こんにちは。カメラ担当の池田です。
さて今回は、「鉄道写真のススメ」と題しまして鉄道写真の撮り方をアドバイスさせていただきたいと思います。
近年は鉄道ブームで、たびたびテレビや雑誌などでも特集が組まれています。豪華クルーズ列車や観光列車の登場が火つけ役になっているようにも思います。
ただ単に鉄道写真と言っても、その中にも色んな撮り方や種類(ジャンル)があり奥深いものです。
そこで今回は、鉄道写真の種類から撮り方までご紹介したいと思います。
【鉄道写真の種類】
鉄道写真は撮り方、表現方法によって大きく以下のように分けられることが多いようです。
①編成写真
車両の最前部から最後尾までを、画面からはみ出さずに撮る写真。
②風景写真
美しい風景とともに鉄道を撮る写真。作品としての要素が高い。
③イメージ写真
流し撮りでスピード感を表現したり、何かをイメージさせる写真。
【鉄道写真に適した機材】
カメラ
高速連写のできる一眼レフ、ミラーレス一眼が最適。さらに測距点の多い機種であれば、より快適で便利。
レンズ
標準ズーム、望遠ズームレンズ(35mm換算で400mm相当があると便利)。写真に変化をつけるなら広角ズームレンズがあると良いでしょう。
三脚
線路沿いにはフェンス等がある場合もあり、高く伸びるものが理想です。
※駅などでは使用できない場合もありますのでご注意ください。
それでは、ここからはそれぞれの種類に合わせた撮り方をご紹介していきたいと思います。
【種類別 鉄道写真の撮り方】
①編成写真の撮り方
編成写真は鉄道写真の王道と言っても過言ではありません。なぜなら、駅のホームで撮影している人のほとんどが編成写真を撮っています。
編成写真は記録写真的な要素が高いため、珍しい列車やもうすぐ廃車になってしまう車両などは、車両の最前部から最後尾まで、バランス良く、画面からはみ出さないように撮りたいものです。
簡単そうで難しいのが編成写真です。
カメラの設定
走行している列車を撮影する場合は、状況にもよりますが、撮影モードはシャッタースピード優先にセットし、シャッタースピードは1/500秒以上を選択します。ドライブモードは高速連写にセットすると良いでしょう。
そして大事なピント合わせは、置きピンという手法を使います。
置きピンとは、あらかじめ列車が通る線路などにピントを合わせておくことで、あとは列車がピントを合わせた場所を通過する瞬間にシャッターを切るというものです。
これ以外にも、被写体の動きに合わせてピントを追従してくれるコンティニュアスAF(C-AF)などの機能を利用するのも良いですが、この機能はカメラの性能や撮影状況により、精度が左右されることも多いと感じます。
止まっている列車を撮影する場合は、シャッタースピード優先にこだわらず絞り優先でも問題ありません。状況によって使い分けましょう。
ポイント
編成をいかに美しく撮れるかがポイントですので、場所選びの次に重要なのが光線です。編成写真を撮影すのにもっとも適した光線は順光です。
列車の通る時刻に順光となる場所で撮影することで、列車全体に光がキレイに当たり、車両の色などをしっかり表現できます。
もちろん順光でなくても、曇天や雨の日は光がフラットで編成をキレイに写すことができますし、逆光で撮影すると列車に立体感を出す事もできるので、順光にこだわる必要もありません。
作例
順光で撮影した編成写真です。先頭の機関車から後ろまでキレイに光が当たっており、統一されたデザインのコンテナ貨物列車だとわかる写真になりました。
カーブで狙った1枚です。この日は薄曇りでしたので、やわらかいフラットな光で列車全体がキレイに写すことができました。
駅に停車中の特急列車を撮影。
駅で編成写真を撮る時のポイントは、作例のように撮りたい列車の到着する隣りのホームから撮影することです。
そうすることで、列車の編成をキレイに写すことができます。
夜は走行写真を撮るのは難しくなりますので、必然的に駅での撮影が多くなります。
②風景写真の撮り方
キレイな風景の中を走る鉄道は誰もが撮ってみたいのではないでしょうか。
キレイな風景だけでも作品になるところに、鉄道が入ることでアクセントになり、さらに素敵な作品に仕上がります。
カメラの設定
編成写真と同様に、基本はシャッタースピード優先で撮影すると良いでしょう。
もちろん風景写真ですので、絞り優先で被写界深度を考えながら撮影する方が良い場合もあります。
ただ、絞り優先で撮影する場合でも、絞りを決めたあと、その状況でシャッタースピードはどれくらいか、列車がブレないシャッタースピードか、ということは気にしておかなければなりません。列車がブレてしまっては失敗作品になりますから……。
ピントは置きピンが間違いないでしょう。
その他、風景写真ですので仕上がり設定(各メーカーによって名称がことなります。キヤノンであればピクチャースタイル・ニコンであればピクチャーコントロールなど)を少し鮮やか目にすると良いでしょう。
ポイント
撮りたい風景が一番キレイになる時間帯や光線を見極めることが大切で、風景写真の場合はやはり早朝や夕方にドラマティックな光景になることが多いです。
風景のキレイなポイントというのは山の中や海岸線が多く、そのような場所を走る列車となると運転本数も少ないものです。
絶景ポイントで、最高の時間に鉄道を絡めて撮影するのは、本当に難しいのです。その分、バッチリ撮影できた時は半端ない達成感です。
列車が来るまで長時間待つこともありますので、三脚を使用しての撮影がオススメです。
作例
山陰海岸の海と小さな集落を見下ろせる展望所で撮影したものです。
風景を主題としている為、列車は小さく写っていますが、オレンジ色(タラコ色)の気動車ですので存在感も出すことができました。
また、この場所は夕方頃の光線が良さそうでしたので、その時間を狙って撮影しました。
初冬。標高1000m級の山々には冠雪がありました。
この場所は編成写真も撮れる場所ですが、ここでは山を強調するため望遠レンズで少し切り取って撮影しています。光線も朝の光で、列車にキレイに太陽が当たってくれました。
春爛漫の若桜鉄道。川沿いの桜並木を発見し、何とか列車と絡めて作品に出来ないかと考えて撮影したものです。
桜並木のわずかな隙間に列車を入れることに成功しました。ここでは高速連写にセットし、列車の近づく音が聞こえ、わずかに列車が見えた瞬間からシャッターを切り続けました。
1枚撮影ですと、どうしても反応が遅れて思い通りの場所に列車を入れれないことがあります。
また、曇りで空が白かったので、空を入れないようにフレーミングしました。風景写真では白い空は極力入れない方が良いとされています。
③イメージ写真の撮り方
イメージ写真と言ってもピンと来ない方も多いと思います。鉄道写真の中で代表的なものとしては、スピード感や動感をイメージさせる技法、流し撮りがあります。
また、鉄道写真は車両が写っていなくてもいいのです。例えば、延々とまっすぐに伸びるレールや古い駅舎などはイメージ写真にピッタリです。
カメラの設定
流し撮りの場合は、シャッタースピード優先で撮影します。
シャッタースピードは遅ければ遅いほど背景の流れが大きくなりスピード感を強調できますが、当然のことながらブレブレの失敗写真も増えてしまいます。
列車との距離などの状況にもよりますが、はじめは1/60秒~1/30秒で練習すると良いでしょう。
その他、イメージ写真には色んな表現方法がありますので、その状況に合わせて、シャッタースピードや絞りだけでなく、仕上がり設定やホワイトバランスなどを変えて撮影するのも良いでしょう。
例えば、昭和にタイムスリップしたような表現をするなら、仕上がり設定を「モノクロ」や「セピア」にすると懐かしい1枚に仕上げることができます。
ポイント
編成写真の撮り方とは、正反対と言っても良いかもしれません。カタチにとらわれないのがイメージ写真です。
光線も順光ではなく逆光で撮って立体感を出してみたり、絞り開放にして背景をボカしてみたりと表現は自由です。
私もそうですが、編成写真ばかりを撮っていると、車両への愛着が強すぎて、列車全体をキレイに撮りたいと思ってしまいがちです。
イメージ写真は、作品づくりと思って、わりきって撮影する気持ちが大切だと思います。
作例
スピード感ある特急列車をイメージして、手前には菜の花畑を入れて流し撮りで撮影しました。
光線はあえて逆光を選びました。その結果先頭車両などが輝き、より疾走感のある作品となりました。
鉄道写真は鉄道が主役でなくてもOKです。上の写真は新幹線を見送る駅員さんを主役に撮影しました。
ここでは、絞り、シャッタースピード以外にホワイトバランスを「電球色」にセットして、青味を出して美しい新幹線のフォルムも強調してみました。
京都鉄道博物館にて撮影した蒸気機関車です。
ここでは、この機関車が東海道本線特急列車牽引用として宮原機関区に配属されていた、昔(昭和)をイメージした撮影です。
仕上がり設定を「モノクロ」にセット、さらに少しコントラストを強くして、蒸気機関車のゴツゴツとした重厚感を表現してみました。
【まとめ】
鉄道写真の魅力が少しは伝わりましたでしょうか?
編成写真は鉄道ファンの方にしか興味がわかないかもしれませんが、風景写真やイメージ写真は鉄道に興味がなくても、撮ってみたいと思うようなジャンルの写真ではないでしょうか。
夏休みをはじめ、冬休み、春休みの期間はJRより青春18切符という普通列車に乗り放題の切符も発売され、鉄道旅を楽しみながら撮影することができる最適な期間です。
ぜひ、この機会に鉄道写真にトライしてみてください!
この記事に関するお問い合わせは・・・カメラ担当 池田まで