こんにちは。 なんばマルイ店の池田です。
さて今回は、富士フイルムの新製品X-T30 IIの使用レビューをお届けいたします。
X-T30 IIは2021年11月25日、X-T30の後継モデルとして発売されました。
これまでX-T10、X-T20、X-T30と続いてきたので、次はX-T40と思っていた人も多いのではないでしょうか。
X-T30 IIという商品名にした理由はわかりませんが、これまでの流れから考えるとX-T30のマイナーチェンジ版?と思ってしまいます。
しかし、実際にはマイナーチェンジなどでは全くなく、フルモデルチェンジと言えるほど進化したカメラとなっています。
こちら、作例を交えながらご紹介していきたいと思います。
X-T30とX-T30 IIの比較
画素数など基本的な性能は同じですが、以下の3つのポイントが進化しています。
AF性能の大幅向上
フラッグシップ機のX-T4と同じAF性能
低照度時のAF限界が-4EVから-7EVへ向上
AFスピードが0.06秒から0.02秒にスピードアップ
液晶モニター
104万ドットから162万ドットへ向上
フィルムシミュレーション
クラシックネガ・エテルナブリーチバイパスの追加
スペック比較表
X-T30 II | X-S10 | X-T4 | |
画素数 | 約2610万画素 | 約2610万画素 | 約2610万画素 |
撮像素子 | X-Trans CMOS 4 | X-Trans CMOS 4 | X-Trans CMOS 4 |
画像処理エンジン | X-Processor 4 | X-Processor 4 | X-Processor 4 |
ボディ内手ブレ補正 | なし | あり | あり |
ファインダー |
0.39型 約236万ドット |
0.39型 約236万ドット |
0.5型 約369万ドット |
液晶モニター |
162万ドット 2Wayチルト式 |
104万ドット バリアングル式 |
162万ドット バリアングル式 |
連写性能 | 約8コマ/秒 | 約8コマ/秒 | 約15コマ/秒 |
フィルムシミュレーション | 18種類 | 18種類 | 18種類 |
ボディ質量 | 約378g | 約465g | 約607g |
X-T30 IIの撮像素子や画像処理エンジンは、X-T4と同じものが搭載されています。
またフィルムシミュレーションも同じ18種類ですので、これら3機種で撮影した画像は、同じクオリティーのものが得られると考えて良いでしょう。
X-T4はXシリーズのフラッグシップ機ということもあり、X-T30 IIよりも連写スピードやファインダー性能に優れています。
また、数値外のポイントとしては、X-T4は防塵防滴仕様になっていますので悪天候での撮影でも安心して使用できます。これはX-T30 IIやX-S10と大きな差です。
X-S10やX-E4などとの比較
次に同じ中級機カテゴリーでの比較です。まずX-S10との比較ですが、大きな違いはボディ内手ブレ補正機能が搭載されているかいないか。
単焦点レンズをメインで使用する方には、手ブレ補正機能が働くX-S10が良いと思います。
ズームレンズ派の方は、レンズに手ブレ補正機能が搭載されているものが多く、X-T30 IIで問題ありません。
X-S10は大型グリップを採用しホールド性に優れますが、本体重量はX-T30 IIのほうが約90g軽くなっています。
軽いレンズを装着し、なるべく小型軽量で取り回しを良くしたい方にX-T30 IIはおすすめです。
なお、上記の表に記載しませんでしたが、X-E4ともほぼ同等のスペックとなります。ただし、X-E4はレンジファインダースタイルで左手側にファインダーが設置されています。
動く被写体を撮りたい場合は、若干フレーミングがしにくくなる場合があるかもしれません。
その点、X-T30 IIはファインダーが光軸上にありますので、使用するシーンに合わせてご検討ください。
X-T30 IIとX-T4の外観比較
X-T4と比較するとX-T30 IIのサイズ感が良くわかると思います。こんなコンパクトサイズでX-T4と同じ画質が得られるのだから驚きです。液晶モニターはX-T30 IIはチルト式で、X-T4はバリアングル式。
好みは分かれますが、光軸とほぼ同じ位置にあるチルト式液晶は、撮影時にズレを感じることがなく、個人的にはチルト式が好みです。
一方、動画撮影や縦位置でのローアングル撮影にはバリアングル式に軍配が上がります。
カメラ上部の造りは良く似ていて、シャッタースピードと露出補正はダイヤル操作になっています。
違いとしては、X-T4にはISO感度ダイヤルがありますが、X-T30 IIにはなくドライブモードダイヤルとなっています。
X-T4やX-T3などダイヤル操作系のカメラのサブ機として使用するなら、X-S10よりX-T30 IIの方が操作性が似ていますので使いやすいでしょう。
なお、京都店の阿部がX-T4のサブ機としてのX-S10についてレビューしておりますので、そちらもご参考までにどうぞ。
2021年これ買ってよかった!【サブ機や他社との併用にもおすすめカメラ等】
実写レビュー
X-T4と同じオートフォーカス性能になったという事で、動く被写体を撮影してみました。
AFモードをAF-C、フォーカスエリアをゾーンにセットして、高速連写を利用して撮影しています。
モノトーンの世界の中での撮影でしたが、オートフォーカスが迷うようなことはなく、しっかりと追尾してくれました。
通過する新幹線を「後追い」で後ろ側から撮影しています。
設定は1枚目と同じく、AFモードはAF-C、フォーカスエリアはゾーンです。
後追いでの撮影は、最後尾車両が顔を出すタイミングにすぐさま反応してレリーズする必要があります。
しかし、正面からやって来る被写体を撮影するよりもオートフォーカスが迷ったり、被写体の追尾が遅れたりすることが多くあります。
こちらのX-T30 IIはその点、問題なく被写体を捉えることができました。小型軽量のボディでここまでのAF性能を発揮してくれるので、本当に使える1台だと思います。
X-T30 IIにはX-T3より搭載された1.25倍にクロップ(拡大)して撮影できる機能が搭載されました。
その場合、画素数は約1600万画素での記録となりますが、普通にプリントするなら十分な画素数です。
ここ滋賀県の米原駅は、少し曲がって新幹線は進入してきます。後方の車両、編成を入れて撮影する場合は超望遠レンズが必須となります。
この写真もXF100-400mm F4.5-5.6の400mm側で撮影しています。XシリーズのカメラはセンサーがAPS-Cサイズですので、35mm換算600mm相当になります。
それでも望遠が足りないので、1.25倍にクロップ。約750mm相当になり、このような迫力ある写真を撮ることができます。
雪が降る中、駅に到着する新幹線。
降雪時は手前の雪にピントが合ってしまうことがありますが、これくらいの降雪量であれば、しっかり被写体を捉えてくれます。
この写真はホワイトバランスを「電球」に設定して青味を強調し、寒さを写真に表現してみました。また、新幹線の白い車体にはブルーが良く合い、雪がない場合でも使えるテクニックです。
上の2枚の写真は、京都府舞鶴の赤レンガパークで撮影したものです。
X-T30 IIにはフィルムシミュレーションクラシック ネガとエテルナ ブリーチバイパスが追加されました。特に「クラシック ネガ」はカラーネガフィルムのような昔懐かしい色合いになることから、Xユーザーにはとても人気があります。
1枚目のフィルムはクラシッククローム、2枚目はクラシック ネガで撮影しています。
レンガ造りの建物には、「クラシッククローム」が合うと思って撮影していたのですが、途中から「クラシック ネガ」に変更してみると、深みのあるとてもいい感じの仕上がりになりました。
同じ場面で撮った写真ですが、フィルムシミュレーションを変更するだけで、このように違った雰囲気の作品づくりができるのもXシリーズの魅力です。
先ほどもご紹介した京都店の阿部が「クラシックネガ」での作例を多く公開しておりますので、こちらもご興味ありましたらどうぞ。
【FUJIFILM】一夜にして雪国となった京都・八瀬【クラシックネガ】
Nikon Ai 50mm f/1.4SとFUJIFILM X-T4でクラシックな写りを楽しむ【お写んぽ】
下の2枚は滋賀県長浜の古い町並みを撮影したものです。古い町並みと「クラシック ネガ」の相性も抜群で、ノスタルジックな雰囲気に仕上がります。
また、町並み散策には、X-T30 IIのような小型ボディだと機動力も上がり、自然とショット数も増えます。ショット数がふえれば、その分だけ素晴らしい作品が出来るチャンスでもあります。
また舞鶴に戻って、赤レンガパークでの写真です。
これも新しく追加されたフィルムシミュレーション「エテルナ ブリーチバイパス」で撮影したものです。
かなり独特な発色傾向で、これは「銀残し」と言われるフィルム現像技法が忠実に再現されています。使いどころが難しいように思いますが、このかなり渋い感じの仕上がりに魅力を感じます。
暗い室内で撮影した1枚で、シャッタースピードは1/3秒です。もちろん手持ち撮影です。
X-T30 IIにはボディ内手ブレ補正機能が搭載されていませんが、この日使用したXF18-55mm F2.8-4にはレンズ側に手ブレ補正機能が搭載されていますので、低速シャッターでもブレずに撮影することができます。
こちらのXF18-55mm F2.8-4は標準ズームレンズで入手もしやすく、レンズキットとしてセットでの購入も可能です。
前述の通り、Xシリーズの単焦点レンズには手ブレ補正機能が搭載されていませんが、ズームレンズの多くには強力な補正機能が付いています。
ボディ内手振れ補正の有無は、使用するレンズに合わせてお選びください。
舞鶴赤レンガパークの近くにある煉瓦造りのトンネル。
ここでは奥行と煉瓦の質感を出すために、ローアングルで撮影しています。
こんな時に役に立つのがチルト式液晶です。液晶モニターのドット数も向上しましたので、撮影時も見やすくて快適です。
フジフイルムのXシリーズは発色の良さから、風景写真家の方に人気があります。
ということで、冬景色を撮ってみました。手前には霧氷、奥の山々には雲がかかり幻想的な風景となっています。
曇天で色の少ないシーンでは、その良さは隠れてしまいますが、それでも冬らしい1枚に仕上げることができました。
ここに朝陽や夕陽が当たれば、最高だったと思います。
作例ギャラリー
まとめ
カメラの大きさからは想像もつかないほどの仕事をやってくれました。
特にオートフォーカス性能の進化には驚きました。
高速で走行する新幹線を撮影しても、ほぼ失敗することなく追尾してくれる実力はホンモノです。
また、人気のフィルムシミュレーション「クラシック ネガ」の搭載は、写真表現の幅が広がるだけでなく、撮る愉しみを与えてくれます。
なお、ファインダーはフラッグシップ機のX-T4より小さいですが、比較をしないとわからないレベルですので、X-T30 IIからスタートする方には特に問題はないと思います。
逆にX-T4やX-T3をお持ちの方からすれば、ファインダーが小さいと感じるかもしれません。
操作面では1点、気になるところがありました。それはカメラの背面にある「Q」と書かれたクイックメニューボタンの位置です。
クイックメニューボタンを押すと、現在の設定を確認したり変更したりできるので便利なのですが、カメラが小さいため普通にホールディングしても、誤ってQボタンを押してしまうことが多々ありました。
この対策としましては、セットアップメニューよりQボタンの機能をOFFにして、AF-Lボタン等にQボタンの機能を割り当てると良いでしょう。
コンパクトなボディなので仕方のない部分もありますが、次のモデルでは改善してほしいところです。
以上、X-T30 IIはX-T30のマイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジと断言できます。フジXシリーズの中での位置づけは中級機ですが、十分満足できる1台に仕上がっていると思います。ぜひご検討ください。
この記事に関するお問い合わせは・・・なんばマルイ店 池田まで