平成レトロのフィルムカメラ オリンパス L-10パノラマ 【ねこの京都】

皆様 こんにちは。ナニワグループ 猫写真担当 見崎です。

フィルムカメラの収集・コレクションと言えば、ひと昔なら、ライカやニコンなどのレンジファインダー、敢えて選んだとしても、露出計のない機械式シャッターの一眼レフまででした。

今日このごろ、弊社のような中古カメラ専門店では、平成初期(携帯電話やインターネットが普及するまでの時代)のコンパクトカメラからオートフォーカス一眼レフを買い集める若いお客様が多くいらっしゃいます。

実用的なフィルムカメラで、プリント店で現像する過程・仕上がりを待つ過程も楽しんでいるようです。

さて、今回の猫撮影レビューは、多種多彩なフィルムカメラの中から、レンズ交換型カメラとコンパクトカメラの狭間に隠れてしまったレンズ一体型一眼レフ・オリンパス L-10パノラマについてご紹介してまいります。

筆者の休日を利用して撮影した猫写真作例と共に解説してゆきましょう。


【オリンパス オートフォーカス一眼レフの草創期について】

1985(昭和60)年2月に、ミノルタのオートフォーカス一眼レフカメラ「α7000」が登場以後、競合各社は急速にボディ内AFモーター駆動のオートフォーカス一眼レフカメラシステムの構築に取り掛かります。

1986(昭和61)年には、ニコンF-501に続いて、オリンパスからはOM-707が登場しました。

OM-707は、従来のOM-1やOM-4等の小型軽量で質実剛健なイメージからほど遠く、プラスチックボディーでプログラムオート露出のみ、マニュアルフォーカス使用時はパワーフォーカスで調整など、従来のオリンパスファンには受け入れられにくい性能でした。
1987(昭和62)年には、アメリカのハネウェル社がミノルタのオートフォーカス式一眼レフカメラの自動焦点機構が特許侵害をしていると訴訟を起こし、ハネウェル社が勝訴

この訴訟の余波でミノルタ以外の国内メーカーもことごとくハネウェル社に賠償金を請求されることとなり、オリンパスは日本円でおよそ40億円を支払っています。

レンズ交換型オートフォーカスカメラは、OM-707の 1機種で終息し、以後は「ズームレンズ固定式オートフォーカス一眼レフ」に屋台骨を変更することになります。

【L-10パノラマの発売は1994(平成6)年】

新コンセプトモデルとして、ズームレンズ固定式のオートフォーカス一眼レフシリーズの初号機種として平成2年に「L-1」が登場。

プログラム露出・絞り優先露出・マニュアル露出付きに焦点距離35~135mm 4倍ズームで、写真趣味層にも評判は良好でした。

その後、最短撮影距離を改善した「L-2」・焦点距離を180mmまで延長した「L-3」へ進化します。

平成初期のレンズ一体型カメラ事情(コンパクトカメラを含む)として、広角35mm・38mmスタートであっても、望遠端の焦点距離がわずか10mmでも長いほうが優秀でよく売れるという風潮がありました。

【参考】
ミノルタ……CAPIOS 115→CAPIOS 125→CAPIOS 140
オリンパス……μ105→μ115→μ130→μ140
ペンタックス……ESPIO 115M→ESPIO140→ESPIO160 など

一方、オリンパスはパイスペック&望遠端を重視した「L 一桁シリーズ」とは別に新たにコンパクトボディ&広角端重視の「L 二桁シリーズ」も企画されます。

「L 二桁シリーズ」の初号機として、「オリンパス L-10パノラマ」は平成6年に登場しました。

発売当時のメーカー希望小売価格は68.000円(税抜き)でした。

【参考】競合製品のメーカー希望小売価格
ニコン F50Dズームレンズキット(AF35-80mm付) 91.000円
キヤノン EOS Kiss ズームレンズキット(EF28-80mm付) 89.000円
ミノルタ α303si SUPER ズームレンズキット(AF28-80mm付) 90.000円
オリンパス μ130 62.000円
オリンパス μ115 56.000円

【焦点距離は便利な28~100mm 3.5倍ズーム】

競合他社の入門一眼レフのセットレンズが、35~80mmもしくは28~80mmが多く占めるなか、L-10パノラマは28~100mm F/4.5-5.6のレンズを備えていました。

スナップ・ポートレート・風景・旅行・ペットなど通常撮影でも幅広いシーンで使えるズームレンズです。
当時この頃、筆者はEOS 1000QD+EF35-80mm F4-5.6 USMを愛用していました。

しかし、同級生のL-10を借りたとき、遠近感を活かせる広角28mmと被写体をさらに大きく切り取れる100mmが1本で賄えた事に「実用的なカメラがあらわれたなあ。。。」と感心したものでした。

【初心者にやさしい「FULL AUTO」モード】

オリンパス Lシリーズは、多機能のため、様々なボタン・レバー等があります。

発売して25年以上経過しているため、中古カメラ店でも、使用説明書もない場合が多々見かけるでしょう。
オリンパスL-10パノラマは、入門者・ファミリー向けの機種なので、最初は緑色のボタン「FULL AUTO」モードで撮影をはじめてください。

通常撮影(順光)においては、問題なく撮影できます。

なお、逆光時の人物撮影は、フラッシュをあげて発光するようにすれば、さらに綺麗に仕上がります。

【被写体を確認しやすい光学ファインダー】

現行のミラーレスカメラの電子ビューファインダー倍率に匹敵する見やすい光学ファインダーです。 (倍率0.72倍 50mm)

マニュアルフォーカスは省略されていますが、オートフォーカスが合致したか、撮影時に確認できるのでピンボケを抑えることができます。

また、偏光フィルター等の各種フィルター(52mm径)装着時も、ファインダーで状況・効果を確認することもできます。


【DXコードでフィルム感度を認識するので注意】

平成時代に登場した多くのフィルムカメラは、フィルムをカメラに装填すると、フィルムの容器に印字されているDXコードをカメラ側が認識することでISOを設定してくれます。

しかしながら、近年発売されたフィルムには、DXコードがついていないことがあります。

例えば、2021年に低価格で安定供給できる国産フィルムブランドして登場した「マリックスフィルム」。

カラーネガフィルムはISO100・400・800の3種類、モノクロフィルムはISO100・200・400の3種類、リバーサルフィルムはISO100の1種類までバラエティーに富んでいます。

これらのフィルムをそのままオリンパスLシリーズの一眼レフに装填すると、カメラがDXコードを読み取ることができず、「ISO25」の低感度フィルムで認識されます。

マリックスフィルムをご購入の際は、それぞれのISO感度に一致したDXコードシールを併せてお買い求めください

そして購入後、フィルム1本毎にDXコードシールの貼付を忘れないように気を付けてください。

なお、富士フイルム・コダック・イルフォード等のフィルムはDXコード付きのフィルムなので、そのまま装填して大丈夫です。


【最後に】

平成初期のフィルムカメラは、カメラ店・電気店で販売しているリチウム電池(CA2・CR123A・2CR5など)を必要とします。

カメラのナニワ・レモン社・タカチホカメラでは、テスト用のリチウム電池を用意していますので、店頭で十分に動作確認してからお買い求めいただくことができます。

ご不明な点・操作方法など、気軽にお尋ねくださいませ。


■撮影協力:ハチさん・タクさん・ソラさん・クリちゃん (許可を得て猫を撮影)
■使用フィルム:イルフォードXP-2・コダック GOLD200