皆さまは、「KinoPlasmat(キノプラズマートもしくはキノプラズマット)」というレンズをご存じでしょうか?
MS-Opticsの宮﨑氏が製作したこの「VARIOPRASMA 1.5/50 F・MC」は
「KinoPlasmat 50mm F1.5」を模倣したものです。
アタシもキノプラズマートの実物を見たことはありませんがクセ玉として有名なレンズです。
どのような要素がクセ玉と言われているかというと、ソフトな描写とグルグルボケの要素です。
作例をご覧いただくとわかりやすいと思いますので下の画像をご覧ください。
F/1.5 1/500秒 ISO100 露出補正+1 P2
このレンズの特徴が全て詰まったかのような写真です。
後方のボケがグルグル回り、ハイライトが滲みソフトな描写になっています。
後ろの枝も二線ボケになり、桜などの光源がキュベレイのファンネルのような形状(逆三角形)になっており、コマ収差も確認できます。
【意図的に収差を操る】
VARIOPRASMAをカメラに装着し、上から見た写真です。
ローレット加工されているレンズヘッド(前1群)を回すと、黒点が一緒に動きます。その黒点を2~6の数字に合わせると収差が変化する仕組みです。
赤色のP6(ポジション6)が距離計連動になり、レンジファインダーカメラで距離指標に合わせて撮影することができます。
逆を言えば、P6以外のポジションにセットした場合は、ピントが距離指標の数値ではなくなるので撮影することができません。
ミラーレスカメラで撮影する必要があります。なぜかと言うとレンズヘッドが前後に繰り出すため、その分ピント位置が変わるからです。
P6(レンズヘッドが前に繰り出した状態)で最短撮影距離が0.8m、P5からP2にかけてレンズヘッドが手前に戻ってきます。
それゆえに、P2などでは最短撮影距離が結構長くなり扱いづらく感じました。
ヘリコイド内蔵のアダプターを使用することが望ましいです。
ポジションごとの作例を下に載せましたので、ご覧ください。
【ポジションごとの作例】
※ライカMモノクロームTYP246で撮影
※ピントを最短撮影距離にした状態です
P2 F/1.5 1/2000秒 ISO320
P3 F/1.5 1/2000秒 ISO320
P4 F/1.5 1/2000秒 ISO320
P5 F/1.5 1/2000秒 ISO320
P6 F/1.5 1/2000秒 ISO320
・上で説明したようにレンズヘッドを回転させ、前に繰り出す方式でポジションを変更するので、写る範囲が異なります。
・P6からP2にかけてソフトさが増しています。
・写っている範囲が最も広いからかもしれませんが、P2が最も四隅の流れ(グルグル)が大きいです。
最初に取り扱い説明書を読まずにフィルムで撮影しました。
レンジファインダーカメラでポジション2の状態で撮影したのでフィルム2本分全てがピンボケとなりました。
こんな感じで約72枚分全てピンボケでした、、、
【作例】
※デジタルカメラで撮影したものは全て撮って出しです
【Nikon Z6】
F/1.5 1/8000秒 ISO100 P2 アタシの友人が撮影した一枚。とても上品なフレアが発生することを知りました。収差のせいで雪柳がタコの触手のようにうごめいているように見えます。友人には感謝です。
F/1.5 1/8000秒 ISO100 P2 最近はフィルムで撮影した露出を万年筆でメモしています。わざわざアナログなことをするって時代に逆行していて好きです。
F/1.5 1/800秒 ISO100 露出補正+1 P2 木漏れ日を撮影。やさしい軟調な描写が合います。
F/1.5 1/3200秒 ISO100 P2 公園を流れる川を撮影しました。収差のせいで水しぶきが上がっていると錯覚します。
F/1.5 1/250秒 ISO100 P2 漫画のエフェクトでよくある集中線を使ったような写真になっています。動いていない落ち葉に躍動感を感じます。
F/1.5 1/250秒 ISO100 P2 上の写真のピントをずらしました。上と違い、おとなしくなった印象です。
F/1.5 1/4000秒 ISO100 P2 こういう情景ってパキっとさせがちですが、ソフトなのも良いのでは?
F/1.5 1/800秒 ISO100 P2
F/1.5 1/800秒 ISO100 P2 収差による影響で湿度感じます。この時間帯でしか表現できないのかすごく好みの写真です。
F/1.5 1/60秒 ISO100 P2 まだそれなりに人がいた頃の梅田です。点光源の滲みが独特です。
【Mモノクローム(Typ246)】
F/1.5 1/3000秒 ISO1000 P6 我が家の新入りです。好奇心旺盛で夜中に「ニャーニャー」遊んでとたかられます。
F/1.5 1/500秒 ISO1000 P6
F/1.5 1/250秒 ISO400 P6 古参の方です。チャビーなやつですが、凛々しく見えます。
F/1.5 1/500秒 ISO400 P6
F/8.0 1/125秒 ISO320 P6 ピントは地面に合っており、しっかりと描写されています。MS-Opticsのレンズは絞ったときのシャープさが素晴らしいです。
F/8.0 1/2000秒 ISO320 P6 F8.0まで絞り込み、ピントは画面中央からやや下の歩道橋の柵に合わせています。全体的にシャープですが、四隅だけ解像度が低いです。
F/1.5 1/60秒 ISO3200 P6
F/4.0 1/100秒 ISO400 P6
F/8.0 1/1000秒 ISO400 P6
F/1.5 1/4000秒 ISO320 P6
【α7】
F/1.5 1/640秒 ISO100 P6 こういう花などの写真にはVARIOPRASMAのソフトさが合います。
F/1.5 1/640秒 ISO100 P6 もう少しハイキーにしてあとでRaw現像すれば、とても良い写真になりそうです。
F/1.5 1/640秒 ISO100 P6 それなりの数のネモフィラが集まっていたので、グルんグルん回してやりました。
F/1.5 1/640秒 ISO100 P6 ピント面は綺麗ですが、複雑な背景にするほどガチャつきます。
【Lomography Color Negative 100】
F/1.5 ISO100 P6 ポジションが6から少しでもずれていれば、距離計連動が狂うことになりますので、しっかりと確認しなければいけません。ましてや、絞り開放であれば確実にピンボケします。
F/4.0 ISO100 P6 F4.0あたりからはシャープさがあり、しっかりとした描写になっていきます。
F/1.5 ISO100 P6 荒神口のPINTさんでの撮影。全面マルチコートが施されていますので、色乗りは良いです。
F/1.5 ISO100 P6 竜崇縫靴店の崇の人。アタクシのブーツを作ってくれた職人です。これはどこのお店の人のパネルのマネでしょうか?
F/1.5 ISO100 P6 竜崇縫靴店の竜の人。撮影環境にもよりますが、絞り開放はなかなかピントが難しいので、絞ったほうがいいと思いました。
F/4.0 ISO100 P6 絞ればこんな感じです。キレイすぎる写りです。
いかがでしたでしょうか?
【まとめ】
- MS-Opticsの製品らしくとても軽量
- 開放のクセはもちろん、絞ればとてもシャープで現行レンズに匹敵します
- ズマールやズマリットなどのソフトでクセの強い玉が好きな方にはたまらないレンズ。
- ミラーレスカメラでの使用を推奨します
- ヘリコイド内蔵のマウントアダプターで使用するとより一層楽しめます。
- レンジファインダーカメラで距離計連動で使用する場合、絞ることを推奨します
とにかく使っていて楽しいレンズであることに間違いはないです。
試写すると購入したくなるのでお気を付けください。
みなさんもぜひ写真と経済をグルグル回しましょう。
以上、カメラのナニワ梅田2号店のブログスタッフでした。