ミノルタ Gロッコール28/3.5(Lマウント)
こんにちは、カメラのナニワ京都店です。
今回ご紹介するこのレンズは元々、ミノルタのコンパクトカメラ
TC-1に固定で搭載されていたものでしたが、
1998年、ミノルタ自身が2000本限定でLマウント化して販売されました。
90年代各社競争となってこぞって出した高級コンパクトの流れを引き継ぐだけあり、
高級の名に恥じない、コストのかかった各部のつくりと鏡筒の仕上げが美しいです。
■TC-1のオリジナルレンズとLマウント版の違い
最短撮影距離がTC-1が45cmだったのに対しLマウント版の方は
距離計との連動を前提とした都合上、80cmとなっています。
構造上の最大の違いは絞り機構で、TC-1が完全円形の切り替え式の「板状」絞りだったのに対しLレンズでは従来のレンズと同様のクリックタイプの「絞り羽」の機構となっています。
完全円形絞りのTC-1は魅力的ながら、板を交換する機構の都合で
F3.5、F5.6、F8、F16の4種類のみしか選べませんが
Lレンズは各段階絞る事が可能なうえに、最大絞り値22までとなっています。
おおきく出っ張った後玉はホロゴン、ビオゴンなどの対称型広角レンズを思い出しますが、
元々コンパクトカメラ用のため、外側に出ず内側にめりこむ設計になっています。
構成自体は対称型ベースに1枚レンズを加え
レトロフォーカス型化した様なシンプルで珍しい構成となっています。
TC-1は未だに根強い人気を誇る名機ですが、
果たしてデジタルではどのような描写を見せてくれるのでしょうか。その実力はいかに。
■フルサイズ・デジタルで愉しむ周辺減光
京都河原町 四条大橋
今回、ボディはソニーα7を使用。
朝方の撮影。日差しが強いため、フレアが出ています。
ピントを合わせた部分、中心部のシャープネスは非常に良好で
TC-1の映りを思い出させてくれます。
橋から少し身を出して撮影してみるとダイナミックな周辺減光が現れました。
両カット共にですが周辺部のパープルフリンジも目立ちますねえ。
フィルムカメラで撮った場合でも減光はでますが
デジタルの場合は更に周辺減光が出やすく、
フルサイズのα7であるからこそ成せる画でしょう。
さながらシネマの様な雰囲気の、この周辺減光を愉しめるか否かで
このレンズの意味合いは違ってくると思います。
■ミノルタ独自の描写と、優れた周辺補正
5群5枚(内非球面レンズ2枚)と、レンズの構成枚数自体が少ないので
高コントラストかつヌケ感があり、本体重量もわずか110gしかなく軽量なため、
ストレス無く撮影ができます。周辺こそやや甘くなっていますが、
非球面レンズが2枚も使われているだけあって、歪曲収差は素晴らしく、ほぼ認められません。
絞ると周辺減光はやや改善されるものの、絞り過ぎると減光の形が硬くなってしまうので
開放付近から絞ってもf5.6位までにとどめて使った方が、その描写をより味わえると思います。
モノクロで撮った時の雰囲気も秀逸。
カラーで撮影した際、わずかに出ていた
後ろ玉の出っ張ったレンズをデジタルにつけた時特有の、
パープルフリンジや赤かぶりも気にならず雰囲気が増しています。
描写自体は全体的に見たときに、解像しつつも解像しすぎず
それでいてボケは柔らかくニュアンスをよく伝えてくれるというのは、
以前ご紹介した50年ほど先輩のスーパーロッコールからのミノルタの伝統に通ずるものがあります。
ミノルタオリジナル、まさに独特としか言いえない描写がここにありました