過去のナニワグループBLOGSをぼんやり眺めていたところ、とてもマズいことに気づきました。
こんだけFUJIFILMの機材紹介やってるのに誰もX-S10のレビュー書いてない……?
部分的なレビュー・紹介はちょいちょいありましたが、一本丸々X-S10の記事はまだ作成されていませんでした……。
わたくし中村は、X-S10発売から少し経った2020年12月のに新品で購入して以来、かれこれ1年4か月ほど使用しております。
こちらのカメラ、発売後それなりの期間が経っているにも関わらず、いまだに新品販売ランキングで上位に食い込んでくるだけあってめちゃくちゃ使いやすいです。
今回は、こちらのX-S10を使ってきた経験をもとに、どういう部分が魅力のカメラなのか、わたくしなりに解説していきたいと思います!
【スペック:ほかの機種との比較】
【X-Tシリーズとは異質なデザイン】
【オールドレンズの母艦として超有能】
【作例①:Planar 85/1.4 AEG】
【作例②:Trioplan 100/2.8】
【作例③:Ai-S 200/4】
【作例④:Angenieux 28/3.5】
【まとめ】
【スペック:ほかの機種との比較】
まずはFUJIFILM現行のカメラとの比較を交えながらこちらのカメラの特徴をまとめてみましょう。
2022年4月現在でFUJIFILM最新のイメージセンサー・画像エンジンのX-Trans CMOS 4およびX-Processor 4がX-S10には搭載されています。
センサーの「世代」の違いはあるものの、同世代機はフラッグシップ機も中級機も同じセンサー・画像エンジンが入っているのがFUJIFILMのカメラの特徴。
2020年5月に発売されたフラッグシップ機・X-T4と同じイメージセンサー・画像処理エンジンがX-S10には入っています。
つまりどういうことか非常に単純化して言うと……FUJIFILM Xシリーズで出てるいちばんいいカメラ(X-T4)と同じ画がX-S10で撮れるわけです。
これはあらためて言葉にするとなかなかすごくないですか? あくまで現時点でですが。
X-S10に続いて発表された中級機X-E4やX-T30 IIも、X-T4やX-S10と同様のイメージセンサー・画像処理エンジンが入っています。
とはいえ、X-T4およびX-S10にはボディ内手振れ補正機能が内蔵されています。とはいえX-T4は5軸6.5段、X-S10は5軸6段とスペックに違いはありますが。
そのほか、X-T4と違ってX-S10は防塵防滴仕様ではないとかいろいろと違いはありますが……。
あまり極端な状況を想定しない限り、フラッグシップ機X-T4とそこまで変わらないパフォーマンスを発揮できるカメラが約11万円ほどで買えるわけです。
サイコーじゃない?
このあたりの話を詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考までにどうぞ。
【X-Tシリーズとは異質なデザイン】
そもそものところX-S10は、先ほど例に挙げた同世代の「X-Tシリーズ」とは異なる「X-Sシリーズ」です。
根本的に異なった設計思想に根差し、デザインも従来のTシリーズとは大きく異なっています。
大きく目立つ違いは、ダイヤル部のデザインとグリップの大きさです。
Tシリーズでは従来、モードダイヤルはフィルムカメラのシャッタースピードダイヤルを模した意匠となっていました。
デザイン的にはレトロ感があって大変よろしいのですが、他社のデジタルカメラと異なった操作系であるがために少々取っつきづらかったのも確か。
買い替え前のX-T20を使っていた頃は、グリップが小さくてがっちり握りしめていないとカメラを安定させることができませんでした。
そのため、長時間撮影していると手に力が入らなくなってくることもしばしば……。
以上のように、FUJIFILMの従来のカメラが踏襲していた「クラシックカメラ風デザイン」を大胆にも捨て去ることで、実用性を大幅にアップさせたカメラがこちらのX-S10なのです!!
【オールドレンズの母艦として超有能】
さて、こちらのX-S10はオールドレンズで写真を撮るのにとても適したカメラです。
オールドレンズは基本的に金属とガラスの塊なのでめちゃくちゃ重いです。
また、重いレンズをつけると重心が傾き、カメラが安定しづらくなります。
そこでX-S10ですよ!!
まず、大型グリップでしっかりカメラを握りこんで安定した撮影が可能になります。
また、強力な手振れ補正機能が備わっているので、焦点距離が長めのレンズを装着した時やF8ぐらいまでしっかり絞り込んで撮る時も、ブラさずにかっちり撮影することができます。
さまざまなフィルムの写りをベースにした写真表現を可能にするフィルムシミュレーションや、ノイズをのせてフィルムで撮ったような仕上がりにできるグレイン・エフェクトなどの機能もオールドレンズと好相性。
オールドレンズで撮影するのにこれまで適したカメラはなかなかないのではないでしょうか?
というわけで、以下よりさまざまなオールドレンズで撮ってみた作例をお見せしつつ、使用感をお伝えして参ります!!
【作例①:Planar 85/1.4 AEG】
オールドレンズで中望遠となると名前が上がることの多いこちらのレンズですが、マジありえないぐらい重いです。
X-S10の本体重量がバッテリー等込みで約465gなので、レンズがボディの約1.5倍の重さという謎の状態に……。
当然ながら描写は素晴らしいレンズですが、取り回しはなかなか悪めです。X-S10の大型グリップの恩恵をフルに活かすチャンス!!
とりあえず挨拶代わり、一段絞ったF2で撮影。良好な色乗り・フォーカス部の立体感やシャープさはさすがの一言……。
高い評価を受けるのが頷ける、すばらしい描写ですね~!
お次は「オールドレンズの大トロ」(勝手に言ってるだけ)であるところの絞り開放F1.4で撮影!
F1.4クラスの大口径レンズなので絞り開放だと当然のように滲みが発生します。いや~これが良いんだな……!
特に花を撮るときはこういうふんわりぼんやりしたレンズのほうがいい感じになると個人的は思っています。
若干絞ってF4での撮影です。画面全体がシャープですっきりした写りになり、コントラスト(明暗差)もいい塩梅についてくれています。
こういう「絞りを変えて描写が変わる楽しみ」はオールドレンズならではですね!
大口径オールドレンズは「開放から一段絞って撮る」のが良いとよく言われています。
いろいろとオールドレンズを使ってきましたが、F1.4 あたりの大口径レンズだと「一段絞ったところ」が程よく美味しいところなのかと。
レンズの種類や個体差・経年劣化の程度によってまちまちではあるものの、総じてボケ感とシャープさのバランスが良いのがここら辺だというのは間違いなさそうです。
【作例②:Trioplan 100/2.8】
その特徴は、きれいにまん丸なバブルボケが撮れること。「バブルボケって何?」って方は以下の記事をどうぞ。
アルミ製でレンズも3枚しか入っていないため、長さのわりに軽くて取り回しの良いこちらのレンズ。
しかし、イルミネーションなどでまん丸のボケを出そうと夜に使っているとシャッタースピードを稼げないこともしばしば……。
そこでX-S10の出番ですよ!
ボディ内手振れ補正機能がいかに便利か、このレンズを使っているときに一番実感しますね……。
APS-CセンサーのX-S10に装着すると、150mm相当の画角となるこちらのレンズ。
日中に使っていてシャッタースピードが十分稼げても、手振れ補正機能があったほうがフレーミングも安定して圧倒的に写真が撮りやすくなります。
ちなみに、X-S10は液晶画面を横に展開できるバリアングル方式のモニターを採用しています。
静止画ユーザーだと、モニターを上下に動かせるチルト式のほうが光軸からずれないため好む意見を多く見かけますが……。
ローアングルもハイアングルも、写真を横向きで撮る分にはチルト式のほうが撮りやすいのですが、縦で撮るときはバリアングル方式のほうが撮りやすいとわたくしは思います。
このあたりは完全に好み・どのような撮影スタイルをとるかによってきますが……。
上の写真はバリアングルモニターをフル活用して超ローアングルから取った彼岸花です。
1段絞ってF4で撮影。開放だとかなり滲みが強いレンズですが、一気にすっきりした写りになります。
こちらのレンズでバブルボケが出るのは開放F2.8~4のあいだだけ(ちゃんと検証してないけど本当かな?)らしいので、滲ませないで撮ろうと思ったらF4での撮影が無難です。
独特のボケや滲みが楽しめる、唯一無二のオールドレンズ。
中古価格がかなり高騰していてなかなか手を出せない方も多いことでしょうが、せっかくオールドレンズの世界に足を踏み入れたならば一度は使ってみていただきたいレンズです。
【作例③:Ai-S 200/4】
なので、お手頃な価格帯のレンズを1本ご紹介いたします。ニコンFマウントの Ai-S 200/4です。
1万円しないぐらいのお手頃価格のレンズですが、描写は良好でまったく問題なく使える1本となっております。
わたくしがまだレモン社銀座店に勤務していたころ、こちらのレンズをX-T20につけて撮ったブログがあります。ご興味ある方はどうぞ。
わたくしはオールドレンズには異様な関心を示すものの、メーカー純正の優秀な望遠レンズなどにはまったく興味がわかない人間でございます。
なので、動物園とか被写体との距離があって望遠レンズが必要になるシーンでは、このレンズ1本あれば別に困らないよな~と思っているところです。
天王寺動物園にて撮影したヤギ。若干褪せた発色で線も柔らかめですが、「これだけ写れば十分」だとわたくしは思います。
ちなみに、このレンズを使うときは適度にピントの合う範囲を稼ぎたいので、F5.6からF8あたりで撮ることが多いです。
撮影データ見てみたらだいぶきわどいシャッタースピードで撮ってました。
普段はISOオートで上限3200にしていてノイズもそんなに気にならないのですが、最低感度に設定したまま戻さず撮影していたようです。
「焦点距離と同じくらいのシャッタースピードだと手振れしない」とよく言われますが、手振れ補正があるとかなり撮影条件に余裕が生まれます。
逆光が入るとちょっとモヤり気味ですが、これはこれで雰囲気があってよいのではと思います。
オールドレンズユーザーはすぐに「味」とか「雰囲気」とか言いたがりますが、そういう生き物だと思って許してください。
奇跡的なカット! 動物の動きぐらいならMFで追うのはそこまで苦労しないです。
特に望遠だと安価に手に入るレンズが多いですので、「安価なオルタナティブ」としてのオールドレンズをお試しいただいてはいかがでしょうか?
【作例④:Angenieux 28/3.5】
広角オールドレンズの使い方としては、基本的に絞って使うのがセオリーとなります。
広角の手持ちが少ないのでこいつを持ち出しましたが、安価な国産メーカーの広角オールドレンズも運用方法は変わらない……はず。たぶん。
広角オールドレンズ全般に言えることですが、は画像周辺部の写りが甘くなったり像が流れたりすることがありますので、経験則的にF5.6かF8ぐらいまで絞って使うのが無難だと思っています。
シャッタースピードが稼げないシーンでも手振れ補正が補ってくれるので、細かいことを考えずに撮れるのがいい感じ。
28㎜のレンズはフルサイズ換算で焦点距離42㎜ほどになりますので、スナップに使いやすい画角です。
絞り込んでおけばピント合わせもほぼ不要ですし、軽快に撮り歩くことができるのが良いですね。
こちらのAngenieux(アンジェニュー)というレンズそのものについてはいろいろ言われておりますが……。
ひとことで言い表すことが難しいというか、なんともいろんな表情を見せてくれるレンズです。
よく「軟調」「柔らかい」レンズの代表として名前が挙げられており、実際にそういう優しい雰囲気の写真が撮れることが多いのですが……。
この写真の左上、建物に絡まるツタのシャープな写りを見ていると「写りが甘い」とかそういう話でもないよな……と思うのです。
※若干トリミングしています
個人的には白黒で撮るといい感じになるレンズという印象。質感やトーンの出方が綺麗なような気がする。
カラーで撮ると発色も鈍く、若干黄色っぽく色が転んでしまうことが多いので、きっぱりモノクロ用として割り切っています。
特に水面や金属を撮るとバッチリきまるレンズなのかなぁとは思いますが、まだまだいろいろと研究の余地のある面白いレンズであることだけは確かです。
【まとめ】
さて、今回も長々と作例付きで解説して参りましたが……。
繰り返しますが、X-S10はオールドレンズに合わせるボディとして非常に適しているのは間違いないと思います。
もうすぐ新機種が発表されるだとか、それに新しいセンサーが搭載されるだとか、いろいろな噂がまことしやかに語られていますが……。
趣味の範囲内で写真を撮る分には特に不足を感じない、十分なスペックをすでにX-S10は実現しているのではないかと。
ちなみに動画性能に関しては上位機種のX-T4と明確な差別化が図られており、X-S10では4k 60pでの動画撮影ができません。
とはいえ、ダイヤル上部の赤いボタンを押すとすぐさま動画録画開始できる仕様になっています。
激しく動き回る子どもとかを撮るときは明らかに動画のほうが楽なので、実家に帰って甥っ子を撮るときなどはけっこう重宝しています。
個人的には、なにか途方もないブレイクスルーが起きない限り、このX-S10が一台あれば特に困らないかな~と思っているところ。
末永くよろしく頼むぜ! 相棒!!
新品・中古ともにナニワグループオンラインでお取り扱いございます。よろしければどうぞ!!
ナニワグループオンライン X-S10 新品中古在庫状況
それでは今回も長々とお付き合いいただきましてありがとうございます。
また次回のブログでお会いしましょう~!
【おまけ】
「ナニワグループBLOGS」は新たにメディア名を「新世界」と改めることになりました!
— ナニワグループ (@gnaniwa) April 19, 2022
おいおいロゴ変更なども行う予定ではございますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします~。https://t.co/YBYwJc0cy1 pic.twitter.com/WmCerk7dYP
しれっと媒体名が「ナニワグループBLOGS」から変わりました! これからは「新世界」というタイトルでやってきます。
わたくし中村に「新世界 編集長」というなんか大層な肩書がついてしまいましたが……。
趣味でよく分からない写真を撮っているだけの人間が「編集長」になることで「写真ってこういうのでもいいんだ!」っていろいろな方に思っていただけるのが大事なのかなと個人的には思っています。
皆さん、一緒にどんどん好きなように写真を撮っていきましょう!!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします~。