こんにちは。カメラ担当の池田です。
今回も新製品レビューをお届けいたします。
今回、ご紹介いたしますカメラは2020年2月28日発売のオリンパスOM-D E-M1 MarkIIIです。
商品名からわかりますように、E-M1 MarkIIの後継機種となります。
前モデルのE-M1 MarkIIは2016年11月に発売され、それまでミラーレス一眼の弱点であった「動く被写体に弱い」という概念を覆したカメラでした。
オリンパスさんのプロモーションも動きものに特化した部分もあったように記憶しています。
そんなミラーレスの常識を変えたE-M1 MarkIIがさらにパワーアップ。
風景写真家に喜ばれるであろう機能を搭載してE-M1 MarkIIIは登場してきました。
前モデルとの比較をしながら、E-M1 MarkIIIの魅力に迫っていきたいと思います。
外観
左がE-M1 MarkIIIで右がE-M1 MarkII。
ボディの大きさや重量、デザインはほとんど変わっていません。
モードダイヤルに「B」が追加され、バルブやライブコンポジットの設定がしやすくなりました。
E-M1Xで好評だったマルチセレクター(写真中央)を搭載。これにより、前モデルE-M1 MarkIIよりAFポイントの変更が格段に素早く快適に行えるようになりました。
スペック
主な機能の比較です。
E-M1 MarkIII | E-M1 MarkII | |
画像処理エンジン | TruePic IX | TruePic VIII |
ボディ内手ブレ補正 | 7.0段 | 5.5段 |
常用ISO感度 | ISO200~25600 | ISO200~25600 |
連写(AF/AE追従) | 18コマ/秒 | 18コマ/秒 |
AF性能 |
121点オールクロス 像面位相差AF |
121点オールクロス 像面位相差AF |
画素数 | 2037万画素 | 2037万画素 |
シャッター耐久性 | 40万回 | 20万回 |
USB充電 | 対応 | 非対応 |
上の比較表から、画像処理エンジンが最新のものとなり、手ブレ補正効果が7段になったことなど進化が見られます。
手ブレ補正は2019年2月に発売されたE-M1Xと同じボディ単体で7段の補正効果が得られ、手ブレ補正付レンズM.ZUIKO 12-100/4 PRO ISを装着した場合は、最大で7.5段の手ブレ補正効果が得られます。手持ちでシャッタースピード4秒の写真撮影が可能だとか……。
その一方で、AF性能や連写性能は数字上では大きな進化が見られません。連写性能については、秒間18コマの撮影ができれば十分であること。
そしてAF性能・測距点については、測距点の数だけを比較すると121点より多いミラーレス機はたくさんありますが、オールクロスセンサーになっているのはオリンパスの上位モデルのみとなっており、この機能についても据え置きとなっています。
しかし、数字では表現できないオートフォーカスの追従性能は進化しているとのことです。動く被写体に対しても、さらなる追求をしてきた感じです。
新しい機能(※E-M1 MarkIIと比較して)
①手持ちハイレゾショット
まず、ハイレゾショットとは……。
センサーを少しづつ動かしながら複数枚(三脚設定の場合は8枚、手持ち設定の場合は16枚)撮影し、それをカメラ内で合成し、最大8000万画素相当の高画質を生成する機能です。
E-M1 MarkIIにもハイレゾショットは搭載されていましたが、三脚使用が必須条件でした。
E-M1 MarkIIIには三脚だけでなく、手持ちでもハイレゾショットが可能になりました。
三脚が使えないシーンでは手持ちハイレゾが活躍する事も多いのではないでしょうか。
手持ちハイレゾは三脚ハイレゾより合成処理に時間がかかりますので、ゆっくり撮影できるシーンでは問題ありませんが、状況が刻々と変わるような風景の撮影では少し注意が必要です。
②星空AF
星空AFはオリンパスとしてはE-M1 MarkIIIに初搭載された機能です。
その名の通り、カメラが星空に自動でピントを合わせてくれます。
従来、星空を撮影する場合は、ピント合わせの基準とする明るい星を見つけて、マニュアルフォーカスでピントを合わせるのが普通でした。でも、この操作が以外と面倒で、慣れるまでは時間のかかる作業でした。
でも、この星空AFを使用すれば、簡単に誰でも星空写真が撮れます。オリンパスで人気のライブコンポジット機能との併用で活躍しそうです。
③ライブND
ライブNDはE-M1Xに初搭載された機能で、電子的にNDフィルター効果を出してくれる機能です。
NDの効果は、ND2、ND4、ND8、ND16、ND32の5段階から選べ、何よりも魅力的なのはライブと書いてあるように、NDの効き具合を液晶やファインダーで確認しながら撮影できるという点です。
カメラ内でNDフィルターの効果が出せるので、フィルターの装着が難しい、超広角レンズや魚眼レンズでもスローシャッターでの撮影を楽しむことができます。
④瞳AF
瞳AFは新しく搭載された機能ではなく、前モデルE-M1 MarkIIにも搭載されていました。遡れば、2011年発売のエントリーモデルE-PL2から搭載されていました。
ここ数年、瞳AFの精度が向上し、カメラを購入を検討する際のひとつの材料となってる人気の機能です。
オリンパスさんは2011年から瞳AFを搭載しているのに、これまで大きく宣伝をしていませんでした。
そして今回、精度、スピードを一気に向上させた瞳AFをE-M1 MarkIIIに搭載してきました。
作例
ここからは私がE-M1 MarkIIIで撮影した画像をご覧ください。
強化されたボディ内手ブレ補正機能。
夜明け前の琵琶湖にて撮影しています。まだまだ暗く、本来であれば三脚の必要な状況です。
しかし、このカメラには強力な手ブレ補正機能が搭載されています。そして、この写真を撮影したレンズM.ZUIKO 12-100/4 PRO ISを使用すれば最大7.5段分の手ブレ補正効果が得られます。
シャッタースピードは2秒。結果は手ブレせずに撮影することができました。
手ブレ補正効果が高いと、暗いシーンではISO感度を高くする必要もなくなり、結果として高画質の写真を得ることができるのです。
この写真も手ブレ補正機能を活用して撮影した写真です。
この場所は高いフェンスがあり、三脚を使用するにも2メートルくらいまで伸びるものが必要となってきます。そんな場所ですので、脚立にのって手持ちで撮影しています。
シャッタースピードは1秒ですが、しっかり止まっています。
三脚禁止の場所が増えていますので、手ブレ補正が強力なのはとても心強いです。
朝焼けの琵琶湖を被写体に手持ちハイレゾショットで撮影しています。
1枚目が元画像で、2枚目が手前の木の拡大画像です。
手持ちハイレゾショットでは16枚の写真を合成し、約5000万画素の高精細な画像を生成してくれますので、上の写真のように高画質の写真を楽しむことができます。
風景写真のように繊細な描写が求められる場合にハイレゾショットがオススメです。三脚ハイレゾショットなら約8000万画素相当の画像が得られますので、撮影シーンに合わせて使い分けると良いでしょう。
但し、注意点がございます。
手持ちハイレゾショットの場合、三脚ハイレゾショットより合成に時間がかかります。感覚的には7秒くらいでしょうか。テンポ良く撮影するのは正直難しいです。
また、F値は開放からF8まで、ISO感度は6400まで設定となり、撮影中に被写体が動くと、うまく合成ができない場合があります。
上の写真はライブND機能のND32(5段分減光)にして撮影しています。
風景写真の中でも滝や渓流は人気のある被写体です。その一般的な撮り方というのが、シャッター速度を遅くして流れを表現するというものです。
日中の明るい場所でスローシャッターにするには、NDフィルターが必要となるケースも多々あります。
作例写真を撮影した状況がまさにそういう状況で、明るすぎて絞りを絞り込んでISO感度を拡張のL64にしてもスローシャッターにならないのです。
そんな時に便利なのがライブND機能なのです。
「ライブND」の名前の通り、ライブで水の流れ具合を確認しながら撮影できるのが便利で、フィルターの装着できないM.ZUIKO 7-14/2.8 PROやM.ZUIKO 8/1.8 Fisheye PROのレンズ使用時には特に重宝する機能だと思います。
雪の降る中撮影したザゼンソウ。
オリンパスの防塵防滴は強力で、雨や雪の中での撮影でも、かなり安心して使用できます。またシャッター耐久性能も40万回になり、さらに信頼できるカメラとなりました。
この写真は木道からの手持ち撮影で、バリアングル液晶を活用してローアングルで撮影しています。
バランスの悪い姿勢での撮影でしたが、強力な手ブレ補正効果もあって、無事撮影することができました。
これまで、風景写真を中心に機能のご紹介をしてきましたが、前モデルのE-M1 MarkIIから動く被写体に対しての性能はしっかり引き継がれています。
ブラックアウトフリーで秒間18コマ(電子シャッター時)の連写ができることは、鉄道写真だけでなく、飛行機や野鳥の分野でも活躍します。
この日も鉄道写真を数カット撮影しましたが、ピントが甘かったりすることはなく、快適かつ信頼して撮影することができました。
動く被写体に対しての性能は、たくさんあるミラーレス一眼の中でも抜群に良いと思っています。
ギャラリー
まとめ
OM-D E-M1 MarkIIIの良さを一言で言うなら「オールラウンドプレイヤー」ってとこでしょうか。
その理由として、動く被写体に強いだけでなく、風景撮影に有効な機能を豊富に搭載し、さらには瞳AFの進化によりポートレート撮影にも最適な1台となったことです。
風景写真と言えばフルサイズ機で撮りたい人も多いと思いますが、たくさんのレンズを持ち運びするには少し大変です。また、フルサイズ機となると三脚もそれなりの大きさ、重さのものが必要となってきます。
オリンパスのマイクロフォーサーズシステムであれば、ボディもレンズも小型軽量ですので、機動力が一気にあがります。
また、ボディ単体での手ブレ補正効果が7段ありますので、三脚を使う必要がないと言っても過言ではありません。
高画素カメラが多い中、E-M1 MarkIIIは約2000万画素ですが、全紙サイズのプリントでもまったく問題はありませんし、さらに大きなプリントを前提として撮影するならハイレゾショット機能を使えば良いのです。
機動力があがれば、今までは諦めていたシーンでの撮影も可能になり、新たな作品が生み出されるかもしれません。
フルサイズ機をメインに使用している方のサブ機としてもオススメの1台です。
今回は天候の関係で、星空AFを試すことができませんでしたが、またいつかチャレンジしたいと思います。
この記事に関するお問い合わせは・・・カメラ担当 池田まで