AE-1はキヤノンから1976年に発売されたレンズ交換式一眼レフカメラです。
それまでのキヤノンの一眼レフカメラはプロ仕様機のF-1の他にF-1の技術をフィードバックし開発された中級機のマニュアル開放測光モデル・FTb(1971年発売)と露出の自動化の要望に応えたEF(1973年発売)がありましたが、これらの機種に対しAE-1はマイクロコンピューターが電子化・ユニット化された電子部品を中央集中制御する方式を採用して部品を約300点減らし、生産も自動化を大幅に取り入れて低価格と高機能を実現しました。また他にもカメラの電子化に伴う特徴を備えております。
○自動露出
当時カメラの露出は難しいといわれており、それをカメラがやってくれる自動露出機能(AE)を搭載する流れが起きていました。AE-1はシャッター速度優先AEを搭載してこの流れに対応しております。レンズの絞りをAの位置から外すとマニュアル露出になりますが適正露出の指標はないためファインダー内で針が指す絞り値にリングを合わせるという、いわゆるAE専用機になっております。正面からみてボディマウントの右横にボタンが2つありますが、上の方は逆光補正ボタンといいこれを押すとプラス1.5段の露出補正をしてくれます。順光と逆光の明暗差が1.5段というのはこのボタンから教わったようなものでまた半逆光時の補正量も暗部をだすかハイライトを生かすかで1段か0.5段か判断することを教えてくれました。
○自動巻上げ
AE-1には別売りでパワーワインダーが用意されておりました。これはシャッターボタンを押している間、秒間約2コマの連続撮影ができるアクセサリーで、キヤノンではこの連続撮影ができるカメラはプロ機のF-1だけでした。キヤノンはAE-1に「連写一眼」というキャッチコピーを冠してテレビCMにもワインダーの作動音を流して連続撮影ができるカメラを印象付けました。
スペック(当時のカタログより)
形式 35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフレックスAEカメラ
画面サイズ 24mmX36mm
レンズ 開放測光用信号レバーをもつFDレンズ群(開放AE)
FLレンズ群(絞込測光)
レンズマウント キヤノンバヨネットマウント
ファインダー ペンタプリズム使用のアイレベル式
視野の大きさ 上下93.5% 左右96%
倍率 0.86倍(50mm標準レンズ無限遠の場合)
ミラー ノンショッククイックリターン式反射ミラー
測光方式 シリコンフォトセル(SPC)受光素子使用の
TTL式中央部重点・平均開放測光
測光範囲 ASA100・50mmF1.4レンズでEV1~EV18まで18段階
使用フィルム感度 ASA25~ASA3200
シャッター 全速電子制御の4軸式布幕フォーカルプレーンシャッター
シャッタースピード 1/1000・1/500・1/250・1/125・1/60・1/30・1/15・
1/8・1/4・1/2・1・2(秒) B. X接点1/60秒
フィルム巻き上げ 巻き上げ角120°回転レバー 予備角30° 小刻み巻き上げ可能
フィルム巻き戻し 上部クランク式 スプロケット解除は押しボタン式
ボタンは巻き上げで解除
フィルムカウンター 自動復元順算式
フィルム巻き戻し時はフィルムの動きと連動して逆転
使用電池 JIS・4G13型6V酸化銀電池またはNo.537アルカリ電池1個使用
大きさ ボディのみ 141(幅)X42(奥行)X89(高さ)mm
重量 ボディのみ590g FD50mmF1.4S.S.C付き895g
○シャッターが全速電子制御になっており電池がないと作動しません。しかし各種の省電力設計で1個の銀電池で1年間、もしくは2万回のカメラ作動が可能となったそうです。その電池の型番に時代を感じますね(今でいう4SR44もしくは4LR44)。フィルム感度が25からというのもコダクロームをさしているのか懐かしいです。フィルムカウンターが巻き戻しと連動して戻っていく機構になっているのは所有していたにもかかわらず失念しておりました。
キヤノンAE-1はカメラづくりに電子化と自動化の流れを採り入れて一眼レフカメラを初めての人でも使用できる時代に変えたカメラで、他のカメラメーカーも追随しカメラの電子化と自動化が急速に進んでいきます。キヤノンAE-1はその流れの先駆者となった名カメラです。