mmF1.8AL Limitedも又、開放時のハロっぽさが・・・と云うか、正直、開放は甘いです。厳しい人は緩い、とか弛んでる、くらいの表現をするかも知れません・・・
遠景をちょっぴり絞ったF4.5で撮りますと・・・
やや逆光気味の観覧車に合焦しています。まぁ、際立ったワケではないけど問題も無い描写ですが・・・これが絞り開放ですと。
もやぁ~んとした眠ったい絵が出てきます。確かに春霞の頃合ではありますが・・・
あまり精細な描写を期待していないシチュエーションではそれなりに楽しめますが・・・
実の処、絞り開放では「本当にピント来てんの?」としばしば疑問を感じる事がありました・・・上の写真なんかは、「どっかしらピントが来るだろうよ」程度の気持ちで撮影しています。
被写体との距離/背景との距離がある程度融通が利く条件であれば、ちょっと絞ってピントの芯を拾う方が無難かも。
そんなワケで、ちょっと絞ってみましたら。
絞り気味ではかなり凛々しい、スッキリした描写に一変します。
手前の舟に合焦していますが、背景もヌケ良く切れ良く描写されています。
近接でも、絞り気味ではとても安定した描写です。
ただし、最近のミラーレス機に慣れた方には近接能力はそれほど高く感じられないかも知れません。
F5.6くらいからの描写は、このレンズがまだまだ現役である理由をしっかりと教えてくれる描写です。
●ボケ具合
既に開放での写真を掲示しておりますが、先ずは玉ボケ具合を。
こんなアングルでは、バリアングルモニターの恩恵に授かりたいとつくづく感じます。
本来ですと画面端まで煌きが写りこんだカットが欲しかったのですが、生憎この日は風も穏やかでなかなか水面が輝かずこれが精いっぱいでした。いつもは風の強いエリアなんですが・・・
ボケ味自体は柔らかく素直な傾向です。
アップライトピアノに組み付けられた燭台ですが・・・譜面燃えたりしないんですかね?
ついつい「標準レンズ」のつもりでチェックしていましたが、本来この子は「広角レンズ」として生まれてきた事を忘れていました。
開放では画質よりも雰囲気重視で・・・なんて事を思いつつ、ちょい絞り気味で使うのが気持ち良いレンズでした。
レモン社 ;松浦
PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited
レンズ構成*7群9枚
絞り羽根:9枚
最短撮影距離:0.3m
寸法:φ65×68.5mm
フィルター径:φ58mm
重量:345g
お問合せはレモン社 又はナニワオンラインまで