さて今回は、私のメインの撮影ジャンルでもある風景写真の撮り方について書いてみたいと思います。「一眼カメラを買ったけど、風景写真がキレイに撮れない」「インスタ映えする写真が撮りたい」と感じている方は、ぜひ最後まで読んでくださいね。
それでは、風景写真をキレイに撮影するコツをご紹介いたします。
①撮影モード
風景写真を撮影する場合、撮影モードは一般的には「絞り優先オート」に設定いたします。
絞り値をコントロールすることで、被写界深度(ピントの合っている範囲)を調整することができるのです。F値を小さくすると、被写界深度は浅くなり背景がボケやすくなります。逆にF値を大きくすると、被写界深度は深くなり、手前から遠くまでピントが合った写真に仕上げることができます。
風景写真では、全体的にピントの合った写真に仕上げることも多く、絞りを絞って(F値を大きくして)撮影することが増えるでしょう。
ただし、いくつか注意点があります。
絞りを絞り込むことで、シャッター速度が遅くなりますので、ISO感度を低く設定している場合は手ブレに注意が必要です。つまりキレイな写真を撮りたい場合、低感度(ISO感度を低く)にして三脚を使用して撮影すれば良いのです。
作例①
F22に設定して、手前から奥までピントの合った写真にしています。
②ホワイトバランス(WB)
風景写真撮影において、ホワイトバランスの設定はかなり重要な要素です。
まずホワイトバランスとは何か・・・。
簡単に言いますと、白を白く写すために、カメラで光源に合わせて色を補正する機能です。
カメラを購入した時、初期設定はオートホワイトバランス(AWB)になっているものがほとんどです。人物写真や室内での撮影では、このオートホワイトバランスが便利で失敗も少なく問題ないのですが、風景写真においては少し厄介なんです。
特に朝夕の撮影時においては、ドラマチックな光景であってもオートホワイトバランスによってキレイな赤色やオレンジ色、日没後のキレイな青色が補正されて、インパクトのない写真になってしまいがちです。
そこで、風景撮影においてオススメなのが「太陽光」という設定です。
私もこの設定で撮影することが多く、雑誌やネットに掲載されているプロの風景写真家の撮影データを見ても「太陽光」となっていることが多いのです。
作例②
夕暮れ時の琵琶湖。初期設定のオートホワイトバランスで撮影。穏やかな感じは出ていますが、何となくインパクトに欠ける写真。
太陽光に設定して撮影すると・・・
青味が強調され、夕暮れの雰囲気を表現することができました。ホワイトバランスを変更するだけで、これだけ色味が変わるのです。
作例③
長野県で日中に撮影した氷柱群。これもオートホワイトバランスで撮影しています。氷の白が忠実に再現されています。
ここでも太陽光に設定して撮影すると・・・
青味が強調され、冷たさや寒さを表現することができました。このような晴天時の日陰で、太陽光にセットして撮影すると、このように青味が強調されます。
③仕上り設定
写真の仕上がりを決定する仕上がり設定。ホワイトバランスと同じくらい重要な要素です。
その仕上がり設定という機能は、メーカーによって名称が異なり・・・
キヤノン・・・ピクチャースタイル
ニコン・・・ピクチャーコントロール
ソニー・・・クリエイティブスタイル
富士・・・フイルムシュミレーション
オリンパス・・・ピクチャーモード
などとなっています。
この機能も初期設定では「スタンダード」や「オート」と言った設定になっており、このまま撮影するとメリハリの少ないインパクトに欠ける写真になってしまうこともあります。
風景写真をより美しくキレイに撮影するには、仕上がり設定を変更すると良いでしょう。
各メーカーの仕上がり設定には、「風景」や「ビビッド」、「鮮やか」など、発色を鮮やかにするモードがあります。
これらにセットするだけで、色鮮やかな風景写真に仕上げることができます。
但し、もともと色鮮やかな被写体の場合、「風景」や「ビビッド」にするとド派手で不自然な仕上がりになることがありますので、そのような時はスタンダードで撮るようにします。
作例④
仕上がり設定をスタンダードで撮影しています。この写真だけを見れば、普通にキレイな写真と思えるかもしれません。
ここで、仕上がり設定を風景にすると・・・
気持ちの良い青空が表現できました。この写真を見た後、1枚目の写真を見ると青空が濁って見えるくらいです。
作例⑤
兵庫県の山奥に流れ落ちる滝を、仕上がり設定をスタンダードで撮影。色再現としては忠実で良い感じですが、少しおとなしく感じます。人間は印象的な風景を見た時は、実際の色よりも鮮やかな色で記憶されています。
そこで、仕上がり設定を風景にすると・・・
木々や苔の緑色が鮮やかに再現され、印象的な1枚となりました。
仕上がり設定を変更するだけで、大きく印象が変わります。
作例⑥
ホワイトバランス:オート 仕上がり設定:スタンダード
いわゆる初期設定のまま、撮影した1枚です。
ホワイトバランス:太陽光 仕上がり設定:スタンダード
ホワイトバランスを太陽光にするだけで、オレンジ色が少し濃くなりました。
ホワイトバランス:太陽光 仕上がり設定:風景
さらに赤味が強調され、1枚目の初期設定の写真と比べますと、印象がまったく違う写真になりました。
ホワイトバランスと仕上がり設定の合わせ技が、風景写真を鮮やかキレイに撮影する上では重要なのです。
④露出補正
カメラには露出計が内蔵されており、絞り優先オートで撮影する場合はシャッタースピードをカメラが自動的にセットしてくれます。そして、その精度も進化し続けています。
しかし、被写体の色などによっては大きく露出が狂ってしまう場合もあります。そんな時に自分自信で明るさをコントロールするのが露出補正なのです。
一般的に白い被写体を撮影する場合はプラス補正、黒い被写体を撮影する場合はマイナス補正をします。
ここ最近では、ミラーレス一眼をはじめ、一眼レフカメラでも液晶を見ながらのライブビュー撮影をする方が増えてきました。
液晶を見ながらの撮影なら、露出や色合いなどを撮影時に確認できますので、今までの光学ファインダーでの撮影の時のように撮影してから撮影画像を確認する手間を省け、撮影がとても快適、そして便利になりました。
但し、日差しの強い日は液晶が見にくくなることがありますので注意が必要です。心配なら、同じ構図で露出を変えた写真を数枚撮影しておくほうが良いでしょう。
作例⑦
露出補正をせず、カメラが適正露出と判断したデータで撮影しています。カメラのデータのままですと、写真のように少しアンダー露出となり、白い雪が少し濁ってしまいました。
ここで、プラス側に露出補正をいたします。
この写真は+0.7の露出補正をしています。雪の白色が忠実に再現されました。
これ以上プラス補正をすると、雪の色が白トビしてしまいます。
ミラーレス一眼では露出を確認しながら撮影できるとは言え、雪景色のような露出が難しい被写体は、露出を変えて数枚撮影しておくことをオススメいたします。
作例⑧
露出補正なしで撮影。
これはこれで適正露出かもしれませんが、あえてマイナス補正をしてみます。
-0.7補正で撮影。
補正なしの写真と比較しますと、湖面に輝く光を強調した1枚になっています。
露出補正は、適正露出(本来の明るさ)に補正するだけでなく、自分のイメージする作品にするために明るさをコントロールすることもできるのです。
⑤三脚・C-PLフィルター
撮影モードのところでも少し書きましたが、風景写真をキレイに撮影するには三脚を使用するのがベストです。ブレを防ぐだけでなく、滝や渓流などシャッター速度を落としての撮影時にとても有効です。
また、三脚があれば水平の傾きなども、ゆっくり調整しながら撮影できます。
しかしながら最近では、神社やお寺では三脚使用禁止の場所が増えてきましたので、その際はISO感度を上げて手ブレしないように撮りましょう。
作例⑨
滝や渓流ではスローシャッターで撮影しないと、作例のようなキレイな流れを表現することはできません。滝の流れを表現するには1/2秒以下のシャッター速度にする必要がありますので三脚は必須です。
そして風景写真に欠かせないアイテムの1つにC-PLフィルター(偏光フィルター)があります。
このフィルターはコントラストを高めたり、水面や岩などの反射を除去する効果があり、風景写真をよりキレイに撮るには最高のアイテムなのです。
作例⑩
C-PLフィルターを使用して撮影。
目の覚めるようなキレイな青空が印象的な1枚となりました。これはPLフィルター効果によるものです。
写真のように青空を濃く写すには、太陽を背にして約90度の方向が一番効果が大きいと言われています。
⑥早起きは三文の徳
さて、カメラの設定をしっかり覚えたところで実践編です。
風景写真は日中の風景から夜の星空を入れた風景写真まで、24時間撮影できます。
その中でもオススメの時間帯はやはり日の出の前後の時間です。朝は朝陽だけでなく、季節によっては霧や朝露、冬は雪と素晴らしい光景を見ることができます。
夕陽の時間帯も素敵なのですが、霧などの期待は薄く、降り積もった雪は木の枝から落ちていて、朝よりはドラマチックなシーンで出会えるチャンスは少なくなります。
ですから、早起きはツライという方も多いと思いますが、キレイな風景に出会うために頑張ってみる価値はあります。
作例⑪
今人気の滋賀県白鬚神社での朝陽。朝陽を撮影する場合は、日の出前も美しい色になることが多いので、私は日の出1時間前には撮影現場に到着するようにしています。
天気予報では晴れなのに、いざ現地に着くと曇りで朝陽が見れないこともありますが、キレイな朝陽を撮影できた時は、早起きして良かったと思います。
こちたもまたインスタ映えスポットとして人気の岐阜県円原川。
夕方と違い、早朝は写真のような川霧などに出会えることもあります。光芒も霧がないと出ませんので、やはり早朝ならではの被写体と言えるでしょう。
厳冬期の長野県王滝村での1枚。木々や手前のススキは凍てつき、白くなっています。そこに太陽が当たり輝き、とても素晴らしい光景でした。
このような状況が1日続くとは限りません。太陽が当たり、気温が上がってくるとすぐに融けてしまいますので、撮影チャンスは早朝ということになります。
⑦光線を知る
順光、サイド光、逆光と、被写体に対してどのような角度で光が当たっているかも作品づくりでは重要なポイントとなります。
色をしっかり表現するなら順光や曇天がベスト。
サイド光や逆光は風景に立体感を出してくれる光線で、特に朝夕の時間帯に得やすくなります。逆光を嫌う方も多いのですが、逆光ならではの印象的な写真を撮ることができるチャンスでもあります。
訪れる撮影地の光線状態を事前に調べておくと良いでしょう。
作例⑫
逆光で撮影。
逆光はゴーストやフレアなども出やすく、また露出設定も難しいのですが、インパクトのある写真が撮れるのが魅力です。
サイド光で撮影。
カタチの良いブナにサイドから光が当たり、とても印象的でした。背景には日陰になった部分があり、サイド光ならではの立体感のある1枚に仕上げることができました。
以上、いかがでしたでしょうか?
私の風景写真歴20年の経験をもとに、書かせてもらいました。少しでも参考になればと思います。
この記事を読まれた方の中には、RAWデータで撮影して後で加工・調整をしたら良いと感じた方もいらっしゃると思います。
もちろん、そのやり方も間違いではありませんし、私もRAW+JPEGで記録して、RAWデータで調整することもあります。
しかし、できる限り撮影現場で、仕上がりイメージに近づけて撮っておく方が、後で加工・調整するにも、多くの項目を調整する必要がなく短時間で処理できます。
また、カメラからスマホへWi-Fiでデータ転送することも多いと思います。そんな時は撮影時でできる限り完成させておくことが大切なのです。
さぁ、間もなく桜の季節!
カメラを持って出かけましょう!
この記事に関するお問い合わせは・・・カメラ担当 池田まで