こんにちは~。広報担当 中村です。
今回はご紹介していくのはこいつ。
XF 50mm F1.0 R WRです!
先日Twitterに投稿したように、こちらのレンズの中古品が梅田中古買取センターに入荷いたしました。
こんにちは~。中村です。
— ナニワグループ (@gnaniwa) February 11, 2022
梅田買取センターにXF 50/1.0 R WRが入荷いたしましたので試しに1枚撮らせてもらいました。
もちろん開放1.0で撮影! キーボードのあたりのボケ方とか、なかなか強烈ですね……。
合焦部もわずかに滲んでいて個人的にはかなり好みの描写……!! pic.twitter.com/WDo2yn5I6f
先日のなんばマルイ店 須田氏によるフジフイルムXマウントレンズレビューまとめてみた【単焦点レンズ編】で、まだ未紹介となっていたこちらのレンズ。
作例とともに、そのスペックをの余すことなくご紹介して参ります!!
【スペック一覧】
FUJIFILM様公式の商品ページはこちら。
https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/lenses/xf50mmf1-r-wr/
スペック表を以下にまとめましたのでご覧ください。
レンズ構成 |
9群12枚 |
焦点距離 | 50mm (76mm相当) |
画角 | 31.7° |
最大口径比(開放絞り) | F1.0 |
羽根枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.7m - ∞ |
最大撮影倍率 | 0.08倍 |
長さ | 103.5mm |
質量 | 約845g |
まず目を引くのは重さ。約845gというすさまじい重量……。
同じくらいの大きさのXF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroが約750gであることを考えると、フジの単焦点レンズの中では最重量級の一本になります。
※XF200mmF2 R LM OIS WRが約2,265gで規格外ですが……。
参考までにXF 50mm F2 R WRと並べてみました。普通に2倍ぐらいデカい……。
ちなみにXF 50mm F2 R WRは約200gですので重さは4倍以上です。
また、XF56mmF1.2 Rが類似スペックのレンズとしてありますが、こちらは約405gです。つまり約2倍の重さになります。
X-S10に装着! こういう大きい玉をつけるときは大型グリップが本当に助かります……。
なお、最短撮影距離が0.7mですので、あまり寄って撮る使い方は期待できません。
取り回しも良くないため、開放F値のためにいろいろなものを犠牲にした、尖ったスペックのレンズになります。
【開放F値1.0のボケ】
このレンズのウリは何といっても開放F値1.0の圧倒的なボケ。合焦部の前後が大きくボケて被写体をくっきり際立たせてくれます。
スペック的に開放付近が皆さん気になるところだと思いますので、F1.0・F1.4 ・F2.0の3つで比較してみましょう。 別のカットででも比較です。
まず、開放F1.0だと分かりやすく周辺減光が見られます。諸収差も目立ち、大気がざわめくような描写です。
F1.4になると若干すっきりしてきますね。1段絞った描写に関しては後半で作例とともに細かくご説明して参ります。
2段絞ってF2.0にすれば周辺部の危うさは消え、安定した描写に。まぁF2にするならXF 50mm F2 R WRやXF56mmF1.2 Rとの差別化が困難になるのが悩みどころですが……。
こちらも開放F1.0で撮影。中心部はシャープに写っていますが、周辺にかけて少しずつ像が崩れていく感じがたまらない……。
こちらのカットもF1.0で撮影。
後ボケには明瞭なコマ収差が見られます。前ボケにはいわゆるところのぐるぐるボケのようなものの発生が確認できますね。
オールドレンズはともかく、現行のレンズでこれが出るのは非常に珍しいです。
「収差が出てちゃダメじゃないか!!」という意見はご尤もですが、開放F1.0で収差がこの程度に収まっていることは実に奇跡的です。
オールドレンズなら50/1.2ぐらいのスペックでももっと収差まみれになりますから……。
ちなみに、毎回「収差」って言葉を当たり前のように使っておりますが、詳しく意味を知りたい方はFUJIFILM様公式の解説を以下よりご覧ください。
https://digitalcamera-support-ja.fujifilm.com/digitalcamerapcdetail?aid=000008217
恥ずかしながらわたくし、フルサイズのカメラを使ったことがないので「APS-Cはボケない」と言う方々を見るたびに「十分ボケてないですか??」と思っておりました。
しかし、このレンズの圧倒的ボケ量を見ると「まだまだボケるんだ……」という率直な感動を覚えます。
F1.0で極浅の被写界深度でも、AFがピシッと被写体に食いついてくれるのは非常にありがたいです。
今回使用したX-S10はフラッグシップ機同等のAF性能・大型グリップ・ボディ内手振れ補正を備え、こちらのレンズを使用するのに申し分のないスペック。
こいつが中級機だなんてFUJIFILMさんは太っ腹だぜ!!
先ほどからお見せしている写真はすべてフィルムシミュレーション・クラシッククロームにて撮影しております。
コントラスト高め・彩度低めの渋い写りが好きで普段から多用しているモードですが、このXF 50mm F1.0 R WRだとほんのりコントラストが低くなってまた違った画になってくれます。
参考までに、ブラケットでほか3種類のフィルムシミュレーションも試してみました。
ASTIAETERNAクラシックネガ
細かい設定まで組み合わせると途方もないバリエーションがありますので試し甲斐がありそうです!
ちなみにこちらはF8まで絞った画像。あまりにも当たり前の話ですが、絞れば隅々までシャープですっきりした写り。
先ほど類似スペックのレンズ2本の話をしましたが、絞って使うならそちらのほうが圧倒的にコストパフォーマンスに優れています。
こいつはやはり絞り開放で撮ってこそのレンズでしょう!
【実写レビュー】
だいたいどういうレンズかイメージがついてきたかと思いますので、さらに作例をお見せしつつ解説していきます。
基本的に断りがない限り、開放F1.0で撮っています。
今回テスト撮影のために訪れたのは大阪城公園です。
禁術・開放無限遠にて撮影しました。右上の揺らぐような前ボケ、周辺減光、合焦しているけど少しボヤっとした城の感じがなんとも怪しい一枚になりました。
梅林が少しずつ咲き始めているとの話を聞いたので、こちらを撮影しに来た次第です。水仙はもうすでにかなり咲いており、ちょうど見ごろです。
いたるところに水仙が咲いています! 白い花弁がうっすら滲んで幻想的な一枚に。
まずは梅の木1本まるまる入るように撮影。
とりあえずボケ量がすごい。被写体を切り出してキリっと際立たせてくれます。
枝に寄って撮影した1枚。ヌルっと溶けるようなボケが良い……。
前ボケ・後ボケ両方発生するとかなりざわざわした画になります。梅の枝の異様なシルエットも相まって謎の迫力が……。
前述のとおり、前ボケはかなり暴れ気味です。まるで空間が歪んでいるかのよう……。
強烈なボケで水墨画のような写真が撮れました!
わたくしは普段、オールドレンズで写真をとることが多い人間なので、これぐらいぐにゃぐにゃに歪んだ写りはかなり好物!!
梅は花が小さく枝が細かく分かれていることもあり、背景をぼかして省略することが重要な被写体だと思います。
特に何も考えずに花を取りたいから季節の花の梅を選びましたが、F1.0の強烈なボケを活かすのには適切な被写体だったのかな~と思ったり。
被写体の前後に気をつければ開放F1.0でもいちおう順当にすっきりした画も撮れます。
まぁ正直ここら辺の「優等生的」な画を求めるなら、こちらのXF 50mm F1.0 R WRをわざわざ使う意味もないのかなと……。
よほど画面内が込み入っていない限り、ぴったり思い通りのところにピントが来てくれます。
小さい梅の花にもスムーズにピントが合ってくれるのでまったくストレスなく撮影でき、正直びっくりしました。
すがすがしいまでの周辺減光!
APS-C機でオールドレンズを使っていると、どうしても周辺減光が出ないことがデメリットとして付きまといます。
「とりあえずバターで炒めて醤油かけとけ」みたいな勢いで写真編集するときに周辺減光エフェクトをかけるわたくしからすると、これはなかなか美味しい描写!!
メーカー様からするとこういう評価は不本意かもしれませんが、十分表現として活用できるものをわざわざ誤魔化す必要もないというのがわたくしの偽らざる意見です。
色収差についても一言。フリンジは多少出やすい傾向かなとは思いますが、この程度なら使い方次第で表現に活かせると思います。
「現実が歪んで写る」ほうがレンズとして面白い、写真を撮るのが楽しいと思う人間なので……。
なお、あんまり良い画が撮れなかったので写真載せませんが逆光テストもしています。
太陽を直接フレームに入れたら流石にゴーストが出ますが、それ以外では十分すぎる逆光耐性を有しているのではないでしょうか。蝋梅と紅梅。こちらは1段絞ってF1.4で撮影しています。1段絞るだけでボケの騒がしさはかなり和らぎます。
紅梅のほうの背景の玉ボケを見ていただいたら分かりますが、まん丸に近いボケで綺麗です。
FUJIFILMのレンズは総じて開放での収差が目立ちやすいので、「1段絞ってF1.4」というのはやはり見逃せないアドバンテージではないでしょうか?
きちんとした比較画像を撮れなくて申し訳ありませんが、おそらくXF56mmF1.2 Rで開放F1.2もしくは1/3ステップ絞って撮影しても、ここまですっきりした写りにはならないでしょう。
こちらはF2での撮影。玉ボケが綺麗なまん丸になっており、コマ収差も目立たなくなりました。
ボケが稼げて収差もなくなるのでおそらくいちばん使いやすいF値にはなるでしょうが、せっかく開放F1.0なのにわざわざこういう使い方をするのってなぁ……というのは悩ましいところ。
こちらはXF 50mm F2 R WRとの比較画像を用意しております。同じ位置からそれぞれ2本のレンズでとったものをトリミングしています。
↑XF 50mm F1.0 R WR F2.0で撮影 ↑XF 50mm F2 R WR F2.0で撮影
画面若干右上あたり、窓ガラスの掛け金のつまみ部分が玉ボケになっており、ここがいちばん分かりやすいですね。
XF 50mm F1.0 R WRで2段絞ったほうが綺麗なまん丸のボケになっているのに対して。XF 50mm F2 R WRだと逆三角形になっている、つまりコマ収差が出ています。
ここら辺の小さな収差ををそこまで気にします??って話ではありますが、いちおう2段絞ってF2にした写りはXF 50mm F2 R WRと「同じではない」ことだけは強調しておきます。
それと、木の幹の部分を見ると、XF 50mm F1.0 R WRのほうが少し柔らかくて湿度のある描写になっているような気がしますね。
厳密に条件を揃えて撮影したわけではないのであまり詳しくは語れませんが。
夢中になって撮りまわっているいるうちにすっかり暗くなり、月が出てきました。左側の前ボケが効いていて非現実的な雰囲気が出てくれています。
下側の生垣がすさまじいぐるぐるボケに……。薄暗いところで撮っているので露骨に収差が出ます。特に前ボケには顕著に収差が出ますね。
拡大して見ないと分かりづらいですが、日が落ちて光量が減ってくると収差が目立ちやすくなってきます。
前後ともにざわざわして怪しい雰囲気……!!
大口径レンズは夜に使ってこそだろ!ってことで暗くなってもまだ撮っていました。暗所でもAF挙動に問題なく、スムーズに撮影できたのは非常に良かったです。
玉ボケテスト。
上からF1.0・F1.4・F2.0です。
単純なボケの丸さだとF1.4がまん丸に近いですが。 収差や口径食を考えるとF2.0が一番安定します。
とはいえ、若干絞り羽の形が出てカクついてしまうのが残念……。気になる人には気になるレベルですかね?
それでは注釈は十分かと思いますので、最後にまとめて作例をお見せして参ります。
【作例ギャラリー】
※すべて開放F1.0での撮影です。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか?
まず個人的な感想としては使っていて非常に楽しかったです。
今どきの単焦点レンズで、ここまで個性的な写りを見せてくれるものが他にあるでしょうか?
このレンズでしか撮れない画がある、それだけは間違いないと断言できます。
わたしの同僚であり、フォトグラファーとして活動しているスエヒロ ヨシハル氏もこちらのXF 50mm F1.0 R WRでポートレートを撮影しています。
出典:YOSHIHARU SUEHIRO
ほんのり収差の残った柔らかい写りが活きているのではないでしょうか?
率直に言って、見たものをそのまま写真に写しこみたい・ありのままを捉えたいという方にはあまり向かないレンズです。
レンズ自体の取り回しの悪さやお値段等々難しいところはありますが、それでもやっぱり大口径には夢とロマンがある!!
レンズは明るければ明るいほうがいい! 開放F値は低ければ低いほうがいい!!
つまりはそういうことです。
Webで検索してもあまり作例が多く出てこないこともあり、気になっていた方々に今回のわたくしのブログが目にとまれば幸いでございます。
それでは今回も異様に長くなりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございました!!
また次のブログでお会いしましょう~!!