こんにちは。なんばマルイ店の池田です。
さて今回は、ニコンの新製品 Z9の使用レビューをお届けいたします。
発売日は2021年12月24日。
FXフォーマット(フルサイズ)ミラーレス一眼のフラッグシップモデルとして登場しました。
縦位置グリップ一体型ボディと高級感に満ちあふれた質感は、まさにフラッグシップ機といった感じで、撮影者の期待に応えてくれるだろうという安心感が生れます。
外観だけでなく性能も大きく進化していますので、作例を交えてご紹介していきたいと思います。
ファーストインプレッション
①オートフォーカス性能
動く被写体に対しての追尾性能が大きく進化し、しかもその精度が凄い。一度狙った獲物は逃がさないって感じです。
また、人物や動物、鉄道や飛行機をはじめ、9種類の被写体検出が可能となっており、今回メインの被写体となった鉄道もしっかり認識してくれます。
一眼レフカメラで好評だった3D-トラッキングがZシリーズに初めて搭載され、この機能を使用すれば動きの速い被写体でも問題なく撮れるように感じました。
3D-トラッキングについての公式解説はこちら。
https://www.nikon-image.com/enjoy/phototech/manual/16/02.html
さらには、暗所でのオートフォーカス性能も向上しており、低輝度-8.5EV(※ISO100 F1.2レンズ使用などの条件あり)でもAFが可能となります。
今回使用したZ 24-200mm F4-6.3は開放F値が暗いこともあり、暗所でのオートフォーカスは少し遅くなる場合がありました。
②ファインダー
すでに発売されているZ7II やZ6II のファインダーもとても見やすく、写欲を高めてくれるものでした。
Z9のファインダーも約369万ドット、倍率約0.8倍と数値だけでは、他社のフラッグシップより見劣りするようにも聞こえます。
しかし、実際に覗いてみると数値以上の見やすさで、まるで一眼レフの光学ファインダーを覗いているかのようです。
また、Z9のファインダーは、動く被写体を撮影する場合において素晴らしい性能を発揮する「リアルライブビューファインダー」が搭載されました。
多くのミラーレス一眼のファインダーは、連写時に残像感があり、動く被写体の流し撮りなどでは少しストレスが溜まる場合がありました。
しかし、この「リアルライブビューファインダー」の搭載により、ブラックアウト(画像消失)することなく撮影ができるようになり、非常に快適でした。
Z9の発売が発表された際に、驚かされたのがメカシャッターを搭載せず、電子シャッターだけにしたこと。
カメラにこだわっているニコンが電子シャッターだけにしたという決断に、私だけでなく多くのカメラ愛好家が驚いたのではないでしょうか。
その結果、秒間20コマの連写性能を実現し、リアルライブビューファインダーと合わせて、動きものに対して万全に仕上げてきました。
電子シャッターで動く被写体を撮影する場合には、ローリング歪みが気になりますが、そこは新しく開発された積層型CMOSセンサーにより、しっかりと抑制されています。
④手ブレ補正
ボディ内蔵の手ブレ補正も進化しており、VRレンズを使用すれば、最大6段分補正効果が得られます。 ※Z70-200mm F2.8 VR S 使用時
今回の撮影においては、手持ちの限界をテストしませんでしたが、かなり強力な印象です。
ボディサイズは大きいですが、ホールディング性が抜群に良いので、それも関係しているのでしょう。
手ブレ補正が強力だと、撮影の自由度が大きく向上しますので、撮影者にとってはありがたい事です。
⑤ダスト対策
Z9は今までのセンサークリーニングに加えて2つのダスト防止機能を搭載しています。
イメージセンサー前の光学フィルターにダブルコートを採用。導電コートでダストの付着を軽減しています。
また、センサーシールドを搭載し、電源オフ時にセンサーシールドを閉じることができます。
これら2つのダスト対策により、撮影現場でのレンズ交換が安心して行えます。
作例
大雪の中、ホームに入線する列車。
スピードはそれほど速くありませんが、大雪の中でもしっかりと列車を捉えてくれました。
AFモードはAF-Cで測距エリアはZシリーズ初搭載の3D-トラッキングです。
大雪の場合、オートフォーカスで撮影すると、手前の雪にピントがあってしまい被写体のピントが甘くなる場合も多々あります。
特に望遠レンズで撮影した場合は手前の雪にピントが行ってしまいやすいようです。
しかし、中望遠から標準域または被写体との距離が近い場合には、新しく搭載された被写体検出機能がしっかり働き、失敗なく撮影できるように感じました。
これも大雪の中、駅に停車中の普通列車。
雪にピントを奪われることなく、しっかりと列車をとらえてくれています。
高速で駅を通過する特急列車。
このくらい雪が小降りになれば、3D-トラッキングも被写体認識AFも確実に動いてくれます。
鉄道を撮影する場合、あらかじめ列車が通る位置(シャッターを切る位置)にマニュアル等でピントを合わせておく「置きピン」も良く使う手法です。
ですが、被写体の追尾性能に優れたZ9であれば、オートフォーカスはカメラに任せてもおおむね安心です。
ちなみに被写体検出機能を使用する場合、フォーカスエリアの設定をワイドエリアAF(S)、AF(L)、オートエリアAF、3D-トラッキングにする必要があります。
雪煙を巻き上げて高速で通過する特急列車を後追いで撮影。
設定はAF-C、3D-トラッキングです。
雪煙でこれだけ霧のかかったような視界の悪い状況でも、オートフォーカスには狂いはありませんでした。
この写真を見た時に、少々驚きました。
夜の操車場を歩道橋の上から撮影。
手ブレ補正機能は搭載されていますが、人が歩く度に歩道橋が揺れるのでシャッタースピードは安全だと思われる1/30秒に設定。無事、手ブレすることなく撮影できました。
またこの時の感度はISO20000という高感度ですが、そこは流石FXフォーマット(フルサイズ)のカメラ。
拡大すればノイズの発生は見られますが、許容範囲内と言えるレベルのノイズ量です。
静まりかえった元日の夜。
都会の中を疾走する列車を撮影してみました。夜という事と少し列車をブラしたかったので、手ブレ補正機能を信用して1/8秒で撮影しています。
結果、手ブレする事なく、夜景と列車を絡めて撮ることができました。
ただ、この暗さになると、今回使用しましたZ24-200/4-6.3ではフォーカススピードが遅くなりました。コントラストAFに切り替わったもの思われます。
同じ場所から流し撮り。
被写体までの距離が遠かったので、カメラメニューでクロップし、望遠効果を得ています。
もともとの画素数が4571万画素ありますので、DXに変更しても約1900万画素。大きなプリントにも耐えられる画質となっています。
残像感のないリアルライブビューファインダーのおかげで、1/4秒という超低速シャッターでも流し撮りを成功させる事ができました。
ミラーレス一眼で動きものを撮影する場合、ファインダーは本当に大切です。
違うシーンでズーム流し撮り。
ここでは被写体検出も素早く反応し、AFの喰いつきの良さを発揮してくれました。
またファインダーの良さから、日頃私が使用しているカメラより、はるかに失敗の少ない結果となりました。
AF性能、ファインダー性能、連写性能の3つが合わさって撮れた写真です。
闇夜を駆け抜ける寝台列車。
かなり暗いシーンでしたが、高感度性能にも助けられ、何とか写真として残すことができました。
AF-Cの3D-トラッキングで撮影しようとするも、コントラストAFに切り替わり、AFスピードが遅くなり、どうしようか悩んでる間に列車のライトが見えてきました。
そのままの設定で連写で撮影しましたが、意外と成功写真が多かったです。
装着するレンズにもよると思いますが、夜など暗いシーンでの流し撮りは置きピンの方が間違いと思います。
Z9と言えど、さすがに限界はありますので……。
少し雰囲気を変えて「ゆる鉄」風に撮影してみました。
河川敷で逆光に輝く葉っぱを前ボケにして、左上のスペースに列車を入れるフレーミングで撮影してみました。
近くに踏み切りはなく、列車がいつ来るかわからない状況でしたが、ファインダーを覗いて神経を集中して待ちました。
そして列車が現れた瞬間に連写でシャッターを切り、列車の位置がベストポジションのものを選びました。
秒間20コマの連写性能だと、このようなわずかな空間でも数カット得ることができるのでありがたいです。
そして、シャッターを切った瞬間にタイムラグなく反応してくれるのはフラッグシップ機ならではです。
最後に1枚。
しんしんと降る雪の中、発車して行く列車。
高速シャッターで撮影していますので、雪も止まっています。
装着レンズはZ24-200/4-6.3で、明るいレンズではないですが、ボケが強調できるのもFXフォーマットの良さですね。
まとめ
ニコンの「本気」を感じさせてくれる1台でした。
特にオートフォーカス性能とファインダーは素晴らしく、AF性能はZ7II やZ6II よりワンランク、いやツーランクぐらい上の性能だと感じました。
とにかく追尾性能が抜群で、動く被写体を撮影する上で安心して使えました。
今回は被写体認識としては鉄道のみでしたが、次は他の被写体でも試してみたいです。
ファインダーは私の中でとても重要と感じていて、Zシリーズに共通して言えることはファインダーが大きくて見やすいのが魅力だということ。
その中でも特にZ9は残像感のない新しいファインダーになっていて、連写時でもストレスを感じることなく撮影できます。
カタログ上の数値だけに惑わされないよう注意が必要です。
他にも魅力たっぷりのカメラですが、1つ言えることは「Z9は動く被写体を強く意識したカメラ」であることです。
もちろん風景やポートレートも撮れますが、動きものに弱いというミラーレス一眼の欠点を完全に克服したと言っても過言ではないでしょう。
Z9の登場により、今後のニコンZシリーズから目が離せなくなりました。
あえて苦言を言うなら、電子シャッターになったことで「撮影した」という達成感が薄れてしまったように思いますが、これも時代の流れなのでしょう。
今後は電子シャッターが主流になっていくのかもしれませんね。
それでは皆さん最後までご覧いただきましてありがとうございました。
この記事に関するお問い合わせは・・・なんばマルイ店 池田 まで