魔法のトーン、ライカ ズマリット50mm 1.5 レビュー


こんにちは!カメラのナニワ京都店です。

今回ご紹介いたしますレンズは、ライカ・ズマリット 50/1.5でございます。

もし、私が数あるライカのレンズラインナップで、まずは何が使いたいと聞かれたら……。色々悩みますが…少なくとも、このレンズは確実に候補に入ります。


第二次世界大戦前、コンタックス用としてツアイスの名設計者ベルテレ博士の手によって1934年に生み出された「高速ゾナー」ことゾナー5cmF1.5に対抗する為、翌年シュナイダー社の鬼才トロニエ博士が開発しライツが発売したクセノン5cmF1.5を1949年に改良したのがこのレンズ。

絞り羽根の枚数実に15枚。絞り込まれる際、生き物のようにうねる様は美しく、どこまで絞っても常に円形を保ち豊かなボケ味を出してくれます。

ちなみにクセノンとの違いというと絞りの形状、クセノンは6枚絞りで少々いびつな六角形になる点と、細かい所では構成は同じながら前群レンズの僅かな形状差、新種ガラス採用とメッキの違いによる梨地の仕上げがあります。


この内部の細かい変更が大幅にハレーション抑制など光学的に精度を高める事になるのですが、ジャジャ馬レンズである事には変わりはなく、これは後のズミルックスでも前群の貼り合わせ部分が空気レンズに変更されるまで乗りこなしの難しいジャジャ馬っぷりでした。


絞り環を回すとスーッと進み、各値で沈み込むようにきっちり止まります。

ピントリングの無限遠ロックもカッチリ。

とにかくフィーリングが気持ち良く、ずっしりとした重みもあり、当時最高スペックを誇った大口径レンズらしい高級感ある造りを感じます。

当時はレンズ1本1本職人さんが僅かな研磨時のズレなどを油砥石などで微調整をしながら造っていたのですが、先の絞り羽根枚数や、極限を実現する為の緻密かつ繊細なチューニングがされているとあって、今の世では修理技術者の方泣かせだそうです。

さて、その実力やいかに。


ボディはマウントアダプタを介し、オリンパスペンE-P1での使用。

せっかくの大口径レンズ、まずは開放で撮ってみるに限ります。

このフワフワ、モゴモゴ・・・淡いベールがかかったような描写が癖になります。


50/1.5というスペックは、先ほど触れた「高速ゾナー」と同じですがあちらは滲むようなボケ感であるのにたいし、ズマリットは穏やかなボケ感ですね。
コーティング有でも逆光に弱いのはどちらも同様ですが、ズマリットの方が顕著かもしれません。

  
旧国鉄のEF15系車両。
二枚目は運転席。
青磁色のドアがどこか懐かしく、今となってはオシャレですね。
人工物を撮ると、開放寄りで柔らかな印象ですが……。


絞ると、ここまで劇的にシャープになります。

強い光源下ではフレアが出るのでわかりにくかったですが、こうしてみるとたしかな解像力を秘めている事がお解りいただけるかと思います。

余談ですが、日本初の新幹線であるこの0系新幹線は新幹線大爆破という映画では故・高倉健さんと同じく主演を張った車両です。


日も落ちかけた時間帯、とても印象的な写りが出ました。

レンジファインダーで使われた時代、開放付近ではピントがきっちりでているか不安になったかもしれませんが、画面で確認できるデジタル全盛の昨今、価値の出てきたレンズの一つであります。


夕方の水面。
ソフト感、空気感は花や人物に大変効果的ですが、水面の揺らぎの質感にもひときわ効果を与えてくれます。

ズマリットというレンズで注意すべきところは、前玉に使われている硝材がとても柔らかく、傷つきやすい事とレンズ全体が白曇りしやすいことが挙げられます。

すなわち、各個体で写りの差が大きく異なってきます。

今回、比較的状態のいい個体を使用しておりますが、状態の良いズマリットの描写は癖になること請け合いです。


ボケ味、にじみ、フレア。どれも場合によっては盛大に出ます。

ですが、その条件によってはたいへん美しい写真が撮れてしまう。

そんな魔力を持ったライカ ズマリット50mm 1.5、魅惑のベールの向こうに行ってみませんか