こんにちは、カメラのナニワの松尾です。
今回、ご紹介させていただくのは、2021年1月14日にタムロンから発売の
17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)です。
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こちらのレンズは、タムロンからはNEX用として発売された『18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC Model B011(2011年発売)』以来のソニーEマウントAPS-Cセンサー専用のモデルになります。当然ながら、α7シリーズなどのフルサイズ機では自動でAPS-Cサイズにクロップされる仕様となっています。
以前にタムロンから一眼レフ用レンズとして、『SP AF17-50mm F2.8 XR DiII(2006年)』という同じ標準ズームでAPS-C用のF2.8通しのレンズが発売されていましたが、当時よりも焦点距離が伸び、最短撮影距離も短くなり、手ブレ補正も搭載されているなど、性能が大幅にアップしましたが、重量はあまり変わらず同じ500g台となっており、タムロンの技術の進化が見てとれます。
〈スペック〉
気になるスペックは大まかにこのようになっています。
- 焦点距離 35mm判換算25.5-105mm相当(ズーム比4.1倍)
- レンズ構成 12群16枚(ガラスモールド非球面レンズ2枚、複合非球面レンズ1枚搭載)
- 人工知能テクノロジーを活用した新開発の手ブレ補正機能搭載
- 最短撮影距離 広角側=0.19m 望遠側=0.39m
- 長さ=119.3mm 最大径φ=74.6mm フィルター径φ=67mm 質量=525g
〈画角〉
焦点距離は、広角から中望遠域までカバーしてくれるので、1本持っていれば様々な撮影で重宝すること間違いなしです!
広角端と望遠端で同じ場所を撮影しました。非球面レンズが計3枚搭載されており、広角側の歪曲収差も効果的に抑えられています。
ズーム域が長いと、単純に広角から望遠まで撮れるだけでなく、当然ながらその範囲のなかの焦点距離すべてで撮影することができます。例えば、「入れたい被写体」と「絶対に入れたくない被写体」が出てきた場合、単焦点レンズだと移動を強いられたりその構図をあきらめたりする場面がありますが、ズーム域の広いレンズは絶妙な画角に調整することが可能なので、思い通りの構図を簡単に得ることができるというメリットがあります。
今回のレンズの焦点距離は35mm換算で25.5-105mm相当となっており、フルサイズのカメラで使いやすいと人気の24-105mmレンズに近いズーム幅になっています。APS-Cセンサーのカメラでこのズーム域をカバーできるレンズは少ないとあって、これだけでもこのレンズの価値は高いと思います。
〈最短撮影距離〉
最短撮影距離も広角側で19cmと、今までのタムロン製Eマウント用レンズと同様、非常に近くまで寄れる設計になっており、レンズの全長が12cmという事もあってレンズフードが被写体に当たりそうになるくらいまで寄ることができます。
【作例】
イルミネーションのわきに植えられていた、なんとも神秘的なお花(なのか?)をマクロ気味に撮影しました。最短撮影距離が近いと、ただの散歩撮影でも表現の幅をぐっと広げてくれます。また、このレンズはソニーのボディに搭載されている「ダイレクトマニュアルフォーカス」にも対応しているので、細かいピント調整がMFに切り替えることなく行えるのもうれしいポイントです。
〈コーティング〉
コーティングは、以前からのレンズ同様に「BBARコーティング」が採用されています。
というわけで、初日の出をバックに意地悪な逆光での撮影を試みました。
1枚目はわかりやすくゴーストが出ていますが、それでもよく抑えられています。
2枚目に関してはフレアやゴーストはほとんど見られませんでした。
〈絞り・ボケ〉
絞り羽根は9枚で、円形絞りを採用しています。
円形絞りの大きな特徴は、言わずもがなボケ玉の形がきれいな円になることです。
というわけで、冬らしいイルミネーションをバックにボケの出方を見てみました。なんばパークスを小一時間歩き回ってやっと見つけた被写体です。。ボケを見るためなので、ご容赦を、、
※ボディ:α6400 焦点距離:70mm(望遠側)
気になるのは、ボケ玉にいわゆる玉ねぎボケ(年輪のように線が入る現象)がみられるところです。小さい写真だと気になりませんが、大きく引き伸ばしたり拡大するとより目立つかもしれません。
玉ねぎボケやレモンボケが気になる方は、F4.0まで絞って使うとよいでしょう。
【作例】
開放が明るく、最短撮影距離が短い特性を活かすと、このような写真を撮ることができます。イルミネーションの光が当たった葉に思い切って近づき、背景のイルミネーションをぼかしました。
(絞りとは関係ないですが、手ブレ補正を搭載しているからせっかくシャッタースピードを落とせるのにISOをオートで撮ってしまったのが心残りです。。)
ここまで、開放F2.8の良い所を多くお伝えしましたが、もちろん大口径ならではの弱点も・・・
それが、周辺光量落ちや先程の写真にあったようなレモンボケが発生することです。
トイレットペーパーの芯をイメージしていただきたいのですが、斜めに穴を覗くと穴の形が変形して見えますよね。レンズもこれと同様の現象がおきます。レンズの直径が大きい大口径レンズだとなおさらです。
これによって、カメラのセンサーの端まで光が全部届かなかったり、ボケ玉の形がレモン型になったりします。
しかし、ご安心ください。どちらも、F4.0にするなど絞ることで発生が抑えられますし、周辺光量落ちに関しては、写真現像・加工ソフトはもちろん、スマートフォンの写真アプリなどで簡単に修正することができます。
共に撮影中、撮影後に対処が可能なので撮影中はこのことを頭の片隅に置いておくのが良いでしょう。
〈オートフォーカス〉
オートフォーカスも、これまでの28-75/2.8などと同様にRXD(ステッピングモーター)が採用されており、静音で高速なAFで撮影が可能です。
最短撮影距離のところで記述したように、AFで合焦したところからそのままMF操作が可能な「ダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)」に対応しており、非常に短い最短撮影距離を活かしたマクロ撮影などの際どいピント合わせも、ボディでMFに切り替えることなくスムーズにできます。
もちろん、ソニーのファストハイブリッドAFや瞳AFにも対応しています。
実際のモーター音や、ピント合わせの速度はこの動画をご覧下さい。動画を再生すると、フォーカスを検証している場面から再生されます。
※音声が流れます。ご注意ください。
〈手ブレ補正〉
ソニーEマウント用のレンズで手ブレ補正機構を搭載したのも、先述の18-200/3.5-6.3以来で、手ブレ補正機構の搭載されていないα6100やα6400などの機種をお使いの方にもこのレンズを手に取ってもらいたいという想いが込められているように感じます。
さらに今回の手ブレ補正は、レンズに人工知能が学習した手ブレのデータを搭載することで、レンズが撮影者の動きを感知し、データを元に動きに合わせた最適な手ブレ補正を行うといった仕組みになっています。
ということで、以下の手ブレのパターンを検証しました。
- 写真撮影時の手持ち撮影での低速シャッターによる手ブレ
- 動画撮影時の手持ち撮影による手ブレ
- 動画撮影時の手持ちかつ歩行による手ブレ
ボディですが、スチールはα6400を使用し、ムービーはα6600を使用しています。α6400には手ブレ補正機構は搭載されていませんので、レンズのみの手ブレ補正になります。一方で、α6600にはボディ内手ブレ補正機構が搭載されており、今回のレンズはボディ内手ブレ補正との相互作用もあり、より効果的な補正が可能です。
- 写真撮影時の手持ち撮影での低速シャッターによる手ブレ
シャッタースピードを徐々に落としていき、どこで手ブレが発生するか見ていきます。
一般的に、手ブレはシャッタースピードが「1/レンズの焦点距離 」秒より遅くなると発生しやすいといわれています。今回の場合、35mm換算でおよそ50mmの焦点距離で撮影したので、1/60秒を0段として計算します。
検証したシャッタースピードは、
1/15(2段)、1/8(3段)、1/4(4段)、1/2(5段)です。
さて、どこまでいけるのでしょうか。
※使用カメラ α6400
モード:シャッタースピード優先AE
焦点距離:33mm(35mm換算 約50mm)
シャッタースピード1/15秒(2.0段)
さすがに、きっちり止まっていますね
シャッタースピード1/8秒(3.0段)
拡大するとごくわずかなブレはみられますが、気になるほどではありません
シャッタースピード1/4秒(4.0段)
周辺にブレが見られます。この写真は1/4秒で3枚撮ったうち、一番止まっていた写真です。他のものは全体的にブレが出てしまいました。1/4~1/5秒あたりが限界でしょう。
シャッタースピード1/2秒(5.0段)
試しに、一枚。予想通り、全体がブレました。
この結果から、公式からは公表されていませんが、4.0段の1/4秒でブレが発生したので、レンズ内の手ブレ補正効果はおよそ3.0段~4.0段ほどだと推測することができます。
【作例】
自分でも笑ってしまうくらい、設定がめちゃくちゃです。。日々、勉強ですね。シャッタースピードを遅くすることで、動きのある水面を表現することができました。撮影したのが夜で、低照度にも関わらずISO125でしっかりと写したかった水面を捉えることが出来ました。これも、シャッタースピードを落とせるメリットです。
- 動画撮影時の手持ち撮影による手ブレ
手持ち撮影で、広角側のブレと望遠側のブレを検証しました。
動画を再生すると、手ブレ補正を検証している場面から再生されます。
※音声が流れます。ご注意ください。
ご覧いただいてわかるように、手持ち固定での動画撮影における手ブレ補正はかなり驚異的です。動画内でもお話ししていますが、まるで三脚においているかのような映像を撮ることが出来ました。手ブレの出やすい望遠側でもブレは大きく軽減されていました。
※使用カメラ α6600
モード:プログラムオート
- 動画撮影時の手持ちかつ歩行による手ブレ
手持ち撮影でまっすぐ歩いてみました。従来の手ブレ補正との比較もしました。
歩行時の手ブレはかなり厳しいものがありました。筐体のサイズや重量からもうかがえるように、今回のレンズは歩きながらの動画撮影にはあまり適していないように感じました。
※使用カメラ α6600
モード:プログラムオート
このレンズを使って動画を手持ちで撮影するのに適している場面の例をいくつか挙げるならば、「運動会」「結婚式」「発表会」などの記録用として、立ち位置をある程度固定して撮影するような場面。または、B-rollなど、一つのシーンの撮影時間が短く、細かいカット編集でつなぐような映像制作で力を発揮するのではないでしょうか。とくに、B-rollでは最短撮影距離が短いことは大きな強みになると思います。
〈大きさ・重量〉
気になるのは、大きさと重量感です。
レンズの重量が約500g。α6600が約500g、α6400は約400g、α6100も約400gですので、いずれもレンズと合わせると総重量は約1kg近くになります。
他のタムロン製Eマウント用レンズ(フルサイズ対応)と比べてみると以下のようになります。
比較すると、このようになります。
- 17-28/2.8DiIII 99.0mm 490g(フルサイズ用)
- 17-70/2.8DiIII-A 119.3mm 525g(APS-C用)
- 28-75/2.8DiIII 117.8mm 550g(フルサイズ用)
今回のレンズは「軽さ」「コンパクトさ」に重点を置かず、レンズの持つ性能で勝負しているように感じました。
そう感じる大きな理由が、新開発の手ブレ補正機能を搭載した点であり、フィルター径67mmや最短撮影距離19cmなど、ソニーEマウント用レンズで培ってきたこだわりを余すことなく搭載している点です。
〈まとめ〉
今回レンズをお借りして、実際に私が使ってみての一番の感想は、「使いやすい」「撮影していて楽しい」という2点です。圧倒的な解像感など突出した描写力はないかもしれませんが、ズーム域が広く、最短撮影距離が短く、開放F値がズーム全域でF2.8と明るく、もちろんオートフォーカス性能も申し分なく、さらに手ブレ補正を搭載しているなど、いかなる撮影現場や撮影方法、写真にも動画にもオールラウンドに活躍できるポテンシャルを持っていると感じました。とくに、ボディ内手ブレ補正を搭載していないα6100やα6400などの機種をお使いの方や、動画撮影を良くされる方には特におすすめしたいレンズです。価格帯も競合レンズと比べ低く設定されているので、お手に取りやすいかと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました!ご質問やご感想など、コメントお待ちしております!
カメラのナニワ 松尾