ほとんどの初心者さんは、最初に買ったデジタル一眼レフではズームレンズを使っているのではないかと思いますが。35年カメラを弄っている私もいざって時には「やっぱズーム便利だわぁ~!」とか思う事も多々ありますが。今回は初心者さんにオススメしたいFXフォーマット単焦点標準レンズをご案内します。ニコンさんの「AF-S50mmf1.8G」です。
普段、便利なズームレンズに慣れてしまうと50mmと云う焦点距離が「微妙に狭い」「微妙に寄れない」と感じられるかも知れませんが、このAF-S50mmf1.8Gは軽い!明るい!早い!おまけに安い!と云った大きな魅力があります。
DXフォーマットでは換算75mm相当の画角となるので、それらのカメラをお使いの方にはポートレートレンズとしてお使いいただけます。今回はFXフォーマットのD750に装着して撮影です。
それにしても最近雨が続きますね。今回は殆ど青空が写らないレビューとなりました。
雨の鎌倉をブラつきながら、道を一本間違えて目当ての場所から遠ざかり・・・引き返すのも癪なので適当に歩き、とあるお稲荷様へ漂着となりました。
普段、私はマイクロフォーサーズ機やPENTAX Q7と云った小型センサー機を使っているのですが、一口に標準レンズと云っても焦点距離が違うので(マイクロフォーサーズ機では25mmが標準域)、鳥居の連なりとか木々の密度とか、も少し引伸ばされてしまうものですが・・・そこはやはりフルサイズ50mm標準。程よい遠近感と被写界深度で描写してくれます。
さほど長くもない鳥居と木々の連なりを潜り抜けて進むと、光量はどんどん落ちていきます。心なしか、雨も強くなりつつあるようです。ギブアップしよ。帰っていいですか?帰っていいですか?と心の何処かで声がします・・・心が折れる5秒前、「ここ撮れコンコン」と呼び止められ。
そこには、なかなかに目力の強いお狐様がおわしました。グッと寄って絞り開けめでご近影をば。シャキンと目元を捉えながら、アウトフォーカスはなだらかにボケてくれます。濡れた石の質感が歳のいった・・・じゃなくて歴史を刻んだ面構えに色を添えました。
レンズが曇っていたワケでもありませんが、ホンワリと仄かに滲みが出ています。最短撮影距離で絞り開放ではかなり柔らかい表現が出来そうです。
お社で黙礼すると目の前に蜘蛛が降りてビックリさせられるお稲荷様でしたが、本殿脇へ足を踏み込むともっとビックリ。プリティーなお狐様がひしめきあっています。
雨の森の中での撮影なので足元が悪く、なかなか腰の据わった構えが出来ない日でしたが、高速シャッターを使えるのが大口径レンズの魅力。とは云え、体の微妙な前後ブレは近接撮影の際はピント精度に直結するのでご用心。
ここ佐助稲荷神社は縁結びのご利益もあるそうなので、意中の人がおられる方はお参りしてみてはいかがでしょう?ただし、ガラスのハイヒールではなくて「ちょっと汚れても構わない」歩きやすい靴が必須です。
若い頃「佐殿(すけどの)」と呼ばれていた頼朝公にご縁があるとかで、佐殿を助けたと云う事で「佐助稲荷」となったようです。「すけすけ稲荷」じゃありません。「さすけ稲荷」です。
ところでこのAF-S50mmf1.8G、安価なレンズの部類に入りますがAFの速さは上々です。ごくごく小さな作動音が聞こえますが、一歩離れた人にはほぼ聞こえないレベルです。
ぼんやり小雨の由比ヶ浜を歩いていると、カモメが一羽飛んできたので・・・
ぱっと構えて一発合焦。ちょっと距離はありましたが、ピタリとカモメを捉える事が出来ました。
この日の天候のせいで特に判りやすくなっていますが、絞り開放では周辺部がかなり落ち込む傾向にあります。大口径レンズによくある癖のようなモノですが、平坦になりがちな日の丸構図でも独特の情緒を添えてくれる味の一つです。このAF-S50mmf1.8Gでは、F2.8より絞ると光量落ちが目立たなくなり、F4あたりでは気が付かないレベルになるように見えます。イラスト・図面の複写とかに使う場合はちょっぴり絞った方が良いでしょう。
とても軽量な大口径レンズなので、日没後の街をぶらついて撮影するのも、室内撮影にも向いています。とは云え手ぶれ補正機能はありませんので、あまりにイージーな構え方では手ぶれの大量生産となりますから、ご用心ご用心。
微妙に狭い画角の50mmですが、おおまかな感覚をあらかじめ身体に覚えさせておくと、カメラを持っていない時でも訓練になります。
私の体格では、大雑把に「胸の前に突き出したゲンコツ5個分の幅(よりちぃっぴり狭い)」程度です。
周辺の露出を落としたかったので絞り開放で。それでも流石にとっぷりと暮れた頃の事、お二人様を完全なシルエットにしたくなかったので、結果として結構感度を上げてしまいました。
今度はバッグに忍び込ませていた「卓上三脚」を使って、ちょっとだけシャッター速度を落として絞り気味に。
絞れば深い被写界深度が得られる50mm。開放時のほんわり描写は一転してシャープな画となり、周辺の光量落ちも完全解消しています。
風景撮影時にF10程度まで絞ると、広角レンズ的なピントの深さを発揮してくれます。
手前のノッポの木に合焦していますが、画面奥までキッチリ描き切ってくれました。
最短撮影距離0.45mではまだ足りない!も少し寄りたい!なんて時、Nikonならではの奥の手としてDXフォーマットに切り替えてしまうのもアリ。有効画素数は下がりますが実用には十分ですし、換算75mm相当の画角に一発変換できるのも便利です。
今日は50mmレンズ一本のみ!と云うのはなかなかストイック(ストレス?)なスタイルだと思います。画角とか、距離感とか。慣れないうちは前に出たり後ろに下がったりの繰り返しかも知れません。それでも案外性格ははっきりしていて、絞りを開けば大きくボケるし、絞り込めばキッチリ描き込む。一本で望遠っぽくも広角っぽくも描写できる、そんな器用さを併せもっているのが標準レンズ50mmです。
まずは、初心にかえって足を使って撮る。前に出たり後ろに下がったり・・・しながら、馴染んで下さいませ。
ニコン AF-S50mmf1.8G
レンズ構成:6群7枚(非球面1枚)
絞り構成:7枚羽根円形絞り
最小絞り:F16
最短撮影距離:0.45m
寸法:φ72mmx52.5mm(レンズマウントから先端まで)
フィルター径:φ58mm
重量:185g
お問合せはレモン社銀座店
又はナニワオンラインまでどうぞ