こんにちは~。編集長の中村です。
先週に引き続き、「14年前のデジカメで写真を撮ってみた」第2弾です。
今回は、EOS Kiss X2と同じく2008年に発売されたEOS 5D Mark IIの使用レビューとなります。
14年前とはいえ、かつては一世を風靡したエポックメイキングな機種であったこちらのカメラ。
その性能を、2022年の目線で検証して参りたいと思います!
【なぜいまEOS 5D Mark IIなのか?】
【EOS 5D Mark IIのスペック】
【使用感・フィーリングについて】
【作例つきレビュー】
【まとめ】
【「オールドデジカメ」について一言】
【なぜいまEOS 5D Mark IIなのか?】
ところで、まずなぜわたくしが今更EOS 5D Mark IIを使ってみようと思ったのかについて
まず一つ目は、「フルサイズ機への憧れ」があったからです。
APS-Cよりフルサイズのほうがノイズが少なく諧調(色や明るさの濃淡)が豊かな写真を撮れると言われますが、中古であっても値段が高く、おいそれと購入できるものではありません。
ですが、古い機種であれば話は別です。メーカーサポートも終了している古い機種ともなれば、なおさら安い!!
今回わたくしが入手したEOS 5D Mark IIは、使い込まれた老朽品で30,000円以下で購入できました。
これでついに「フルサイズの写り」を片鱗とはいえ経験できる……。やったぜ!!
一般的に、古いデジタルカメラは人気がありません。
デジタルカメラのスペックは日進月歩で、ほんの数年前の機種でも最新の機種に比べれば機能や性能で見劣りしてしまうことがしばしば。
しかも、メーカー公式のサポートが終了してしまったら修理もできません。
とはいえ、若干の不便に目をつむれば、画質面で十分な性能を有しているカメラは数多く存在します。
そういったカメラを「再評価」する機運が生まれてきているということで、それに便乗して1台なにか手頃なカメラを使ってみたかった、という具合でございます。
【EOS 5D Mark IIのスペック】
前置きが長くなりましたが、まずはスペック解説からやっていきましょう。
画像エンジンはDIGIC 4。前回のEOS Kiss X2よりも新しい世代のエンジンが入っています。
ちなみに、EOS 5Dシリーズはその後III、IVが出ておりますが、ぜんぶ別物のカメラだとみな口を揃えて言います。
正直なところ、EOS 5D Mark IIIと天秤にかけて相当迷ったのですが……Kiss X2と同年に発売されたという「縁」を感じたので、Mark IIをお迎えしました。
とはいえ、AFのレスポンスはEOS 5D Mark IIIのほうが段違いに早いので、そこらへん気にする方にこのカメラはおすすめしづらいですね……。
また、このカメラはEOSシリーズでははじめてフルハイビジョンの動画撮影が可能になった機種です。
今となっては1台のカメラで静止画も動画も撮れるのは「当たり前」の話ですが、当時としては非常に画期的な出来事だったようです。
ミドルクラスのEOS R7が約3,250万画素・エントリー機としての立ち位置であるEOS R10が約2420万画素であり、両機とも4Kでの動画撮影が可能です。
当時のハイアマチュア用カメラよりも最新のエントリー機種のほうが高画素なのは、なんとも時の流れを感じさせますね……。
「画素数」だけを取り上げて単純な比較を行うのはあまり意味がありませんが。
【使用感・フィーリングについて】
続いて使用感について。
これはなかなか使い勝手が良いですね! 操作性はなかなか良好です。
PモードとAvモードの中間みたいな感じで、「背景:ぼかす―くっきり」というように、直観的に設定を変えられるモードのようです。
まぁ使わないかな……。
かなり使いまわされたものと推測されますので、シャッター耐久回数も限界を超えている可能性が高い……。
ちなみに、こちらのEOS 5D Mark II、2019年11月末にバッチリとサポート終了しておりますのでもう修理ができません。
……まぁなんとかなるっしょ。
明るくて大きなファインダーなので視認性には問題はないのですが、正直なところ下の数字のところが小さくてかなり見づらいです。
わたくしが眼鏡をかけているという事情もあるのでしょうが……。
この点に関しては、EOS Kiss X2の撮影数値が見やすいファインダー設計のほうが、使いやすさでは格段に上だったとわたくしは思います。
後継機のEOS 5D Mark IIIはCFカードとSDカード両方使えるのですが……。
まぁこのあたりは「普通に売っててリーダーもまだ普及してるメディアだからマシ」ときっぱり割り切っていきましょう。
【作例つきレビュー】
それでは作例をお見せしていきながら、使用感をレビューしていきます!
まずは最初に、ちょっとした比較を行ってみました。
使用したレンズは前回同様EF 50/1.8 IIで、撮影設定を以下に揃えています。
- 絞り:F5.6
- シャッタースピード:1/125秒
- ISO:200
- ホワイトバランス:オート
- ピクチャースタイル:風景
ちなみに画角が違うぶん、5D Mark IIでは近寄って撮影しています。Kissのほう、若干前ボケ気味で申し訳ありませんが……。
見比べてみていかがでしょうか?
まず単純に、ボケの量が違います。まぁMFでピント位置固定にしていなかったので厳密な比較にはできませんが……。
1枚目はバラの後ろの葉っぱまでボケていますが、2枚目は葉っぱもピントがあっていますね。
ピントがもっと前に来ていても、後ボケの量はやはり1枚目のほうが大きかったでしょう。「フルサイズ」と「APS-C」のセンサーサイズの違いが明瞭に分かります。
次に、これはぱっと見で分かりづらいポイントですが、冒頭で述べた通りフルサイズで撮ったほうが色や明るさの濃淡が豊かなように見えます。
2枚目のほうが若干色が浅い感じがします。影のわずかなニュアンスも、フルサイズで撮った1枚目のほうが伝わってきます。
わずかな違いですし、他人が撮った写真を見てもなかなかピンとこないかもしれませんが……。
実際に肉眼で見て経験したものを撮っている本人からすると「違う!」と感じるんですよ、これが。
設定揃えたつもりが若干違ってた……。1枚目がシャッタースピード1/500、2枚目が1/400ですが、それ以外の撮影条件は揃ってます。
これは分かりやすくボケ量が違って、1枚目の5D Mark IIで撮ったもののは手前のバラもボケていますね。
2枚目はKiss X2で撮ったもの。花びらの少ししっとりした質感も、1枚目のほうがわずかに強いです。
比較はこれぐらいにして、5D Mark IIで撮ったもの単体でお見せしていきます。
まずは中之島バラ園で撮影してきた写真。先週のEOS Kiss X2での撮影と並行して撮ってきたものです。
ピクチャースタイルは、前回に引き続き「風景」です。
強烈な日差しのなか撮影しておりましたので、やはり赤色は色飽和が起こってすこしのっぺりした感じになりがち。
とはいえ、Kissよりは色に深みがある感じ。ピクチャースタイルを「スタンダード」とかにして彩度を抑えておけば良かったなぁと反省……。
5月の強烈な日差しが降り注ぐ中での撮影は、写真を撮るにはかなり厳しいシチュエーションです。
いくらフルサイズ機とはいえ、ダイナミックレンジ(写真の明るい部分と暗い部分の記録できる幅)は現行機と比べると若干弱いかなという印象……。
特にハイライト(明るい部分)側は真っ白に飛んでしまうことが多く、ひたすら露出補正を-2して撮っていました。
とはいえ、記録できる範囲内での諧調表現は豊かで、特にこういうジトっとした暗めの写真がいい感じに撮れる……!
ミラーレスと違って一眼レフはファインダーを覗いている時に「実際の写真の明るさ」を直接みることができません。
ハイライトの飛びやすさと相まって、逆光気味のシーンや日差しの強い日中だとけっこうミスカット連発したり……。
とはいえ、何度もトライアル&エラーで「思い通りのイメージ」を得ていく感じはそれはそれで楽しかったり。
ようやくEF 50/1.8 IIを本来の画角で使う日がやってきた……!! フルサイズで味わうF1.8の甘いボケよ……。
どちらかというと「絞り開放でなくてもボケが稼げる」ところがポイントでしょうか。
APS-CだとF2.8でもそこそこピントが合ってしまうため、中間絞りを使うことが少なくなりがち。
適度に絞って描写を鋭くしつつ、ばっちりボケも作れるのは魅力です。
逆に言えば、ボカしたくないシーンはきっちり絞る、という工夫も必要になってきます。
しかも、AFの精度も今どきの機種と比べるとイマイチですので、多少絞って撮るのがセオリーかなと。
ちなみに連写性能は詳しくテストしておりませんが、約3.9コマ/秒とのこと。
連写機能を基本的に使わないのですが、EOS R7/R10のタッチ&トライで最高約15コマ/秒を味わってきた後だともっさり感がすごい……。
ホワイトバランスは、オート・太陽光・日陰・くもり・白熱電球・白色蛍光灯・ストロボ・マニュアル・ケルビン値指定の9種類。
今回はすべてオートホワイトバランスでの撮影ですが、そこまで極端に変な色に偏ったりはしないかなという印象。
今どきの機種だとオートホワイトバランスにも「ホワイト優先」とか「雰囲気優先」とか選べたりしますが、そういう気の利いた機能は当然ありません。
また、ケルビン値指定で「寒色ー暖色」の調整はできますが、「緑ーマゼンタ」は手動で調整できません。
夕方になるとどうしてもオレンジっぽい色になりがち。デフォルトで「雰囲気優先」になってるような感じです。
気になるようなら適宜ホワイトバランスをマニュアルで設定しなければなりません。
ちなみに蛍光灯の下でのオートホワイトバランスはこんな感じ。特に違和感のない色です。
露出測光の精度が微妙なので、基本的に暗めに撮ってしまう……。
夜の街を彷徨って高感度ノイズもチェック。ここから後は、ピクチャースタイル「スタンダード」にしています。
ISO1600なら、モニターで見てもノイズはそこまで気にならないレベルかな、という印象。
スマホで見るならなおのこと問題ないです。
たぶんもうちょっと頑張ったら「綺麗な白」が撮れるはずなんですけど、まだうまく使いこなせていない……!!
まぁレタッチする前提で撮れという話なのでしょうが……。
とはいえ、明暗差のあるパリッとした写りでjpgそのままでも悪くない写真が出てくるな、という印象。
逆光とかカンカン照りの日中とかだとそれが仇となるわけですが……。
ISO 1600あったらカフェなどの暗めの室内でも十分シャッタースピード稼げます。ちなみにこの写真はホワイトバランス「白熱電球」で撮りました。
ケーキの艶やかな質感もいい感じに撮れてる!
ISO 3200での撮影。ノイズがかなり目立ってきているように感じます……。
モニターで見るとぱっと見で違和感を感じるレベル、スマホでもちょっと拡大したらザラツキが見えてしまいますね。
ちなみに、ISOオートは100~3200で固定。変更不可能です。
最低シャッタースピードも変更できないため、使用できるシーンに制限がありそうかなと……。
ノイズが気になるならな、モノクロにしてしまえばええんじゃよ。
街灯に照らされる人影。陰影が細やかで立体感がある写りがGoodです。
ちなみに低照度環境でのAF性能はびっくりするぐらい悪いです。くれぐれも期待しないでください。
カラーでの撮影も全体的にコントラスト(明暗差)の高い画が出てきますが、モノクロも締まりのいい黒が撮れて個人的にはかなりグッときました。
【まとめ】
さて、ハイアマチュア用のカメラとはいえ、14年前のカメラでどれだけの写りが期待できるのだろうか、と半信半疑でしたが……。
100点満点とはいきませんが、コントラストが強くて見栄えのする写真が撮れますし、個人的にはかなり好みの写りだなと。
また、シャープネスはありますが明瞭度は高すぎず、カチッとしすぎない優美な写りがすごくいい感じ。
とはいえ、コントラストが高く白飛び・黒潰れが発生しやすいのは好みが分かれるかもしれません。
とはいえ、3万円程度でかなり良好な写りのカメラを手に入れられるというのは、なかなかどうして魅力的ではないでしょうか?
また、「同世代で別メーカーとの比較」「他社製で今どきのセンサーサイズの異なる機種との比較」などいろいろ比べられるでしょうし、このあたりの細かい検証はまた後ほど時間があったらやってみたいところですね。
【「オールドデジカメ」について一言】
まず、一人の人間が一生の間に使うカメラの台数はおそらくそう多くないでしょう。
カメラ1台買うのも安い買い物ではありませんし、だいたい1台あったら「十分」ですから。なので、ひとが実際に使ってみて「経験」できるカメラには限りがあります。
しかも、「よく写るカメラ」かどうかの評価は感性に依存するので、どうしても主観的にならざるを得ません。
そうなってくると、「画素数」「連写枚数」など数字で比較できる部分以外の「良いところ」は伝わりづらくなりがちです。
しかし、これまでこの世に生まれ、使われてきたカメラたちにはそれぞれ個性があり、異なった魅力があるはずです。
必ずしも旧機種が新機種の「下位互換」な場合ばかりではないでしょう。
しかし、冷静に「カメラにはどれほどのスペックが必要か?」と一度立ち止まって問い直してみることは、悪くないのではないでしょうか?
ちなみに先日キヤノンフォトハウス大阪さんにお邪魔した際に、EOS 5D Mark IIで撮った写真も展示してありました。
当時このカメラで実際に「作品」を撮っていらっしゃった方はたくさんいますし、現にいまEOS 5D Mark IIやMark IIIを好んで使いつづけている方々もいらっしゃいます。
まぁゆっくりとではありますが、そういう感じでやっていけたらなぁと。
最後にいちおう前回のブログと最新機種の感想ブログも貼っておきます。未見の方はこちらもどうぞ。
というわけで、今回は以上です! 毎回ながら長くなりましたが、お付き合いありがとうございました~。
また次回のブログでお会いしましょう!!