カメラ今昔物語
こんにちは心斎橋買取センターの たつみ です
今回は、ニコン中級モデルの定番中の定番『FE』にまつわるお話です
意欲的な改良を経て
Fシリーズで特にプロカメラマンから圧倒的な支持を受けたニコン。
しかしながら写真を生業とするプロならいざ知らず、価格面においてはとても庶民の手に届くものではありませんでした。
ちなみにその価格感というと、ニコンFの標準レンズ付きが当時の大卒初任給半年分と言われた程でしたから、今の「D5と大三元一気買い」くらいの感覚でしょうか・・・そう考えると今のカメラって安いのかも・・・き、金銭感覚が・・・。
話戻りまして、もちろん中級機の開発も余念なく行われ、
1960年に『ニコレックス35』が登場
以降このシリーズをおいて、縦走りシャッターや自動露出、お値打ちなレンズ交換式など新機能を搭載させ技術の蓄積を図っていきます。
そして1965年に発売された『ニコマートFT』から本格的なシリーズ構築が始まり2年後の改良機FTnからはその後おなじみとなるレンズのかに爪金具に連動ピンをかけて左右に『ガチャガチャ』動かす方法で絞り値を露出連動させる機能を開発。
本体に露出計を有せずフォトミックファインダーに交換をしないとメーター利用できなかったニコンFとは違い非常に使い易く、かつ低コストなこのシリーズは大変な人気となります。
さらにニコンは意欲的な開発を続けます
一つは王道のマニュアル露出&機械式シャッター。
こちらはシリーズの本流としてFTを皮切りに4モデルに渡り改善・改良を行います
そしてもう一つは自動露出&電子式シャッター。
こちらは1972年に初号機となる『ニコマートEL』が登場。
ニコン初の絞り優先機としてこちらは5年間で3モデルが登場し改善を図ります。
その後ニコマートシリーズは大変身し1977年にFT系は『FM』へ、
翌78年にEL系は『FE』に引き継がれ中級機2大主流路線がスタートします
代名詞はシンプル・イズ・ベスト!
各社から電子制御式カメラが続々と発売された70年代後半。
ニコンはFEで対抗します
電子化に伴い内部構造は一気に様変わりし、様々な機能が新しく生み出されましたが
それに比例して操作系はより複雑になっていきます。
(現在のデジタルカメラと比べると全然簡素ですが。。。)
まずこのFEの最大の特徴は、撮影者の感覚を最大限に生かす為に、大変分かりやす
い操作性にした事でしょう
軍艦部右側に大型のシャッターダイヤルと巻上レバー、左側に感度&補正ダイヤル。
絞り優先こそ搭載していますが、外見上は兄弟機FMと瓜二つ。
パッと見では見間違えるほどのデザイン。
(それもそのはずで部品の共通化をこの頃から行っておりコスト削減を徹底して実施
していました)
面白いのはファインダー内表示のつくり。
マニュアル機FMがダイオード式に対して、AE機のFEが追針式を採用。
一瞬逆じゃね?!とツッコミを当時誰かがしたかどうかは定かではありませんが、
結果としてこの追針式が非常に使い易いと評判になりFEは人気になります。
唯一、この追針式の弱点は・・・「暗くなると針が見えない!」。
しかし、これだけが唯一の弱点と言っていい程完成度の高い作り込み。
さらに人気を支える機能が緊急用メカニカルシャッターの搭載でした。
基本全速電子制御のFEにはバッテリーが必需品なのですが、万が一の場合に
備えて、1/90秒とバルブを機械式とする念の入れ様。
当時の評価は『シンプル・イズ・ベスト!』
(やっぱカメラは分かりやすくて使いやすいのが1番やね 的な。。)
この様な撮影者本位の設計思想はアマチュアはもとよりプロ達からも支持を集め、
キャッチコピーの『シンプルニコン』の名のもと長く愛されるカメラとなります
最後に。。
時代に飲まれる事なく独自の思想で電子化の波に乗り出したニコン。
その後FEは更なる改良を受けて83年に『FE2』へと進化を遂げます。
当時としては世界最速の1/4000秒&シンクロ1/250秒で世間の度肝を抜きます
また、同じ頃に電子制御モデルの完成形『FA』も発売させます。
両優先AEにプログラムを組み込んだこの新鋭こそが実はFE2だったという話が
あります
ところが一気に販売価格が跳ね上がった事やいろいろ装備が増えて『シンプル』
ではなくなったとの事から別ネーミングになったと伝わっていますが果して。。
(一説にはFE3との声もあったとかなかったとか。。)
その後、AF時代を迎えるにあたり、ニコンの電子制御カメラはそちらに移行し、
FE系は静かに表舞台から姿を消していきました