クラシックカメラ カメラのナニワ 梅田2号店

Icarex 35S TM PROとUltron 50mm F1.8と【フィルム作例】

いやはや、カメラ大好き人間にはそれぞれロマンがあると思います。

そのロマンを追い求めた結果満足はするものの写真が上手くなるわけではないんですねぇ~。

これはカメラ大好き人間に共通していることだと勝手に思っております。

アタクシもそんなロマンがありまして、それが今回のブログなんです。

Icarex 35S TM PRO + Ultron 50mm F1.8

この組み合わせを実現したいと思って4年、ようやくです。

たった4年ごときのことではございますがご覧ください。


【経緯】

ストーリーがいろいろありまして、ちぃと長いんで興味ない人は飛ばしてください。

このブログを書くきっかけは2019年に遡ります。

当時Plaubel makina67のブログを執筆しておりました。

その際に様々な資料に目を通すわけですが、その資料の背表紙にとてもかっこよろしいカメラを見つけました。

「いつかこのかっこよろしいカメラを手に入れたい」、との思いでいると某競売で発見。

沖縄での社員旅行中、会食後の二次会の中で競り勝ちました。

あとはレンズを手に入れるだけでしたが、その頃からUltronが高騰し始めました。

安い物を見つけてもBMマウントだったりM42マウントでも光学状態が悪く恵まれませんでした。

Ultronが入手できないまま時が経ち、久しぶりにIcarexを触ってみると故障しておりました。

故障がわかってから1年以上経過した2023年12月初旬、重い腰を上げ修理出しを決意。

2週間ほどで修理から返ってきました。しかしレンズはありません。

そこで入手できないなら借りればええやんということで弊社のブログ管理人中村編集長から半ば強引にお借りしました。

借りたUltronの絞りが粘っていた件

決してラノベのタイトルではございません。ノンフィクションのお話です。

仮にラノベにするにしてもただUltronの絞りが粘っているだけなので話の広げようがないです。

もし、ちゃんとタイトルをつけるなら、

編集長に借りたUltronがダメダメだったのでIfbagonを買ってみた件

これぐらいにはしておきたいですね。

さぁさぁ、借りた立場で文句言うのは気が引けますが、絞りが粘ってました。

レリーズ時に絞り環で設定した絞り値まで絞り込まれない。

レリーズ後、絞り開放に戻るはずが絶妙に絞られた状態になるなど、これは絞って撮影する際は大変困ることが予見されました。

ボディが絞り込み測光だからそうなるのではないかとツッコミが入るかもしれませんが、絞り込み測光でちゃんと動いていないのです。

ですので失敗を避けるため極力絞らずに撮影する必要があります。

半ば強引にジャイアンムーブメントをかましたことに対して絞り羽根が抵抗しているのかもしれません。

また、後ろから2群目の貼り合わせレンズの端っこがバルサム切れしております。

端っこが一部分的にバルサム切れしているので写りにはそこまで影響しないと思われます。


【Icarex 35について】

1966年にIcarex 35は発売されました。Icarex 35はファインダーやスクリーンが交換できるタイプです。

マウントはイカレックスBMマウントでスピゴット式の特殊なマウントです。キヤノンのFDやマミヤのRZなどのマウントと似ています。

その後1969年に今回ご紹介するIcarex 35S TMおよびIcarex 35 TMが登場。

ちなみに35と35Sの違いはファインダー交換できるかどうかの違いです。

35は先ほど記載した通りファインダーの交換、スクリーンの交換が可能です。

35Sはファインダーの交換ができません。その代わり露出計を内蔵しました。

35で露出計を使用する場合は専用のCdsメータープリズムファインダーに交換する必要があります。

個人的な感覚ですがニコンFとニコマートみたいな違いだと思っています。

そして、TM(Thread Mount)と名のついたIcarexはM42マウントです。

つまりはイカレックスBMマウントからM42マウントに変更した機種が新発売されたことになります。

同じ機能性で二種類のマウントから選べるシステムは現代ではなかなか実現しにくいすごいことです。

最終的にはIcarex35Sの後SL706というM42マウントの実質的な後継機が発売されツアイスイコンが一般向けカメラ事業から撤退することになりました。

その後はVSL-1に血筋が受け継がれていきました。


【外観】

かっこよいキャメラなので撮ってみました。

TMのロゴですが、よく見れば傾いていることがわかります。

元々このように雑な状態なのか、紆余曲折を経てこのようになったかは不明です。

巻き上げレバー側のボディフロントにZEISS IKONのロゴがあります。

物によってはこの上のZEISSの部分にZEISS IKON、下のIKONの部分にVOIGHTLANDERと記されたロゴもあります。

巻き戻しレバー側のボディフロント部分にはPROと彫られています。

PROと彫られていない物も存在します。

この刻印はあってもなくても機能に変わりはありません。

ですので主張したいかしたくないか個人の好みに委ねられるところ。

巻き上げレバー周辺の写真です。

巻き上げレバーがかなり短く歪な形のブーメランのようです。

シャッタースピードダイヤルはB(バルブ)、1/2~1/1000秒、シンクロマークが記されています。B、1/2~1/15秒は赤色、1/30~1/1000秒は白色、シンクロは黄色です。

巻き上げレバーは巻き戻しレバーのように塗装が剥げても地金が見えません。

レリーズボタンとISO感度表示窓の写真です。

レリーズボタンの下のギアはISO感度設定ダイヤルです。

このダイヤルを回すとISO感度表示窓内の数字が動きます。

ISO感度設定ダイヤルおよびシャッタースピードダイヤルのこのゼブラっぽさはフレクトゴン 35mm F2.8のピントリングや20mm F4などのゼブラ柄JENAレンズを彷彿とさせます。

筆者個人の感覚かもしれませんが、このカメラの利点はストラップでぶら下げているときに発生するミスシャッターが発生しにくいことだと感じております。理由は以下の3点です。

  • レリーズボタンが巻き上げ系統と同軸に無いこと
  • レリーズボタンの位置がボディフロント側にあること
  • やや深目にレリーズボタンを押さなければシャッターが切れないこと


逆に言うと、ライカをよく使っているとミスシャッターが1ロールに数カットあります。それが発生しないことが新鮮なだけかもしれません。

巻き戻しレバーの写真です。巻き戻しレバーは真鍮製なのか地金が見えてきています。

下のダイヤルはおそらくメモ。何のフィルムを入れたかを設定するためのダイヤルです。

ダイヤルの右側にあるプラスチックっぽいものは露出計の指針を読み取る窓とアイピースシャッターレバーです。

露出計はファインダー内で読み取ることができるためアイピースシャッターをしない限り使うことはないでしょう。

レンズ先端周囲に細かな凹凸、ピントリングにはローレットが刻まれています。

最短撮影距離0.45mまでピントリングを回しました。

一眼レフ用レンズの鏡胴から生える沈胴エルマーのような出で立ちに見えてきました。

絞りF/4.0の状態で撮影。

丸みを帯びた五角形です。

絞りF/16の状態で撮影。

角ばった五角形になりました。

正常に動いているんでしょうけど、なんだか複雑そうに絡まっているように見えます。

レンズ先端左側のバヨネット部分は購入時からガタガタになっていたそうです。

レンズ先端がバヨネット式のせいでねじ切りがされている普通のフィルターは装着することができません。

いくら凹レンズとてフィルターぐらいは付けたいもんです。


【作例】

※カメラのナニワ梅田2号店にて現像及びデータ化しました。
※データ化したそのままのデータを掲載しております。

FUJICOLOR 100

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

なんでも売っている黄色お店のイルミネーションを撮影しました。

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

先ほどの写真のピント位置を最短撮影距離0.45mにしました。

玉ボケがレモン状の形になる口径食がわかりやすいです。

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

まるで仕事納めを具現化したような宴看板を撮影しました。

レンズの描写よりも看板の方が騒がしいです。

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

先ほどと同様にピント位置を最短撮影距離に変えて撮影。

花火かな?飽和しちゃってます。

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

信号待ちのハイライターたちによる照射を受けリング状の虹色ゴーストが出現しました。

F/1.8 SS1/30秒 ISO100

日本製でないカメラのファインダー視度は大体合わないことが多いのでピント合わせに苦労します。この写真はまだちゃんと合ったほうです。

F/8.0 SS1/60秒 ISO100

ちょっとしたテトリス気分を味わえた写真。

絞ったらそれなりにちゃんと写る印象。

Cinestill 50D

F/4.0 SS1/500秒 ISO50

F/4.0で撮影しました。空気感といいこの絶妙な立体感がめちゃくちゃ良いです。

F/8.0 SS1/500秒 ISO50

フード無しの逆光でF/8.0まで絞って撮影。フレアもゴーストもしっかりと出ます。

オールドレンズゆえ逆光はしっかりと弱いです。

F/1.8 SS1/1000秒 ISO50

絞り開放F/1.8で撮影。このレンズよくボケると言われておりますが、それが良くわかる一枚だと思いました。奥行きがあるとボケ量が凄いです。

F/8.0 SS1/125秒 ISO50

F/8.0まで絞り、無限遠で撮影。よう写っとります。逆光だけ避ければ結構使えるのではないでしょうか?

Cinestill 800T

F/1.8 SS1/30秒 ISO800

写真中央にリング状のゴーストが出現。タクマーほどハッキリ出ているわけではないですが、一応似たようにゴーストが出る模様。

F/1.8 SS1/30秒 ISO800

冬になると阪急百貨店横で始まる豪華絢爛なやつ。

Cinestill 800Tのおかげか不死鳥のように写りました。

F/1.8 SS1/30秒 ISO800

先程不死鳥っぽく写ったやつは色が変わルンです。

それを真下から撮影しました。

怪しいクリスタルが渦巻いているようになりました。

F/1.8 SS1/30秒 ISO800

神戸元町中華街でのスナップ。

歩く人の背中にゴーストが被っています。

F/2.8 SS1/30秒 ISO800

わずかに絞ってF/2.8で真冬の路上でキンキンに冷えた飲料水を撮影。

光が水と氷と缶に反射し、キラキラしていて非常に綺麗です。

F/1.8 SS1/30秒 ISO800

イルミネーション的なオブジェクトを絞り開放最短撮影距離で撮影。THE口径食な光源ボケが写真の端に見られます。


いかがでしたしょうか。

自己満足と言われればその通りとしか言いようがない今回のブログ。

ブラックペイントで艶々していて高級そうに見えるけど、細部を見れば安っぽいところもあります。

その当時はプロ機のコンタレックスが同時に販売されていたから幾分仕方がないです。Ultronもすべてが金属製で無いがゆえに絞り環は安っぽく感じます。

でもそういうところもひっくるめてかっこよろしいんですよ。

このセットを防湿庫の先頭に置いているだけでテンション上がりますよ。

ほんで、なんやかんや維持費かかりますね。アタクシはボディを修理してお金を払いましたし、編集長のUltronは絞りが粘っているのでそのうち修理に出さないとアカンでしょうし。

カメラをようけ持ってて久々に触ってみたら調子悪いのってあるあるなんでしょうね。

そういう意味ではカメラの台数を絞って全てをちゃんと使っていけるようにできれば理想的ですね。レンズも然り。

所持数減らしたいけどカメラ欲しいこの矛盾は永遠の課題ですな。

悩んでいるときが一番楽しい言いますさかい、悩みましょ。

ほなまた。

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