コラム カメラのナニワ 千里中央店

インナーフォーカスのレンズについて

カメラ(レンズ)のピント合わせにはざっくりと分けて全群レンズを繰り出す方法と中間部のレンズ群を動かす方法があります。全群繰り出し式はマニュアルレンズの広角や標準系によく見られる方式で中間移動式は望遠レンズによく採用されています。前者がピントを合わせる位置に応じてレンズの全長が変化し重心のバランスも異なってくるのに対し、中間移動式はピント合わせによる全長の変化はなく、重心の移動も少なくなっています。この中間移動式がインナーフォーカスといわれるもので、「IF」と表記されることもあります。望遠レンズになりますと前に繰り出す方法では重たい前レンズを動かす距離が長くなり、ピント合わせに要する時間も長くなるためインナーフォーカスを採用するレンズが多くなっています。また、オートフォーカスレンズでもピント合わせの時間や電池の消費量からインナーフォーカスを採用しているレンズが多くなっています。

 

上・インナーフォーカスレンズ ニコンAF300mmF4(IF)

下・全群繰り出しレンズ ニコンAI300mmF4.5

無限時

 

最短時

 

インナーフォーカスのレンズはピント位置が近くなるほど焦点距離が短くなるという話があります。そこで実験をしてみました。

それぞれのレンズをファインダー視野率が同じボディに装着し、ほぼ同じ位置から約7メートル離れたショーケース内のPOPにピントを合わせたファインダースクリーンを撮ってみました。

上・全群繰り出しレンズ ニコンAI300mmF4.5

下・インナーフォーカスレンズ ニコンAF300mmF4(IF)

スプリットの円の右側にEの字の右端を合わせて左側を比較すると、下のIFのレンズはRの左のFの字にも円がかかっています。同じ300ミリレンズでも繰り出すタイプよりインナーフォーカスの方が画角が広くなっているのがわかります。

レンズの焦点距離は無限時のもので、インナーフォーカスのレンズはピントの位置が近づくほど画角が広くなるそうですがあまり変化はないそうです。一方、繰り出し式はレンズが前に繰り出すので画角は望遠になるそうです。「焦点距離」がフィルム面(センサー面)からレンズの主点までの距離を指すことと合わせると、前レンズが伸びることは主点も前に移動することになりますので望遠側にシフトすることになります。同じ焦点距離のレンズでも繰り出し式よりインナーフォーカスのレンズの方が短めに写るということは今回の実験で言えると思われます。

 

昔、ニコンのAIS400ミリF3.5(IF)にテレコンTC-14BSを付け560ミリ相当にしてAIS600ミリF5.6(IF)同様の望遠効果を試みたことがあります。が、実際は600ミリの単焦点には40ミリ差以上を感じる位 及ばないものでした。テレコンバーターは望遠度を増やすことができる便利なレンズである反面、マスターレンズのカラーバランスや収差などの弱点を増幅します。この400ミリ(IF)にテレコンを付けた状態では近づくほど画角が広くなるインナーフォーカスの性格が増幅されたと思われます。インナーフォーカスのレンズにテレコンバーターレンズを付けて望遠効果を狙う場合、計算した焦点距離は希望の短焦点レンズより短めに考えたほうがよろしいかと思われます。

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