今回ご紹介するのは発売から10年を経て衰えない人気のVMマウントレンズ、フォクトレンダー「NOKTON Classic 35mm F1.4 SC」です。
小型軽量ながらF1.4と云う大口径が魅力なのですが、何やらドイツ製某レンズに似てなくも無いデザインもシャレが効いています。
VMマウントのNOKTON Classic 35mm F1.4にはごくノーマルな発色傾向の「MC(マルチコーティング)」と、クラシカルな発色の「SC(シングルコーティング)」と二種類ラインナップされておりますが、今回はマウントアダプターを介して「SC」タイプをSONY α7(無印)に装着してのテストです。
色調はスタンダードに設定したものの、割と色乗りの良いα7でもクラシックな色合いになるのやら、発端からして不安がありましたが……。
最新レンズには無いクラシカルな色調
確かに昨今の新製品には無い発色でした。
夏至明けの真昼間の晴れ間がちょっとノスタルジックな色合いとなりました。
普段は「オリンパスブルー」LOVEのオリンパスユーザーですが、何だか80年代にエクタクロームで撮影したポジがちょっと褪色したような印象を抱きました。
それでいてヌケの悪さやモヤモヤ感は無し。
F8まで絞っているので、解像感も無問題です----F値設定次第で大きく性格が変わるレンズではありますが。
そんなワケで、絞りを開いてみましょうか。
絞り開放あたりでの中~遠景
ちょっと距離を取った状況で絞り開放を楽しみましたが、クラシックどころかアンティークっぽい描写となるようです。
撮ってるときは雨の心配なんてしてませんでしたが、発色傾向のみならず強い周辺光量落ちのために一降り来そうな空模様に仕上がりました……。
画面隅っこの緩さは、もはや現代のレンズが忘れてしまった「幻想」のような……いや、ドイツの例のレンズと似てないかなぁ、これ。
いや、NOKTON Classic 35mm F1.4SCのが「ヌケ」は一段上だけど。
コンディション「並」の中古「なんとかルクス」の1/5で新品が買える計算、とか考えるとちょっとねぇ。
このシチュエーションも、ひょっとして四隅がケラれてないか?と思う程にクッキリと光量落ち。
先の写真と同じく、中~遠景と云えども絞り開放時は画面中央以外は何処かトロンとした描写で、ほんのり色収差も味わえます。
ある程度しゃんとした解像感が必要なら、最低でもF4(できればも少し)程度には絞った方がよろしいかと思います。
これらの画像ではリサイズしているので目立ちませんが、元画像では建物上部の柵あたりがかなり緩くなっておりました。
とは云うものの、NOKTON Classic 35mm F1.4SCの大きな魅力の一つは大口径であることを鑑みるに、絞り開放でこそ遊びたくなってしまうものです。
大口径・最短・ボケ
NOKTON Classic 35mm F1.4SCはレンジファインダーカメラ用レンズ故に、最短撮影距離は0.7mとなっています。
それでも開放F1.4の大口径は、自然で大きなボケを生んでくれます。
メインのグラスのエッジに僅かな色収差が出ましたが、この点が気に入らない方はF2に絞れば大幅に改善できます。
最短撮影距離0.7mと云う数値は、普段から一眼/ミラーレスを愛用していると「もう一歩踏み込みたい・・・」と感じる数値です。
マイクロフォーサーズユーザーとしては「絞り開放付近でグッと寄ってボケを作る」事に慣れているので、多少なりとも寄れないストレスは感じましたが……。
それでもボケるのがフルサイズレンズの強み。いやはや脱毛……じゃなくて脱帽です。
ヘリコイドを最短側にして体でフォーカシング。
本当の本当に最短撮影距離です。最短側の絞り開放ではほんのりとしたにじみ具合が楽しめます……と云いたかったのですが、アウトフォーカス部のボケ具合は好き嫌いが分かれるかもしれません。
では、ちょっとアングルを変えて。
ところを変えて。
アウトフォーカス部のモノの形状によっては、嫌いな方ははっきりと「嫌い」なタイプのボケになりそうですが、最近の若い方達は結構好きかも知れませんね。
背後の植物のボケがちょっとざわつく印象です。と云いつつ、「最近の若い方達」と云ってしまった自分に軽い戦慄を覚えます。
ちょっとだけ絞ってF2~F2.8付近では。
画面外左に摺りガラスっぽい採光部があるのですが、わずかにフレアが出ているのかレンズの収差なのかよく判らないものの柔らかい雰囲気は健在です。
ところで色調は……室内での撮影では、屋外の自然光条件ほどクラシカルな発色が強調されない印象です。
本当は「MC」と撮り比べしたかったんですが、ご容赦下さいませ。
↑この写真、本当はF1.4で撮影したカットのオマケです。
F1.4では書物の文字に色収差が出て、紺色のインクのようになってしまったのでこちらをUPです。
少し距離を取って。
光線のコントラスト次第で随分と表情が変わりるのもお楽しみの一つです。
現行製品でオールドレンズっぽさを楽しめる魅力あふれるレンズ
コンディション良好なオールドレンズを探すとなると、それなりの労力と出費を強いられることも多いかと思います。
しかし、NOKTON Classic 35mm F1.4 SCは現行製品で(しかも比較的安価)オールドレンズの性格を持った個性的な新品レンズとして入手できる魅力的な製品です。
当たりハズレを気にせずにクラシカルなレンズを……とお考えでしたら、是非ともご検討いただきたいレンズでした。
*VMマウントのNOKTON Classic 35mm F1.4 は絞り値を変えるとピント位置が移動する、いわゆる「焦点移動」が起きます。EVF内臓カメラで使用する際も、絞り値を大きく変えた場合は再度のフォーカシングが必要になる場合があります。
フォクトレンダー NOKTON Classic 35mm F1.4 SC
レンズ構成:6群8枚
絞り構成:10枚羽根
最短撮影距離:0.7m
寸法:φ55×28.5mm
フィルターサイズ:φ43mm
重量:200g
*レンズフードLH-6は別売