【驚異の描写力】W-NIKKOR 3.5cm F1.8 Sマウント 作例付き使用レビュー

現像から返ってきた写真を見て驚いた。
「このレンズこんなによう写るの!?」
高屈折率の新種のガラス(ランタンガラス)
使用した半世紀以上前のレンズは現在においても唸るような描写だった。

見た目主義のあたしとしましては、
大口径で出っ張らず、コーティングが施されている
イケメンなレンズという認識だった。
ブラックペイントのSPにすごくよく似合っており、
「これでアガリなんじゃあないか?」
そう思った。いつ死ぬかはまったくわからんが、
この先、黒塗りの古いライカとかいうカメラを手にしないのではないか?
SPのおかげでそう思えた自分がいた。

強いて言うなら、S3のブラックペイントが欲しくなるんだろうな。
等倍という誘惑、ただそれだけですが。
そんな野郎が書くブログですが、最後まで読んでいただけるとありがたいです。


【ざっくりとしたスペック】

発売年 1956年9月
レンズ構成 5群7枚
フィルター径 43mm
焦点距離 3.5cm(35mm)
F値 1.8~22
最短撮影距離 3フィート(0.9m)
重さ 約156g

このレンズはLTM(Leica Thread Mount)
俗にいうライカスクリューマウントも存在していますが、
今回はニコンSマウントです。
LTMになると重さや直進ヘリコイド方式など、もちろん見た目も違います。
見た目ではLTMの方が好みです。機会があれば使ってみたいレンズです。

距離指標がm(メートル)と、feet(フィート)表記の二種類が存在しています。

レンズ構成がクセノター型の最後にダブレット(凹凸二枚の貼り合わせ)を
追加した構成になっており、そのダブレットが収差を補正する役割を担っています。

このダブレットが大きくて、めちゃかっこいいですな...


【作例】

【FUJICOLOR 業務用フイルム ISO100】

まだまだ暑かった夏の日、しっかり絞って撮影しました。半世紀以上前のレンズですが、とんでもない描写力です。

11.0まで絞って撮影。ビルの反射を活かすために撮影しましたが、某コンビニの看板がドラマチックに写っていました。ゴーストが見られません。

絞り開放1.8、最短撮影距離で撮影。素晴らしい立体感と解像力。ボケになっている電線が二線ボケ傾向でしょうかね。対称型構成ですので、周辺光量落ちは避けれません。

こちらは大阪駅の上にある、時空の広場。大阪駅の屋根から注ぐ光が綺麗な場所です。おそらく8.0まで絞っています。それゆえ、隅々まで綺麗に描写されています。

光が綺麗とはまさにこのこと。まぁ建物が良いからこうなっているんでしょうけど。

これだけの描写力を持ったこのレンズはスナップ向きだと感じます。 絞って被写界深度スケールを用いて撮影するといいでしょう。

勘露出が冴えた一枚。歩いている人がスポット光で引き立ちました。ホームに立っている人までわかる解像力、えげつないです。


【Kodak PORTRA800】

F/11.0 SS1/125秒 ISO800 奥の方の車とか屋根の柱などを見ると、本当に半世紀以上前の35mm判のレンズか?疑いたくなります。

F/8.0 SS1/250秒 ISO800 ややアンダー気味の一枚。PORTRA800の色再現と3.5cmの素直な描写に相性の良さを感じました。

F/8.0 SS1/60秒 ISO800

F/11.0 SS1/500秒 ISO800 勘露出は時として、過ちを犯します。「ISO800やからちょっと暗めに撮ってもええやろ」その油断が招いたアンダーな写真。これはこれで雰囲気あって好きですがね。

F/8.0 SS1/250秒 ISO800 古いレンズですが、よく写る。写るけれども現行ほどではない。オールドレンズという括りはそういった良さを感じることができるが故にブームなのでしょうか?このレンズはそういうのとはまた少し違った魅力があります。

F/8.0 SS1/500秒 ISO800 一瞬多重露光っぽく見える写真。ガラスの反射を利用し撮影しました。

F/8.0 SS1/250秒 ISO800 こういった面を捉えた撮影をしても対称型構成なので、歪曲収差を感じません。

F/8.0 SS1/250秒 ISO800 ほんっと歪まないことは精神安定に繋がる。レトロフォーカスタイプが使えそうにないです。

F/1.8 SS1/30秒 ISO800 井尻珈琲焙煎所さんにて撮影。室内ですが、しっかりと光を取り込んだこともあり、綺麗な画に仕上がりました。


【Kodak T-MAX400】

F/1.8 SS1/30秒 ISO400 関西の人間なら読めるであろう「十三」という駅で撮影。SP用イルミネーターがあれば写欲が上がる夜撮影。絞り開放で撮影していますが、ピントのキテいる踏切付近の解像力は素晴らしいです。

F/1.8 SS1/30秒 ISO400 こちらも開放で撮影。コントラストが低く、古いレンズ柔らかさを感じます。しかし、光源の形も崩れず、解像力もあります。

F/8.0 SS1/1000秒 ISO400 やたらと暑かった8月上旬。リバーサルフィルム日和の天気でした。左上の光は光源からのフレアだと思います。

F/8.0 SS1/1000秒 ISO400 この光景は天気さえよければ撮りたくなります。なんやかんや撮ってしまうので遠景描写テストになっています。

F/8.0 SS6.5秒 ISO400 シャッタースピードは約6.5秒。あえての残像です。奥の器はシャキッと描写されています。

F/8.0 SS1/30秒 ISO400 こういった下町のスナップには相性が良さそうです。


【Kodak T-MAX100】

F/8.0 SS1/60秒 ISO100 海外ロケを何度も経験してきたベテランディレクターのような風貌。あたくしの動画のパートナーでございます。人を写してもいいレンズ。

F/8.0 SS1/125秒 ISO100 最短撮影距離で撮影。絞るとしっかり解像されますが、コントラストがキツくなりすぎることはありません。

F/5.6 SS1/60秒 ISO100 9月上旬親知らず抜歯当日に撮影。麻酔が切れるまでの時間潰しで駅のベンチでぼーっとしていたあのとき、何もやることがなく青春の味がする飲料を地面に置き撮影した。シャキッとしているなかにゆったりとしたリズムが流れているこの写真が大好きです。

F/1.8 SS1/2秒 ISO100 麻酔が切れていない状態で珈琲を一杯いただいた。味はほとんど感じなかった。無謀なことをしたので、開き直って1/2秒で撮影。これがブレていないんです。 ヴェールのかかったような開放の描写と裏腹の解像力がこのレンズの魅力の一つです。もちろんこの後二杯目の珈琲をいただきました。

F/5.6 SS1/60秒 ISO100 シルエットになるよう狙ったわけではありません。むしろアンダーでミスった感じ。それがかっこよく見えてしまいます。フィルムのこういうところが好きです。

F/11.0 SS1/500秒 ISO100 荘厳。そう思いました。ここまでアンダーにするつもりはなかったんですがね、、、勘露出の失敗ってやつです。

F/11.0 SS1/125秒 ISO100 言わんでもわかる描写。すんばらCです。

F/5.6 SS1/60秒 ISO100


いかがでしたでしょうか?

あたくしが今年一番驚いたレンズです。
なんかいいなって思うレンズはたくさんあるんですが、
ここまで【しっかり写る】レンズはなかなかありません。
古いレンズは何本か所持していますが、
この古さで、この描写性能は初めてでした。
強いて言えば、周辺光量落ち二線ボケが良くないところです。
まぁ、それが味であって好きなところですけどね!

あとは付属品は一緒に入手したいところです。
特にリアキャップフードは必ずほしいですね。

後玉が突出してるのでリアキャップはしたまま保管したいです。
後から入手しようとすると面倒です。
ニコンSマウントのレンズとしては見つけやすいほうですがね、、、

以上、カメラのナニワ梅田2号店の若林でした!!