カメラのナニワ京都店 阿部です。
前回、LUMIX GH6(DC-GH6)の外観、使い心地の紹介と静止画レビューいたしました。
引き続きまして、いよいよ今回はGH6の本命ともいえる「動画」編です。
まあ色んなところで「すごい!すごい!」と言われているのは皆さまも聞かれていると思いますが、あまり動画をされない人にとっては、動画性能のすごさというのは少々伝わりにくいですよね。
ちょっと聞き馴染みのない単語も多いかもしれませんが、今回は静止画中心ユーザーにも魅力が伝わるように「GH6は一体何がすごいのか」をご紹介いたします。
はじめにひとことでお伝えしますと、「業務用シネマカメラ並みの動画性能をもったカメラが比較的安価に手に入る」という点がGH6の強み。
動画作例もございますので、最後までぜひご覧ください。
【LUMIX GH6は果たして高いのか?】
【最大5.7Kの動画収録が可能】
【高解像でも高フレームレートで】
【色情報を多く残して記録可能】
【Apple ProRes形式で内部記録できるぞ】
【GH6がお買い得なポイント】
【LUMIX GH6で動画を撮ってみた 作例】
【まとめ】
【LUMIX GH6は果たして高いのか?】
LUMIX GH6のは発売開始時点での弊社販売価格は264,542円です。
マイクロフォーサーズのカメラなのに、フルサイズ機並みの価格に驚いた方もいるでしょう。
しかし、これから詳しく解説していきますが、GH6は非常に多くの動画形式に対応しているカメラです。
高価な業務用シネマカメラや、他社製の最先端ミラーレスカメラと遜色ないくらい様々な動画形式をカバーするGH6は、非常にコストパフォーマンスの良いカメラだと言えるのです。
順を追って説明していきましょう。
【最大5.7Kの動画収録が可能】
まず、GH6は最大5.7Kでの動画収録が可能です。
実際に必要な解像度が4Kだとしても、5.7Kで撮っておくメリットはたくさんあります。
たとえば後からトリミングして拡大しても画が破綻しませんし、画面を動かすエフェクトも使用しやすいです。
例えば、止まってる被写体を右から左へスライドさせるカットが必要だとしましょうか。
通常だと収録時にそういう風に撮っておかなければならないので、高価なビデオ雲台やスライダーを用意したりする必要があります。
しかし5.7Kなら固定の画角で撮って、後から編集時に動かしてスライド効果をつけたり、ゆっくりズームさせる、といった方法が可能になります。
このように、撮影機材やフローを大幅に簡略化することができるのです。
【高解像でも高フレームレートで】
また、GH6は高解像化だけでなく、高フレームレートにも対応しています。
フレームレートとは1秒間に何コマ収録するか。
フレームレートが多いほどなめらかな映像となり、後から編集でスローモーション加工することもできます。
4K動画撮影できる一眼カメラが増えてきたとはいえ30pまで、いっても60pまでのカメラが主流です。(しかも4K撮影だとクロップされちゃうカメラも多い)
そんな中、GH6は5.7Kで60pまで、C4K(4Kよりもさらに横に大きい)でなんと120pまでクロップなしで対応可能です!
私の場合、後からスローモーションにすることを考えて基本60pで撮ることが多いです。
「高解像になっても30pまでしか撮れないのならあまり意味ないな」と思っていましたが、LUMIX GH6はばっちり対応してくれてますね。
【色情報を多く残して記録可能】
GH6の魅力的な機能は、カメラ内部でC4Kの60pまでなら4:2:2 10bitが撮れること。
いやーこれがまたすごいこと。
その前に「なんか聞いたことあるけど4:2:2とか10bitってなんやねん」ですよね。
ちなみに「4:2:2」と「10bit」は全く別のものを表しています。
だいぶかいつまんだ説明ですので、厳密な定義などは是非改めて調べてみてください。
以下知ってる人は飛ばしてください。
・「4:2:2」とはこれは色情報をどれだけ間引いているのか、という表記です。 人間の眼は「明るさの差は判別しやすいけど、色の差は気づきにくい」という特性があります。 4:4:4→各成分が全く間引かれていない状態。つまりRAW。 4:2:2→青系統と赤系統の水平方向のデータ量半分間引きます。 4:2:0→青系統と赤系統の水平と垂直方向のデータ量を半分間引きます。 「間引き」が行われるのは仕方ないけど、なるべく間引きは減らそう!というのが4:2:2です。 |
4:2:2だと色情報が多いので、後から編集をするのに非常に有利です。
続いて10bitの説明です。
・「10bit」とはbitとは1ピクセルあたりに割り当てるデータ量のことで、簡単に言うと「どれだけの色を表現できるか」を表していると考えてください。 |
違いがわかりやすいのがグラデーション。
夕焼けの写真でグラデーション箇所に縞模様みたいなものができたことありませんか?
これはバンディングノイズやトーンジャンプと呼ばれるもので、色が少なく再現しきれていないのが原因です。
10bitになればとても階調豊かな表現が可能となり、当然カラーグレーディングでも有利となります。
↓バンディングノイズの例 空に縞模様が発生している
↓10bit ※イメージです
で、この4:2:2 10bitを撮影できるカメラというのはまだまだ少ないんですよ。
たとえば、私が普段使用しているFUJIFILM X-T4。
こちらも優秀な動画性能を持つカメラではありますが、カメラ内SDカードで収録できるのは4K/60P 4:2:0 10bitまで。(それでもちょっと前から考えるとすごいことです)
X-T4で4K/60P 4:2:2 10bitで収録するには、HDMI出力で「ATOMOS NINJA V」といった外部レコーダーに繋げる必要があります。
一方でGH6の場合、C4Kまで4:2:2 10bitのカメラ内部メディアに収録できる!
そして記録時間無制限なので、4:2:2 10bitでの長回しも可能。
動画撮影において圧倒的な安心感を備えております。
【Apple ProRes形式で内部記録できるぞ】
また、GH6は映像業界標準でプロ仕様のコーデック「ProRes 422 HQ / ProRes 422」が内部記録できます。
こちらのApple ProResを簡単に説明すると、ProResは動画編集を行う際に一時的に使われる、いわゆる「中間コーデック」です。
ProRes形式のデータをそのまま視聴したり、YouTubeにアップロードすることはできません。この状態で編集してから、mp4などの動画ファイル形式として書きだす必要があります。
こちらのProResは編集のしやすさが大きな特徴。
データは大きいですが編集は軽く、レンダリング(編集した内容を動画に反映する処理)を繰り返しても劣化が少ないという特徴があります。
プロの現場では別の形式で撮ったものをわざわざProRes形式に変換してから編集をするみたいなことが行われているそうです。
私もProResに変換してから作業する時があるのですが、やはり圧倒的に編集が楽で、しかも綺麗です。
「どうせProResに変換するなら最初からProResで撮っちゃえばいいじゃん!」と思うんですけど、ほとんどのカメラではそのためには外部レコーダーに接続する必要があります。
しかし、GH6ならProResがカメラ内部で収録できる!
ただし、ProResで収録するにはCFexpressカードが必要なこと、繰り返しますが編集前提のファイルなのでそのままでは映像が使えないことに注意してください。
【GH6がお買い得なポイント】
このように、GH6はさまざまな動画フォーマットを広範囲にカバーしているカメラです。
他社のものと比較してみると、たとえば4K以上で4:2:2 10bitを内部収録できるカメラには、ソニーα7IV(約30万円)やキヤノン EOS R3(約67万円)、ニコンZ9(約62万円)などがあります。
その中でProResを内部収録できるカメラは、現状ではNikon Z9のみ。
であれば約26万円というGH6の価格は非常にオトクではないでしょうか?
【LUMIX GH6で動画を撮ってみた】
では実際に動画を撮影して編集まで行ってみました。
↓が動画作例。
カメラ大好きおじさん三人がそれぞれ思い思いのカメラを使用し、キャッキャしながら桜を撮っている映像です。
使用機材 カメラ LUMIX GH6 レンズ LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. ジンバル ZHIYUN WEEBILL S フィルター K&F Concept ND2-ND400 Nano-X II |
今回の動画画質は4K 4:2:2 10bit-Lに設定。
フォトスタイルは「V-Log」です。
Logで撮影するとダイナミックレンジが広く、色情報も存分に記録されるため、編集してよりイメージに近い映像を作り出すことができます。
※ただし、そのままでは「眠たい」映像になるため、LUTを使う、カラーグレーディングをするといった作業が必要です。
これまでのGHシリーズでは「V-Log L」を使用できていましたが、GH6で初めて「V-Log」が搭載されました。
「V-Log L」の場合ダイナミックレンジが12ストップでしたが、「V-Log」の場合シネマカメラVARICAMと同水準の14ストップ以上となります。
これによって白飛び・黒つぶれせず表現できる照度の範囲が、なんとシネマカメラやLUMIX S1H並に広くなりました!
ちなみに、今回撮影した後の編集フローは以下のようなもの。
DaVinci Resolveで素材をカラーグレーディング→Premiere XMLでレンダーする→Premiere Proで編集
DaVinci ResolveにちょうどPanasonic V-Log用のLUTが用意されていましたので、こちらを適用しました。
カラーグレーディングの際は、LUT(プリセットのようなもの)を当てた時点で自然で美しい絵作りが完成していたのにまず感動しました。
そこからホワイトバランスやコントラストの調整を行なっていきましたが、大きく変えても破綻せず、細かく追い込んだ調整も簡単でした。
「ああ、GH6のデータはなんと素晴らしいのだろう」
編集画面をぼーっと眺めながら、挽きたてのコーヒーを一杯、なんて楽しみ方もおすすめです。
↓ちなみに弊社松尾がLUMIX GH6でシネマライクに撮影した動画を上げてますので、こちらもご覧ください。
Panasonicによると、今後アップデートで「USBケーブル経由のSSD記録対応」する予定だとされています。
先ほど、ProRes収録するためにはCFexpressカードが必要だと申し上げましたが、ProResでの記録を長時間するとなるとかなり大容量のメディアが必要です。
外付けSSDならコンパクトで、かつ比較的安価に手に入れられるので、楽しみなアップデートです。
【まとめ】
GH6に限らず、LUMIX機で動画を撮影するといつも「扱いやすい」と感じてきました。
今回言語化することで、「LUMIXはなぜ動画を撮りやすいのか」が自分の中でも腑に落ちたように感じます。
その中でもフラッグシップといえるLUMIX GH6は、シネマカメラとしても使用できる驚きの性能と言えるでしょう。
しかも、その性能が比較的手ごろに手に入るのはとても嬉しいことです。また、ボディの費用を抑えた分でレンズに費用をかける、ということも可能です。
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25/1.7 ASPH.とLEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50/1.7 ASPH.は特におすすめの2本。
ズーム全域でF1.7を実現することで、マイクロフォーサーズの苦手分野である「ボケ量」を克服し、フルサイズの大三元2.8通しズームレンズに近いスペックとなります。
しかもこの2本はサイズ感・デザインがほぼ同じでフィルター径も統一されているので、ビデオ雲台やジンバルのバランス設定、NDフィルター交換などの手間が簡略化されます。
オペレーションやワークフローの簡略化も見込めますし、ますます動画撮影が快適になること間違いなしです。
GH6は、これまでの動画ユーザーやプロの方にはもちろん、これから動画を始めてどんどん技術を身に付けたい方にも安心しておすすめできるカメラだと間違いなく言えるでしょう。
これを機に動画撮影に興味を持たれた方は、わたしの書いた動画入門連載「どうしよ!」もどうぞご覧ください。
動画しようぜ!「どうしよ!」シリーズ
カメラのナニワ京都店 阿部