EOS 5と視線入力AF

気が付けば、ファインダ内のかなりの面積が測距点でカバーされる時代になりました。測距点自体も小さく・沢山増える傾向のようで、愛機「元祖O-MD E-M5」とE-M1を比べても進化の速さ(愛機の旧式化)を感じるわけでして・・・まだまだ使えるけどねっ!

測距点を選んで見つめればそこに合焦、それが「視線入力」AF。                                  左が7点測距の「EOS 7」、右が元祖視線入力機「EOS 5」です。

ところでこんなに沢山の測距点から実際に使う測距点を選ぶには。
A:測距点まみれのファインダ内で一箇所自分で選んで設定。
B:測距点グループを選んで、あとはカメラの判断に託す。
C:他力本願。一切合財カメラ頼み。
等々でしょうか・・・現在は。

その昔、Canon EOS 5なるカメラがありました。今ではごく低廉価格のフィルム一眼として店頭で見かけることも多いかと。登場は1992年、EOS-1系のサブ機として使えるハイスペック機でしたがその新機軸は何と行っても「視線入力AF」なる機能でした。
EOS 5の測距点は横一列に5点でしたが、その後の後継機EOS 55、EOS-3、EOS 7、EOS 7s等にもその機能は進化しながら搭載され、EOS-3では45点の(当時としては凄い数)測距点を搭載するようになりました。

使いたい測距点を見つめればそこに合焦する。ちまちまとコマンドダイヤルやらジョグやらを弄るよりも余程素早く、感覚的に操作出来る・・・はずなんですが。

この機能、見事に賛否両論となりました。この視線入力、一部の方々にはまったく適切に反応しなかったようなのです。
EOS 5では5個まで目玉を登録(キャリブレーション)出来ました。これは5人各1個で登録しても構いませんし、2人の両目と1人の片目でも問題ありませんし、当然1人で1個だけの登録でもOKです。個人差、体調変化(朝・夕等でも差が出るようでした)等に対応する為に事前にカメラ側に登録しておくわけです。
困った事に「登録した時と測距点選択する時」のアイポイントにズレがあると、正常な選択が出来なくなる弱点があったんですねぇ・・・私の目玉では問題無く作動してくれたので、1:右目通常時、2:右目/撮影開始から半日以上経過時(極度に疲れてる時)、3:左目の3種登録で使っていました。
それでも「何だかなぁ」と思う点が無いわけでもありませんでした。

撮影スタイルによってはEOS 5の視線入力・測距点数ではまったく対応出来ないと云った問題がありました。そもそも縦位置に構えると内部センサー(小さなベアリングみたいな何か)がカメラの体勢を判断し、視線入力が作動しなくなってしまうのです・・・

そしてファインダ内左上の隅っこにあるプレビューマークの罠。
大まかにアングルを決めて→測距点を視線入力で選択→フレーミングの最終チェック・・・の時、このプレビューマークを見つめると、突如として絞り込まれちゃうのです。そうです。プレビュー機能も視線入力なのです!ちょっと視線が通り過ぎる位なら問題ありませんが、構図の都合上四隅をしっかり確認したい場合はほぼ確実にこの罠にはまります。ファンクションでAEロックボタンにプレビュー機能を振り分ける事が出来ますが、それでもファインダ内の罠は健在です。軽くイラつくこと請け合いです。

その後のEOS 3では測距点が45点と劇的に増加しましたが、結果として当然ながら測距点の分布が濃密になり・・・視線入力での測距点選択ミスも増加したようでして、45点フル活用しない方が多かった模様です。
そしてその後2004年のEOS 7sを最後に、視線入力搭載カメラは登場しなくなりました。

あまりぱっとしない事ばかり書いてしまいましたが、視線入力以外には大きな欠点が無く・・・あまり無く、例えば・・・電池大食い。そのくせ外部電源が単一型使用ってWhy?とか、外装があまりに安っぽいとか、モードダイヤルがすぐに固くなる→無理して回すと壊れるとか、MF操作には極度の集中力が要求される手ごわいスクリーン装備とか、ぐらいしかありません。

さて、そろそろ褒めてあげましょうかね。

カタログスペック上の連写速度は同等のPENTAX Q。EOS 5登場から19年後、2011年の発売。

当時としてはフラッグシップ機以外で連写速度5コマ/秒は立派なもので、EOS-1シリーズのボディ単体での連写速度を凌いでいます。最近のカメラとしてはどうと云う事もないスペックと感じられる方が多いかと思いますが、ボディ単体で3~3.5コマ/秒あたりのカメラが多かった時代としては優秀です。

上の写真のPENTAX Qと同じ連写速度ですが、Qちゃんは5コマ連写すると色々な内部処理に夢中になる子なので、連続撮影能力も実質5コマとなり、この点ではEOS 5の勝ちとなります。
また、シャッター作動音もかなり小さいので、小劇場等で撮影するのに向いているタイプのカメラでした。ま、この点はQちゃんの方が圧倒的に静かですのでEOS 5の負け・・・

そう考えれば現代のカメラと互角に戦えそうな気が・・・しないとしても、歴史に残るべきカメラの一つではあるのでした。

ところで私の記憶が確かなら、2,3年前にSONYさんが視線入力搭載カメラを発表するなんて噂が流れていた気がしますがどうなったんでしょうかね?
このままロストテクノロジーになってしまうんでしょうか・・・

?Canon EOS 5 注意事項
フィルム給送系に赤外線を使用している為、使用できない赤外線フィルムがあります。

オートデート機能の対応年月は2019年大晦日一杯なので、次回の東京オリンピックにオートデート機能を使うことは出来ません。

経年変化の為かなりの確率で外装ラバーがベタついていますので、お手に触れる前にお覚悟を。