こんにちは、カメラのナニワ京都店です。
皆様、モノクロ写真というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
なんとなくかっこいい、ちょっと難解、昔っぽい…など、人それぞれですけれど、
いざ撮るとなると敷居が高いな・・・なんて思われている方も多いのでは?
そんな方の為に、今回はモノクロ写真の魅力と、
撮影をする際のちょっとしたコツをご紹介いたします。
■モノクロで撮るメリット
モノクロを始めたばかりならば、何を撮っても色でなく黒から白への明暗言わば「輝度情報のみ」で表現される姿が新鮮に映る事でしょう。
ですが慣れてくれば、色という要素からいったん離れていることで
それ以外の要素…構図であるとか、形、影などに集中しやすくなるので
カラーだとありがちな「綺麗な色をしているから撮ろう」ということも減り、
それまで見えてこなかったものが見えてきます。
パッと見、単調な被写体や風景に思えても、モノクロにすることで
別な魅力がまた、生まれてくるんですね。
白と黒の世界とはいっても、単純に色が無くなったわけではなく、
さわりでも触れましたが階調や濃度といった形に姿を変えて現れてきます。
画面の隅々まで気を配りましょう。
カラーでも通用するお話なので、撮る際もそのことを意識すれば
メリハリの利いた絵が撮れるようになります。
「モノクロをやっている人は構図が上手い人が多い」
なんて言葉もあるんですよ。
モノクロを撮る際、人によって様々なこだわりがありますが
私自身は、「切り絵」のような感覚で、
シルエットの美しいものを探す事が多いです。
写真はベトナムの警官ですが、交通の流れを見つめている
シルエットがとても魅力的だったので走っているバイクを入れ、
シチュエーションを出しつつ1枚シャッターを切りました。
突然ですが、この写真の警官の制服は何色でしょう?
面白いことに色が無くなると、逆に色が豊かになります。
皆様それぞれの色を思い浮かべられるんですよね。
シンプルなぶん想像力を働かせてくれるのがモノクロの良いところ。
警官の制服の本来の色は深緑ですが、皆様には何色が見えましたか。
SONY α7+ PENTAX Super-Takumar 50/1.4(M42)
かつてフイルムのみであった時代ではファインダーで見た景色を
いちど頭の中でモノクロに変換してイメージしたり、
薄目を開けてコントラストを確認するといった事もあったのですが、
近年のデジタルカメラは一眼レフでは後ろの画面を見るライブビューで、
ミラーレスならファインダーの映像をそのままモノクロに変換して
見る事も出来るため、ずいぶんと完成形まで詰めやすくなりました。
SONY α7+ PENTAX Super-Takumar 50/1.4(M42)
作例の写真はソニー・α7のモノクロモードで
ファインダーを覗きながら撮影いたしましたが、
教会の写真は日中日差しが強くフレアが出やすい状況で、
道路の写真は夜間、階調を取りにくいシチュエーションでの撮影でしたので
画面にて逐一確認可能という恩恵を感じられた場面です。
デジタルのモノクロとフイルムのモノクロの違いで、「フイルムは粒子の粗密で階調を表現する点描画のようなもの」「デジタルは色の情報を除き、センサーが受けた信号の有無で表現する」と似て非なるものと言われる事もありました。
最近はオリンパスPEN Fや富士X-PRO2と言った機種でモノクロフイルムの様な粒子感を出したり(グレイン・エフェクトなど)フイルムの表現に近い事がカメラ内で出来るようになっています。
またライカMモノクロームの様な輝度情報のみ受けるモノクロ撮影専用機種が発売されるなど、単なるデジタル画像のモノクロ化ではだめ!といったこだわりモノクロ派の方にぜひとも経験してほしいくらい、良くなってきました。
■オールドレンズで撮るモノクロ
モノクロとオールドレンズの相性は抜群です。
この写真では分かりやすく極端な例として、
戦前のかなりくもったフランスのオールドレンズを使ってみました。
カラーで撮るとピントはぎりぎりまで甘く、
コントラストはきわめて低く、画面は白っぽくなるのですが、
モノクロだと調和して淡い雰囲気になっています。
本来はもっと白っぽく写っていたのですが、
撮影時に露出補正をだいぶマイナスに設定しています。
補正をプラスに振れば柔らかく、マイナスに振れば重厚に・・・
などなど好みのモノクロ写真を撮るコツとしては、
露出補正を積極的に使っていくのがポイントです。
どこか懐かしみのあるような写真に仕上がるので
レトロな物、昔ながらの風景などを
被写体とするといい雰囲気になることが多いです。
SONY α7+ PENTAX Super-Takumar 50/1.4(M42)
ごく一部のオールドレンズではガラスに使われている材質の影響で、
レンズ自体が黄色く変色するものがあります。
この写真を含むいくつかの作例に使われている、
スーパータクマー50/1.4もそれに当たり
カラーでそのまま撮るとデジタルではある程度補正は入るものの、
ときたま黄色く写ったりしますし、これがフイルムなら
現像ミスと思われることもあるくらいです。
しかし、モノクロの場合あえてそのまま撮ることで
コントラスト向上効果になり黒が締まって見え、
逆に味方につけている感があります。
カラーではちょっと持て余していたオールドレンズも
モノクロでは以外な一面が出てくるんですね。
いかがでしたでしょうか。
まるでコーヒーのような風味と奥深さをもつモノクロ写真。
カラー写真と比べると、基本的に色があるか無いかの違いですが、
非常に大きな違いであり、改めて色という要素の重要さを実感するはずです。
フィルム・デジタル問わず、モノクロで撮影する際のコツとしては、
①構図・影・形にこだわる
②積極的に露出補正をためして好みのモノクロ具合を探してみる
③モノクロにしたくなる(モノクロの似合う)被写体を写す
と、いうことでお話しさせていただきました。
もっとこだわると撮影後の調整、プリントでの階調の出し方、黒の再現、
フイルムなら現像方法から印画紙への焼き方…などなど
語ってしまうときりがありませんが、まずは撮ってみるのが第一歩。
ハマるととても面白い世界ですから
まずはドボン!とモノクロ沼に飛び込んでスキルアップしてみてください!
※2022年2月追記
長年、モノクロ自家現像を行っているレモン社 池袋店の宮がモノクロ写真の入門記事を書いております。併せてご覧いただけますと幸いです。