「カメラ=一眼レフ」ではないんです【今どきのカメラ事情】

こんにちは~。編集長 中村です。

7月12日の夕方、日経新聞にとある記事が掲載されました。

ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕

「60年超の歴史に幕」という極めてセンセーショナルなタイトルだったため、カメラ業界内外問わず大騒ぎになりました。

なお、ニコン公式では「憶測によるもので、当社が発表したものではありません」と声明を発表しています。

とはいえインパクトのある報道であり、中には「ニコンがカメラ業界から全面的に撤退した」と勘違いされた方も少なくありませんでした。

わたしも多くの友人から「ニコンのこれヤバくない?」みたいなLINEが届きまくったり……。

しかし、カメラに詳しくない世の中の大半の方々は「一眼レフ」とそうでないカメラの違いなど知るよしもありません。

ぶっちゃけ、わたくしもレモン社に入社してカメラの販売に関わるまで、「一眼レフ」とそれ以外のカメラの違いはよく分かっていませんでしたし。

そこで今回は、「一眼レフ」とはどういう種類のカメラで、いまどういう立ち位置なのかというお話をしたいと思います。

どうぞお付き合いください~!

■目次
【「一眼レフ」ってどういうカメラ?】
【一眼レフ以前:レンジファインダーカメラとの違い】
【一眼レフ以降:ミラーレスカメラとの違い】
【EVFとOVFの違い】
【ミラーレスはレンズも高性能化しやすい】
【「一眼レフ」はどうなる?】

【「一眼レフ」ってどういうカメラ?】

さて、それではまず「一眼レフ」とは何かを説明していきましょう。

その特徴は、カメラ内部にミラー(鏡)が入っていることです。
このように、イメージセンサーやフィルム面の前にミラーが入っています。

レンズで集めた光をこのミラーで反射し、ペンタプリズムを通してファインダーで直接見られるようにしているのが「一眼レフ」というカメラになります。

ちなみに「一眼レフ」の「レフ」はreflex(反射)に由来しますね。

【一眼レフ以前:レンジファインダーカメラとの違い】

ちなみに、「一眼レフ」という種類のカメラが一般的になる直前だと、35㎜判(ふつうのサイズのフィルム)カメラはライカなどのレンジファインダー式の物が主流でした。
あまり詳しく解説すると長くなるので割愛しますが、簡単に言うとこのタイプのカメラは三角測量の要領で被写体との距離を測り、ピントを合わせるカメラです。

このタイプのカメラは、ファインダー越しに見える像とレンズを通って実際に記録される像が「別」のため、ズレ(視差)が生じてしまいます。

特に近接撮影望遠レンズを使っての撮影の際にはズレが大きく、「見たままに写真が撮れるカメラ」が強く望まれていました。

そこでレンズを通った光を直接みて撮影できる「一眼レフ」の開発が進められます。

当時、「一眼レフ」自体はすでに存在していたものの、さまざまな技術的課題があって実用的なものはまだ登場していませんでした。

日本のメーカー各社はその課題に対して精力的に挑み、大幅な成功を収めることになります。結果として現在の「カメラ大国」日本があるわけです。

まぁこのあたりの歴史の話も詳しく説明しだすとキリがないのでこの程度にとどめておきましょう……。
簡単に比較画像を載せておきます。左がレンジファインダーカメラ右が一眼レフです。

ミラーが内蔵されているぶん一眼レフのほうがボディが分厚く、ファインダーにペンタプリズムが入っているため大きく出っ張っているのが分かるかと。

ちなみに、一眼レフはレンズと撮像面(フィルムやイメージセンサー)の間にミラーが入っているため、それに合わせて像を結ぶ位置を調整してレンズを設計しなければなりません。

一眼レフ用のレンズにはこのような制約がありますが、レンジファインダーカメラにはありません。

なので、レンジファインダー用のレンズのほうが「無理がない」ため、光学性能が優れたものを設計しやすくなっています。(この話は後の伏線になりますよ!)

ライカの「写り」が良いと言われるのは、こういう事情もあったりします。

【一眼レフ以降:ミラーレスカメラとの違い】

「一眼レフ」が35㎜判カメラのスタンダードになった後も、ピント合わせのオートフォーカス化・フィルムからデジタルへの移行などカメラの仕組みが根本的に変わる「地殻変動」は幾度もありました。

それらを「一眼レフ」は無事に乗り越えてきました。しかし、いよいよ「一眼レフ」の存在意義を脅かす存在が現れます。

それは「ミラーレスカメラ」というものです。

「ミラーレス」とはなんでしょうか? ずばりその名の通り、「ミラー(鏡)入っていない」カメラです。
見ての通り、レンズを装着するマウント部のすぐ後ろにイメージセンサーがあります。

一眼レフはミラーが入っていて、その後ろにイメージセンサーが配置されています。

ミラーレスはまるっとこのミラーの部分がなくなったカメラのことを指します。左が一眼レフ(Nikon Df)、右がミラーレス(Fujifilm X-T2)です。こうやって並べると、形状はあまり変わらないように見えますね。

というより、ミラーレスの大半は一眼レフのデザインを踏襲して似たようなデザインにしるだけです。

例えばFUJIFILMのX-Proシリーズは、ライカなどのレンジファインダーカメラを意識して左肩にファインダーを備えていますし。
横から見るとだいぶサイズ感が違いますね。まぁセンサーサイズの違う機種なので厳密な比較にはなりませんが。

とはいえミラーのユニットがまるまる省略されているぶん、ミラーレスカメラのほうが原則的にボディがコンパクトで薄い形状になっています

ちなみにクラシカルなデザインの2台を揃えたのは、こいつらしか手配できなかったからです。比較画像としては別のカメラのほうが適切だったかなと思いつつ……。

【EVFとOVFの違い】

ちなみに一眼レフのファインダーは光学ファインダー(OVF)と呼ばれます。

これは、ミラーとペンタプリズムを通して像を「そのまま」見られる構造であることを指します。

要するに、双眼鏡顕微鏡をのぞいているような感じですね。

一方でミラーレスの場合、電子ビューファインダー(EVF)が搭載されています。

これは、イメージセンサー上の像をリアルタイムでファインダー内に表示するものであり、モニターを見ているような感じです。

光学ファインダーと電子ビューファインダーを比較した時、以下のようなメリットデメリットがあります。

【メリット】
電子ビューファインダーのミラーレスはリアルタイムで露出設定をみて写真の明るさを確認することができる。一眼レフはシャッターを切るまで分からない。

【デメリット】
ミラーレスのファインダー内映像にほんのわずかなラグがある。また、撮影する瞬間にファインダー内表示が一瞬止まる(ブラックアウトする)。

常にイメージセンサーが動いているのでバッテリーの消費も早い。


一眼レフに限らず、カメラの露出計(明るさを測る機能)は万能ではありません

カメラが「適正」な明るさだと判断した設定でも、それが必ずしも人間の目で見ても「ちょうどいい」明るさだとは限らないのです。

なので、ミラーレスカメラの「実際の写真の明るさを確認しながら撮影できる」というのはかなり大きなアドバンテージです。

また、EVFの「デメリット」のほうも最近ではかなり改善されてきています。

すでに表示のラグはほとんど無いに等しい状態にまで進歩しましたし、ブラックアウトフリーのEVFをそなえたミラーレスも増えてきました。

バッテリー消費に関してもかなり持ちが良くなってきて、使用に困らないレベルになってきているのが現状です。

【ミラーレスはレンズも高性能化しやすい】

ミラーレスカメラの利点はそれだけではありません。

先ほど「レンジファインダー」の説明をした際に、「ミラーの入ったボディの構造を考慮しなくていいのでレンズ設計に無理がない」というお話をしましたね。

これはミラーレスカメラでも同じことです。

特にミラーレスカメラの開発に遅れて参入したニコン・キヤノンは高性能なレンズラインナップを揃えていることをアピールしています。

このように、いまとなってはデジタルカメラのトレンドは完全に「ミラーレス」に移行しており、各社こぞって一眼レフではなくミラーレスの開発に注力しているのが現状です。

【「一眼レフ」はどうなる?】

さて、こんな具合にミラーレスが追い上げてきており、「一眼レフ」は存在意義を厳しく問われているわけですが……。

このような状況ですのでニコンのみなならずキヤノンもすでに長いこと一眼レフの新機種を発表しておりません

なので、日経新聞の報道もあながち「誤報」とは言えないのです。タイトルの付け方にちょっと疑問はありますが。

そんななか、新しい「一眼レフ」を開発・製造しているメーカーはかなり少数派となっております。

例えばPENTAXブランドは「一眼レフの未来を創る」と掲げております。

実にチャレンジングな方針です。個人的に、わたくしはとても好感を持っております。

1月にお試し会でK-3 Mark III 触らせていただいた感じもかなり良かったですし。
PENTAXの神レンズ FA 31/1.8 Limitedとタクマー55/1.8で京都を撮ってみた

ちなみにわたくしはほとんどデジタル一眼レフを触らないままミラーレスを使い始めた人間なので、「一眼レフへの郷愁」といった感情はあまり持ち合わせていません。

しかし、最近ちょっと一眼レフを触ってみて思うところがあったり。

シャッターを切った時のミラーが動く感触とか、機械感のあるシャッター音とか、なんだか一眼レフを使っていると「写真を撮っている」というなんとも言えない実感があるなぁと。

もはやメインストリームではないにしても、一眼レフはなくならないでほしいなぁというのが正直な意見です。
ちなみにわたくし、こっそりデジタルライカユーザーだったりするのですが……。

デジタルレンジファインダーカメラ」などという奇妙なカメラが存在していて今も新機種が出ているのに、「デジタル一眼レフ」は許されないというのかしら?と思ったり。

ちなみにわたしくしが使っているのはM Typ262という背面液晶でライブビュー撮影ができないモデル。

やっぱりライカなら距離計使って写真撮らないとねぇ!」ってわざわざ使いづらいモデルを買ってますとも、ええ。

そういう人間からすると、「最先端」のカメラしかこの世には存在してはいけない、というわけではないんじゃないでしょうか?と思うのです。

あくまで「趣味」の範囲内で写真を撮っている人間の意見にすぎませんが。

というわけで、「一眼レフ」という種類のカメラを取り巻く現状がだいたいご理解いただけましたでしょうか?

最後に、冒頭で言及した日経新聞の記事・およびそれに対するニコン公式のコメントも貼っておきますのでご興味あられるかたはご覧くださいませ。

ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC219V60R20C22A6000000/

本日の一部報道について
https://www.jp.nikon.com/company/news/2022/0712_01.html

ちなみにですが、ニコンのミラーレスカメラ開発もかなりハイレベルになり、最新機種のZ9などはミラーレスカメラの欠点をかなり払拭した素晴らしいカメラに仕上がっています。

参考に弊社スタッフの書いたレビューもご覧くださいませ。
進化したAF性能を体感! ニコン Z9 実写レビュー 鉄道編

それでは今回も長々とお付き合いいただきましてありがとうございました~。

また次回のブログでお会いしましょう!!