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怪奇! マゼンタ被りの謎【レンジファインダー用広角レンズ】

こんにちは~。広報担当 中村です。

突然ですが、皆さまは「心霊写真」などはお好きでしょうか?

わたくしが幼い頃、テレビで「オカルト特集」は花形番組だったと記憶しています。

そのなかには「心霊写真」という一ジャンルが確固たる地位を占めていまして。

やれ写真に手足が写ってないだの、顔が写りこんでるだの、オーブ(光の玉)が発生しているだの……。

こちらの「心霊写真」はいつの間にやら死語の類になったような印象がありますが、その原因はいろいろあるのでしょう。

そうなった原因として単純なものをひとつ挙げるとしたら、デジタルカメラの性能向上が挙げられると思います。

デジタルカメラの性能向上はまさしく日進月歩です。イメージセンサーやレンズの性能向上により、写真の隅々までクリアかつシャープな写りになるのは「当たり前」になりました。

また、「心霊写真」がよく生まれていた暗いシーンでも、イメージセンサーの集光効率向上・ノイズ軽減技術が発展することによって、これまた「当たり前」のように写真が撮れるようになりました。

こうして、「怖いな~怖いな~」(CV: 〇川淳二)みたいな写真が撮れることは、非常に稀なことになったのではないかとわたくしは思います。

前置きが長くなりましたが、今回お話していくのは、そんな今日この頃でも「変な写真」が撮れてしまう条件が実はまだあるのだということについてです。

とりあえず、サムネにも使用したこちらの写真をまずご覧ください。
端っこがこの世の終わりみたいな色になってるんだが??

こちらの現象、噂には聞いたことがあってどういう条件で撮影すると発生するのか少しだけ知っていたのですが、実物を見るのは初めてで本当にびっくりしました。

今回はこちらの「怪奇現象」について、あれやこれやお話をしていきたいと思います。

こちらについて知っているひとも、そうでない方も、ご参考にどうぞ!

 

【「マゼンタ被り」という現象】

まず、こちらは「マゼンタ被り」と呼称されています。文字通り、写真の周辺部に「存在しない」はずの赤やマゼンタが発生する現象です。

最近ではあまり話題になることも少なくなりましたが、ミラーレスカメラにオールドレンズ+マウントアダプターで撮影するのが流行り始めたころはよく云々された現象らしく……。

当時、SONYのAPS-Cカメラ「NEXシリーズ」にマウントアダプターを装着していろいろなレンズを試すのが流行っていたのですが、その際にいくたびか発生例が報告されて認知された問題になります。

【どういう条件で発生するの?】

冒頭の写真はデジタルライカの M Typ262MS-OPTICS HIPOLION 8/19を装着して撮影したもの。

こちらのレンズ・HIPOLIONは後玉が突出した形状になっています。
こちらの通り。

ライカなどのレンジファインダーカメラで使用できる広角レンズは同様にレンズ後玉が突出しているものが非常に多いです。
例えばこちらはVoigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15/4.5 Aspherical(L39マウント)の後玉ですが、これもかなり出っ張ってますね。

ライカMマウント・L39マウント以外にもコンタックスGマウントの広角レンズも同様の現象が発生することで知られています。
こちらはCONTAX G ビオゴン2.8/21です。この通りめっちゃ飛び出してるのがお分かりいただけますね?

このような後玉の出ているレンズをデジタルカメラに装着して写真を撮影すると、この「マゼンタ被り」が発生することが多いです。

さて、こちらの「マゼンタ被り」が発生する理由、発生条件について仕組みを説明したいところではありますが……。

あまりにも複雑な話になる上にわたくしの理解がおぼつかない部分がございますので、最低限ここだけ押さえていただければと思います。

・主にデジタルカメラのイメージセンサーの構造に由来する問題で、フィルムでは少なくとも不自然すぎる色被りは発生しない。

・後玉の出ているレンズをつけると、イメージセンサー周辺部が光を受け取りにくくなる。そのため、センサーが光を正常に捉えられず、不自然な色に記録されてしまうことが多い。

・デジタルカメラでも、イメージセンサーが裏面照射式になっていると集光効率が高いため色被りが発生しにくい。

【比較画像:M Typ262とα7R II】

それでは、いろいろなデジタルカメラで撮影したサンプルをお見せして、違いを体感していただきたいと思います。

まずはLeica M Typ262MS-OPTICS HIPOLION8/19の組み合わせで撮影したものをご覧ください。

サムネイルの写真を撮ったのと同じ組み合わせです。

Leica M Typ 262+HIPOLION8/19

ご覧の通り、盛大にマゼンタ被りが発生しています。誰が見ても即時で違和感を覚えるレベル。逆にここまでくると清々しいほどです。

次に、フルサイズミラーレスでは世界初の裏面照射型CMOSセンサー搭載カメラとなったα7R IIで撮影したものをご覧ください。

SONY α7R II+HIPOLION8/19

厳密に条件を揃えての撮影ではありませんのであくまで参考程度にとらえてください。とはいえ、明らかに写りが改善されていますね……。

しかし、まったく色被りが発生していないわけではなく、右上あたりにはシアンっぽい色が発生してしまっています。

正直なところ、指摘されなければ分からないひとも多いぐらいではないでしょうか?

ちなみに、この2台のカメラは同じく2015年に発売されております。なので、世代の違うカメラを並べて無理くり比較しているわけではございません。


【番外編:α7S IIの場合】

ついでに、表面照射型のα7S IIでの撮影例もお見せしましょう。

α7Sシリーズは1画素あたりの集光能力を高めた高感度モデルで、初代のα7Sが発売された際には「広角オールドレンズの救世主」として期待された……らしいです。

こちらのα7S IIも先ほどの2台同様、2015年に発売されております。

SONY α7S II+HIPOLION8/19

少なくとも露骨な周辺部のマゼンタ被りは発生していませんね。ただし、α7R II同様のシアン被りが若干見られます。

しかも中心部に多少のマゼンタ被りが発生している……?

あんまり厳密な比較ではないのですが、α7R IIのほうが違和感のない写りになっているのかなと。

【広角を使うなら裏面照射型センサーが無難】

さて、ズバリまとめるなら一言です。

デジタルカメラでレンジファインダー用広角レンズを使うなら、とりあえずボディは裏面照射型のものを使おう


裏面照射型センサーのカメラならば、少なくとも盛大なマゼンタ被りが発生することはまずないと考えていただいて大丈夫だと思います。

とはいえ、シアンっぽい色被りは免れない場合が多いです。
こちらは、FUJIFILM X-S10にHIPOLION8/19を装着して撮影したもの。

裏面照射型センサーを採用したカメラですが、左下あたりを見ていただければすぐわかるようにシアン被りが発生しています。

シアン被りはマゼンタ被りよりもだいぶ写真の仕上がりがマシに見えますが、シーンによってはかなり目立ちますのでご注意を。

なお、今回テストに使ったHIPOLIONは焦点距離19mmの超広角レンズなので、なんのカメラに装着して撮影してもほぼ確実に色被りが出ます。

弊社スタッフが書いたレビュー記事はα7RIVで撮影したものですが、画面左にかなり目立つシアン被りが出ています。
【商品レビュー】MS-OPTICS-R&D HIPOLION 19/8 (Mマウント) Brass

【使えるか迷ったらまずご相談を】

ちなみに、「何ミリまでの広角ならばセーフなの?」という点も皆さん気になるところではないでしょうか?

こちらに関してはけっこう難しいところで、正直なところセンサーによって違います。

「28mmならギリギリセーフ」とか「35mmでも被る」とかいろいろなケースが報告されていますので、一概にはお答えできないのが難しいところ。

そのため、ライカMマウント・L39マウント・コンタックスGマウントの広角レンズをミラーレスカメラで使用したいと考えている方は、ご購入前に店舗で一度テストしてみることをオススメいたします

ナニワグループ各店では他店の商品を最寄りのお店に移動して実物を見ることが可能ですので、問題が発生しそうなレンズを使用したいと考えている方は一度店舗にご相談いただければと思います。

【内部干渉に注意】

その他、レンジファインダー用広角レンズをミラーレス等で使用する際に注意しなければならないのは、内部干渉の問題。

例えばライカMマウント・L39スクリューマウントのスーパーアンギュロンは、後玉が大きく突出しているため内部のメカシャッターに干渉してしまう場合があります。

具体的にはこんな風になってます。
【コマ間の狭さがアイデンティティ】SUPER-ANGULON スーパーアンギュロン 21mm F4 1st 第一世代 使用レビュー

そもそもフィルムカメラでも測光部に干渉してしまって露出計がまともに機能しなくなってしまうことがあるレンズですが……。

単純に写真がきちんと撮れないだけではなく、カメラ破損の原因になりかねない場合もありますのでお気をつけください。

【改善の努力も進んでいる】

ちなみに比較のところでLeica M Typ262の写真を「咬ませ犬」のように使ってしまいましたが、ライカはこの「周辺部色被り」問題の解消にむけて積極的な取り組みをしています

先日発売されたLeica M11は裏面照射型センサーを採用したうえ、イメージセンサー前側についているフィルターの構造を工夫し、広角レンズ使用時の色被り軽減を図っているそうです。

公式製品情報ページにも記述がありますね。
https://store.leica-camera.jp/products/detail/1839

既存のレンズ資産をきちんと使えるよう、ユーザーに配慮した姿勢をみせてくれているのは嬉しいところですね。実物を触る機会があったらぜひとも試してみたい……。


また、Mマウントで使用できるレンズを製造しているメーカーも、デジタルでの撮影を想定してレンズ設計を工夫しています。

たとえばコシナがフォクトレンダーブランドで発売しているSUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III は、デジタルカメラでの撮影を前提としての設計がなされています。

製品ページはこちら。
https://www.cosina.co.jp/voigtlander/vm-mount/super-wide-heliar-15mm-f4-5-aspherical-iii/

このようなメーカー様各社の努力により、色被り問題は一歩ずつ確実に問題が解消されてきているのです!

さぁ、皆さんもめくるめく広角レンジファインダーレンズの世界に飛び出しましょう!!
まぁ本当にどうしようもなくなったら、白黒モードで撮ったらほぼ問題ないです。

こちら、Leica M Typ 262+HIPOLION8/19で撮りました。周辺減光がガツンと効いててわたくしはこういうのもいいと思いますけどね。

それでは今回も長々とお付き合いいただきましてありがとうございました~。

また次回のブログでお会いしましょう!!

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