クラシックカメラ レモン社 銀座教会店

お客様に借りたカメラを使ってみた ~レチネッテ(#017)~

読者の皆様こんにちは。銀座店の河井です。

次のブログ何を書こうかな~と思いふけっていたら、常連のお客様とこんなやり取りが。

お客様「かわいちゃん、何か使いたいカメラのないの?」

私「ん~今考えてます。おすすめありますか?」

お客様「待ってろ、持ってくる!」

私「( ゚Д゚)あ、帰っちゃった……」


その翌週、レチネッテ(#017)をお持ちいただきました。今回は、こちらのカメラを使ってブログを書きたいと思います。

蛇腹式カメラで撮影したことが無かったので、初の試みです!


1.レチネッテとは?

そもそもレチネッテとは??? 

レチネッテは「レチナ」の普及版に当たるカメラになります。レチナは、ドイツ・コダック社が1934年に発売したカメラです。

高級メーカーのレンズやシャッターを採用して妥協のない性能を実現しながらも、同じ35mmフィルムを用いるライカやコンタックスに比べてレチナは圧倒的に安く、とても売れたカメラでした。

このレチナの生みの親 オーギュスト・ナーゲルさんは優秀なカメラ設計者で、もともとはツァイス・イコン財団の技術担当理事に就任したこともある方でした。

このナーゲルさん、とある計画を抱いていたのですが……。

それは、ライカやコンタックスなどの超高級機に独占されていた35mmカメラを、大衆の物にしようとする”フォルクス・カメラ(国民カメラ)“計画というもの。

しかし、レチナがいくらライカやコンタックスに比べて破格の安さだったとはいえ、まだ一般大衆が気軽に買えるような価格ではありませんでした

そこでレチナ発売から5年後の1939年、レンズやシャッター周りを簡略化することでさらに安価になったレチナの普及版・レチネッテが発売されたのです。

このレチネッテにナーゲルさんがどこまで関わっていたのか資料に記載がありませんでしたが、こうして彼の悲願であった”フォルクス・カメラ(国民カメラ)“計画を担えるカメラが作られました

その後、1943年にナーゲルさんはその生涯を終え、親族のヘルムート・ナーゲルさんが後継者となってドイツ・コダック社を率いていきます。

なお、今回お借りしたレチネッテ(#017)は、1952年に発売されたモデルで戦後のレチネッテシリーズ2代目のカメラとなります。

#017」のように製品名に続く「#」から始まる3桁の数字ですが、「シュツットガルトタイプナンバー」と呼ばれる、ドイツコダック社内での型番を表す番号だそうです。

2.スペック

今回のレチネッテ(#017)は、レチナ1型(#013)のボディーを流用したものです。

シャッターに関しましては、ごく初期のモデルはプロンターS、後にプロンターSVが付いたものが出回っているそうです。

レンズはシュナイダー製のレオマー・クセナーの共に50mmF4.5の2種類があるそうです。今回お借りして使用したものは、レオマー付きでした。

『レチナブック (クラシックカメラ選書)』より、スペックを抜粋して以下に掲載します。

モデル名 RETINETTE
生産年代 1952年~1954年
コダック社内ナンバー #017
レンズ ①シュナイダー・レオマー 4.5/50mm

②シュナイダー・クセナー 4.5/50mm
大きさ、重さ 約120×75×35mm/約425g
製造台数 約61000台(#012を含む)
外装仕上げ、塗り、メッキ等 クローム仕上げ
特記事項 コダック・パテ(フランス)よりアンジェニューF3.5/50mm、F4.5/50mm、アトム、アトス2型シャッター付きが発売されている。


3.ボディ各部名称

レチネッテが海外の製品であるため、日本語の説明書はなく……また、決まったパーツ名がない部分も……。

なので、パーツ名の正式名称が分からなくて暫定的な名称で説明していきます。もっと分かりやすい表記のしかたがあったら教えて!!(泣)
1 ファインダー

2 アクセサリーシュー

3 巻き戻しクランク

4 裏蓋開閉ロック(ロック部分は小さい)

5 前蓋ロック解除ボタン

6 巻き上げクランク

7  シャッターボタン
8 フィルムカウンター

9 AR切り替えレバー(A=巻き上げ、R=巻き戻し)

10 巻き戻し軸

11 フィルム室

12 スプロケット

13 巻き取りスプール
14 絞りレバー

15 シャッターチャージレバー

16 シンクロソケット

17 セレクター

18 セルフタイマー
19 シャッタースピード環

20 距離環

21 レンズ

22 レンズ収納ロック解除ボタン


【ファインダーを覗いた時の様子】
ファインダーは小さいですが、のぞいてみるとこんな感じではっきり見えます。

距離計や露出計などは内蔵されていませんので、ピント合わせは目測・露出もマニュアル設定が必要になります。


4.撮影準備〜巻き戻し

では、具体的な使い方を画像とともにご説明していきます。

・裏蓋を開けます。その時、ロック部分を倒します。

・巻き戻しクランクを上に引き上げます。

・フィルムを巻き戻し軸にはめ込みます。

・巻き取りスプールの溝にフィルムの先端を、フィルムの(パーフォレーション)をスプロケットにはめ込みます。

(念のため、フィルムが巻き上げられているか確認しましょう)

・AR切り替えレバーをAにします。

・フィルムが外れないよう気をつけながら、矢印の方に巻き上げクランクを回します。

・フィルム枚数計を合わせます。

※レチネッテは逆算式なのでお気をつけください。(逆算式…フィルムが36枚撮でしたら、画像のように△の先を36に設定しましょう)

私は逆算式を知らず0に設定し、撮りはじめたので困りました。

・裏蓋を閉め、ロックをしましょう。


・前蓋ボタンを押し、前蓋を手前に倒します。

・シャッターチャージレバーを引きます。巻き上げとシャッターチャージは連動していませんので、忘れずにレバーを引いておきましょう。

・あとは、シャッターを押す!

※私は決定的なタイミングでチャージ忘れや、シャッターの押し間違いがありました。皆様、お気をつけください。

・レンズをしまう時は、サイドにあるボタンを押しながらしまいます。

・連動して前蓋も動くので前蓋も閉じます。

・フィルムの巻き戻しは、AR切り替えレバーをRの方に倒し、巻き戻しクランクを矢印の方に巻きます!

・巻き戻しが完了したら、裏蓋を開け現像してくれるお店に持っていきましょう!


5.撮影(作例)

まずは浅草に行って撮影してきてみました。使用したフィルムはKodak GOLD 200です。

70年近く前のカメラなのに、きちんと動いて写真が撮れることに驚きです。

しっかりよく写っているように感じます。

夕方に行ったので、いい感じで温かみのある感じに撮れました!

続いて浅草と対照的な場所に行ってみました。下北沢から渋谷、代々木公園です。

浅草での撮影と大体同じ時間帯に撮影しました。

光の強く当たっている部分が滲んで、ふわっと優しい感じに撮れたと思います。


6 まとめ

  • ボディが軽い!
  • 優しい感じに写る!
  • ボディがコンパクトなので、持ちやすい!
  • ファインダーとレンズが連動していないので、ファインダーで見えていた画面と撮れる写真が少しずれるので難しかった……。
  • チャージ忘れなどの操作ミスに注意!
夜に撮影すること考えていなかったので、感度200のフィルムを詰めたまま手持ちスローシャッターで撮りました。

軽くて小さいカメラではありますが、さすがに手ブレしてしまいました。
ファインダーだと中心だったんだけどな……。目測式なので、思い通りのフレーミングで撮れていない時がしばしばあります。

思ったよりも手軽に使えて、折りたたみできる蛇腹式なので持ち歩きもしやすかったです。

気になった方はぜひとも一度使ってみてください!

 
なお、今回、レチネッテについての詳細を解説するにあたって以下の資料を参考にしました。詳しい歴史やもっとレチナについて知りたい!という方は、ぜひお読みになって下さい。

・『レチナブック (クラシックカメラ選書)』 片山良平 著 朝日ソノラマ
・『ツァイス・イコン物語』 竹田正一郎 著 光人社
・『クラシックカメラ専科 4 名機の系譜』朝日ソノラマ
・『クラシックカメラ専科 8 スプリングカメラ』朝日ソノラマ


さ~て、次回のカメラは何でしょう?

私も次何が来るか分かっていないので、皆さんも考えていただけたらと思います!

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