カメラ今昔物語
こんにちは心斎橋買取センターの たつみ です。
今回は、栄えある第1回カメラグランプリ受賞モデル『ニコンFA』に
まつわるお話です。
ニコン中級機モデルの完成形
現在まで脈々と続いているカメラグランプリ。
前年の4月1日~翌年3月31日までに発売された製品からカメラ記者クラブ会員や
各雑誌編集長などで構成される選考委員たちによって受賞モデルが決定
されるいわばその年度の新人王を決める由緒正しい賞で、各メーカーは威信を
を掛けてそれを狙っています。
(ちなみに2019年はパナソニック LUMIX S1Rが受賞しました)
この賞が創設されたのが今から35年前の1984年。
こちらのコラムでも度々お話ししてきておりますカメラの電子化を様々な観点
から推し進めた時代です。
メーカー間での競争も激化し、新製品が発売される度にキャッチコピーには
『世界初!』や『日本一!!』が怒涛の如く叫ばれておりました。
そんなある意味業界にとっては華やかな時に栄えある初代グランプリカメラと
して表彰されたのが、1983年9月発売の『マルチニコン』と呼ばれたFAでした。
このFAのルーツはニコマートELからはじまった電子式シャッター系統に属し、
大ヒットした中級機のエースFEの派生モデルとの位置付けがなされています。
その系統からみてもFAはニコンが世に送り込んだ中級機の完成形と言えると
思います。
完全電子化を目指し
究極の電子化を目指し各社が日夜研究に汗を流していた70年代の末期。
ニコンでは社内にいくつかのプロジャクトを発足させ同時進行的に開発に
あたらせます。
その中からいくつもの新機構が後に盛り込まれたのですが、代表格として
FM2で世間のド肝を抜いた1/4000秒シャッターの開発。
そして現在でもニコンの主力機構として搭載されている
『マルチパターン測光』でしょう。
この世界初の分割測光方式は画面を5分割しそれぞれ独立して測光し、
おおよそ1万点にも及ぶ実写記録からプログラムされたデーターを演算し
露出決定するといった当時としては超画期的な仕組み。
(本当はもっと複雑な仕組みなのですが。。)
この新機構をFE2の後継モデルに搭載する事を決めます。
さらに他社が先駆けて発売されていた両優先式AE+プログラムAE方式をニコン
として初めてこの後継機に組み込む事を合わせて行います。
もともと絞り優先方式をAEの主としておいていたニコン。
絞りを自動制御する方式には元々なっていなかったニコンマウントの改良
にも取り組みます。
レンズ側では絞り値と連動レバーの動きが一定に比例するように一新。
(Ai-Sレンズの発売)
さらに新型のカメラマウントにAi-Sレンズの識別が出来るようにするピン
やプログラム切替のレバーなどを新設しました。
(あの狭いマウント内でこれだけの改良を施すとは驚異的!)
この社内的な大きなプロジェクトと改善を受けて新型機『FA』は誕生した
のでした。
最後に。。
新機構(マルチパターン測光)と両優先+プログラム(マルチプログラム)
を携えた事により『マルチニコン』と呼ばれたFAは発売当社から大きく世間
の注目を浴びます。
ファインダー内は最高機F3に似た液晶表示を採用したり、専用モータードラ
イブ『MD-15』を用意したりし、その扱いはF3並みの位置付けとされ、当時
のカメラ少年達からも憧れの存在となります。
一方でそれまでの機種から大柄になったサイズや値段の為に『FE~』のネーミ
ングは見送られ孤高の存在となっていきます。
さらに翌年から始まるAF化の波で話題はそちらに取られてしまいます。
あと数年発売が早ければ間違いなく大ヒットしたあろうFA。
しかし、第1回のカメラグランプリ受賞の記憶は今もなお褪せる事はなく歴史
にその名を刻んでいます。