皆様 こんにちは。ナニワグループの猫写真担当 見崎でございます。
カメラ店をよく立ち寄られるカメラファンの方ならお気づきでしょうが、富士フイルムの高級コンパクトカメラX100Vの新品が全国のカメラ店で品切れの状態が続いています。
メーカーより製品の供給が追い付かないため、受注停止になったのは2022年11月下旬。
受注再開の案内がないまま間もなく1年を迎えようとしています。
昭和レトロなフィルムカメラを思い起こす意匠・デザインは、他社では代替製品は存在せず、従来機種【X100】【X100S】【X100T】【X100F】の中古カメラが再評価されつつあります。
それでは、休日を利用して、動物写真家 岩合光昭氏の写真集【ねこの京都】の被写体となった猫たちを訪ね、ブログ用に用意しましたX100Tの猫写真を交えながら、X100シリーズの魅力についてご紹介してゆきましょう。
【フィルムカメラの意匠を意識したデジタルカメラ創成期について】
2000年代(平成10年代)のデジタルカメラ事情として、
■画素数増加(画質の向上)
■低価格化(市場の拡大)
■機能の差別化(高倍率・手振れ防止・人物認識AF・プロジェクター付きなど)
■既成概念に捕らわれないデザイン(カード型薄型ボディ・スイバル式液晶)
などのフィルムカメラで成しえなかった技術を投入した製品が中心を担っていました。
従来のフィルムカメラを強く意識したデジタルカメラと言えば、2004年発売 エプソンR-D1が有名です。
コシナのフィルムレンジファインダー 【Voigtlander BESSA R】をベースにした世界初のレンズ交換型デジタルレンジファインダーカメラであり、しかもライカカメラ社より先に製品化できたことに、カメラファンを大きく驚かせました。
また、単焦点のコンパクトデジタルカメラでフィルムカメラの意匠を意識した最初の機種は、リコーGR DIGITALです。
究極のスナップシューター【GR1v】の後継機として、デジタル化を望む意見は多く、2005年に登場しています。
その頃、富士フイルムのデジタルカメラは、ニコンのフィルム一眼レフF80をベースにした【FinePix S3 Pro】やスタイリッシュデザイン【FinePix Z1】、高感度に強い【FinePix F10】 など、「スーパーCCDハニカムTM IV HR」と富士フイルム独自の新開発画像処理システムを駆使したデジタル時代に相応しい機能を充実させたラインナップでした。
X100のような“写真機”を連想させる機種が後々出てくることは、まったく想像できませんでした。
【FinePix X100の登場】
デジタル一眼レフ【FinePix S5 Pro】を最後に、最高画質を極めた新製品が久しくなっていた2010年。
フォトキナにて、FinePix X100の概要についてはじめて明らかになりました。
この製品は、レトロデザインありきで出発した企画でなく、最高画質を極めるための分かりやすく素早い操作ができる「シャッターダイヤル」「絞りリング」「露出補正ダイヤル」を搭載、そして、見やすい光学ハイブリットファインダーのレイアウトを考慮すると、必然的に従来のカメラらしいデザインに近づいてゆきました。
そして、他社と差別化を明確にすべく、「良い写真を残してきた昭和時代のお父さんが愛用していた写真機」のように原点回帰したデザインが生まれることになりました。
メーカーの予想を超えて、中高年層の写真愛好家だけでなく、20~30代の女性からも支持が高く、現行品【X100V】まで継続するロングセラーシリーズへ成長します。
【唯一無二の存在 マルチファインダーの搭載】
2023年9月時点で、光学ファインダーを搭載しているデジタルコンパクトカメラはX100シリーズのみです。
X100シリーズには、フィルムカメラ時代から続く「光学ファインダー」に、LCD画像を重ねています。
光学ファインダーでの近距離撮影で生じる大きな視差(パララックス)を防ぐため、電子ビューファインダーに切り替えたり、光学ファインダーで撮影後、電子ビュー画像に切り替えて、瞬時にポストビューにできるなど、双方のファインダーの利点を活用できます。
また、すでにX100シリーズ愛用者様ならお気づきかもしれませんが、光学ファインダーと電子ビューファインダーのどちらでも透き通るように見えます。
見えやすさの鍵を握るのは、ハーフミラーの構造にあります。
1960年代のレンジファインダーカメラの天面軍艦カバーを分解するとハーフミラーの違いがわかりますが、入門機種(ミノルタ HI-MATIC・コニカC35など)はミラー式、上位機種(フジカ35SE・ヤシカLYNX-1000など)にはガラスプリズム式を採用しています。
ミラー式だと生産コストは下がりますが、ミラーの表面と裏面のそれぞれで反射して、ガラスプリズム式よりやや見えにくい場合があります。
尚、X100シリーズには、上質なガラスプリズムを搭載し、光学ファインダーと電子ビューファインダーでもすっきりした見えやすさを実現しています。
【初代から4代目X100Fまで共通のレンズ】
焦点距離23mm 開放絞りF/2.8というスペックはそのままですが、最新機種【X100V】には、一部のレンズに非球面レンズが採用されています。
初代から4代目までは、絞り値や被写体までの距離によっては、柔らかいベールに包まれた描写が特長でした。
筆者の猫撮影では、ふんわりした描写を活かせるよう、なるべく開放絞りで構図を考える
ようにしたものです。
フィルムカメラのように操ることで、描写の変化を楽しめる方には 【X100】【X100S】【X100T】【X100F】をオススメします。
【天面軍艦カバー・底面カバーは金属製】
X100シリーズを手にした瞬間、撮影者の満足感を高める要素のひとつに、金属ボディの採用にあります。
カバー表面には、特殊コーティングを施すことで、落ち着いた高級感を演出しています。
なお、シャッターダイヤル・絞りリング類にはアルミの削り出しを施すことで、さらなる質感向上に役立っています。
ちなみに、4代目【X100F】までの天面軍艦カバー/底面カバーにはマウグシウム合金を、現行機種【X100V】にはアルミニウム合金を採用。
5代目より材質変更しましたが、ブラスト加工とアルマイト加工により従来製品と変わらない金属本来の質感の実健と耐摩耗性を実現しています。
ブラスト加工・・・粒子状の無数の研磨材を投射し、被加工物に衝突させて、表面の粗化、研削等を行う表面加工
アルマイト処理・・・人工的にアルミニウム表面に酸化アルミニウム被膜を作る処理、それにより表面硬度が向上
【X100Vのライバルは、X-E4になるのか?】
【モデル】 ロクさん 1/75秒 f/3.2
歴代のX100シリーズで、店頭で見かけた比較検討機種は、他社製品でなく、自社製品の「X-E1」「X-E2」「X-E3」「X-E4」などのミラーレスカメラ・X-Eシリーズです。
冨士フイルムのJPEGの色再現力を好まれる方は、買い替え・買い増しでも、冨士フイルムを選択する傾向が強く感じます。
X100シリーズは、APS-C23mm f2.0の単焦点レンズ固定。カバーできる画角は限られています。
初めてのデジタルカメラとして、初心者でも失敗の少ない写真・不便ない撮影を求められる方は、目的に合わせた交換レンズを装着できるX-Eシリーズをオススメします。
ちなみに、筆者がX100Tを選んだ理由は、既に、ミラーレスカメラ「X-A1」「X-T10」を持っているので、コンパクトカメラを選びました。
それから、旧製品になるとフィルムシミュレーション「クラシッククローム」が未搭載など、冨士フイルムの色再現の選択肢に限りがあるので、気を付けましょう。
【最後に】
X100登場から10年以上経過しています。 歴代のX100シリーズものなかには、メーカーのアフターサービスが終了している機種もございます。
中古カメラで、X100シリーズをお探しの方は、専門知識の豊富なカメラのナニワ・レモン社・タカチホカメラの販売員までお尋ねください。
また遠方にお住まいの方でも便利なオンラインショップもございます。インターネットでもお問い合わせにもご対応できますので、併せてご利用くださいませ。
■撮影協力してくれた猫
ツキちゃん・トニーさん・ソラさん・マコさん・ロクさん