またもやツアイスです。
4月と8月にT proofという、ツアイスレンズ搭載のフィルムコンパクト
カメラについてブログを書きましたが、懲りずに、また、です。
それしか知らんのかと思われそうですが、まあ、ワタクシ「名前」とか
「権威」にめっぽう弱いもので…。
今回取り上げるのは、数あるツアイスレンズの中でも特に人気の高い
(とワタクシが思っている)、プラナーです。
Planar T* 1.4/50 ZF.2 (※以下面倒くさいのでプラナー)
《写真》
この写真のモデルは、コシナというメーカーから出ているツアイスの
レンズで、ニコンFマウントのものです。このほかキヤノンEFマウントの
ものも発売されています。ちなみに上のモデル名の後ろにあるZF.2は、
ニコン用の2型であることを示しています。
以前は、ツアイスのレンズをキヤノンやニコンのボディで使いたいと
いうヨクバリさんは、コンタックス用など違うマウントのレンズに
アダプターを介してボディに取り付けたりしたものですが、いろんな
制約があり、決して使いやすいといえるものではありませんでした。
なので、このレンズがコシナから発売されて喜んだ人はたくさん
いました(とワタクシは思っている)。
ん?ツアイスがメーカーなんじゃないの?コシナは何? という方、
ややこしいですよね。すごく大まかにいうと、ツアイスが設計した
ものをコシナが製造してるってことです。
まあ、そこは使う上ではあんまり関係ないので、興味のある方は
ググってください。
さてこのレンズ、高いのは人気だけでなく、販売価格も、です。
例えば純正品のニコンの AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G (※以下
プラナーと同じ理由では、新品でニコンと表記します)が約5万円、
中古で3万円前後なのに対し、プラナーは新品だと7万円前後、
中古でも5万円前後と、おおよそ2万円高くなっています。
そしてさらに、プラナーはピントが手動なのであります。そう、
純正品ならオートフォーカスなのに安くて、社外品でマニュアル
フォーカスなのに高いという超逆転現象の発生です。
ということは、何か他に優れたところがあるに違いない。
と言っても、寝るときに枕の代わりになるとか、運動不足解消の
ためにこれを使ってキャッチボールができるなどということは
あるまい(どちらもやろうと思えばできますが)。
であれば、
画質がいいのか?
ということに帰結すると思います。
で、ようやく本題です。このレンズについてどんな写りをするのか
それではみなさん「確かめに行こう!」
ここを、撮り比べます。上の写真はプラナーでF8で撮影しています。
では、画面中央を等倍よりちょっと大きく拡大してみます。まずはプラナー
から…、
左上:F1.4 右上:F2 左下:F2.8 右下:F4 です。
F1.4では線がややにじみ、白い縦棒の中央にある線の色がブルーがかって
見えます。青みは色収差なのかなあと思われますが、どちらもF2にすると
やや改善され、F2.8ではほとんど確認できないまでになっています。
次にニコンです
並びはプラナーと同じです。こちらも1.4があやしく、2がややあやしい写り。
2.8になると問題ない感じです。
並びを変えてみました。
左上:プラナーF1.4 右上:プラナーF2.8 左下:ニコンF1.4
右下:ニコンF2.8 です。
2.8はあまり変わりませんが、1.4ではプラナーのほうがシャープに見えます。
これが2万円の差でしょうか。
次にボケ味について比べてみましょう。
左がプラナー、右がニコンでどちらもF1.4です。ここは思いのほか違いが
ありました。ゴールドブレンド飲まない人でも違いがわかりそうです。
わかりやすいのはカゴの持ち手の部分。プラナーの柔らかいボケに比べて、
ニコンはやや硬い印象。コントラストもニコンが高めです。ちょっと拡大
してみると、さらに違いがよくわかります。
どちらも、画面中央上の花(?)にピントを合わせていますが、ピントの
合っている部分はニコンがニコンがシャープ。あれ?さっきの建物の
撮影と違った結果となりました(撮影距離による違いでしょうか。むむむ)。
しかし、右側の葉の部分を見ても、下の前ボケの花を見ても、ニコンの
ボケ方はややガチャガチャした雰囲気です。またカゴの部分を見ると、
プラナーはにじんだような描写です。
いかがでしょうか。ボケ味など、いわゆる「レンズの味」に関しては。
好きか嫌いかであり、どちらが優れているかではないと思いますが、
正直なところ、ボケ味に限ればプラナーのほうが好きという方が多いの
ではないかと思います。また、近距離でのピントの良さはニコンに軍配が
上がると言えますが、これも描写の好き嫌いや、撮影する被写体によって
票が分かれるところだと思います。
ここまでの共通データ D810・絞り優先・ISO100・WB:太陽光・JPEG・
長辺1280ピクセルにリサイズ・レタッチなしです(室内のカゴの写真は、
ライトルームにてホワイトのみ調整)。
ではここからは、プラナーで撮影した作例です。
さすがのボケ味です。
鼻先にピントが来ているような。開放でのピント合わせは要注意です。
絞るとかなりシャープです。シャープネスをそれほど上げなくてもこの
描写(といってもオリジナルサイズの画像はご覧いただけませんが)。
暗部もつぶれずによく残っています。
でも、やっぱり開放で使いたい。
〇そのほか特筆する点といえば!
・レンズの質感
ピントリングは金属のローレット、そしてコンパクトなサイズでありながら
この重量感。あなたの所有欲も満たされることでしょう。
・ピントリングの滑らかさ
これは気持ちよい感触。撮影しないときもついついピントリングを回して
しまうワタクシでありました。
・ピントリングの向きが純正と一緒
ニコンとキヤノンはピントリングの向きが逆ですが、それぞれのマウントで
純正に合わせて作られています。こういうところでコストがかかりそうですが、
撮影者の気持ちをよく理解していただけていると思います。
・ピントリングの回転角が大きい
ピントリングばっかりかい!というツッコミがありそうです。これに関しては
いいことばかりではありません。回転角が大きいと正確なピント合わせが
できますが、ピントの山がつかみにくかったり、速写性に欠けるといえる
でしょう。
〇残念な点
・絞りリングの最小絞りのロック(ニコンマウントのみ)
このモデルのニコンマウントのレンズには絞りリングがついていますが、
絞りをボディ側で操作するカメラの場合、絞りを最小にセットする必要が
あります(このレンズの場合16)。その位置から絞りが動くとボディから
絞りを操作できなくなるためにロック機構があるのですが、このレンズで
絞りを16にすると、そのとたんにロックされてしまいます。フィルムカメラ
など直接絞りリングで絞りを操作する場合、一度16にするとほかの絞りに
変える際に、ロック解除ボタンを押しながらの操作しなければなりません。
・キャップがちゃんとはまらないことがある
ワタクシだけ?
結論
2万円払ってもこのボケがほしいかどうかが、購入の基準になるのではないで
しょうか。あ、でもワタクシは、あのピントリングの感触に1万円ぐらい
払ってもいいかもと思ってしまうのでありました。