こんにちは! 心斎橋本店のたつみです。
今年は例年よりも春の訪れが早いですね。
周りでは例のアレであちらこちからクシャミが聞こえてきますし(笑)
花々が色めき、被写体にも困らない季節を迎えます。
お気に入りのカメラを携えて出かけましょう(^^)
そして毎回懐かしのカメラを紹介する当コラム
『Theマイナー機種列伝』
(今回からTheを付けてみましたが特に意味はありません (^^;)
第3回目のマイナーさんは「キヤノン T70」の巻です。
【時代の転換点の中で。。】
今回取り上げるT70が発売されたのは今から40年前の1984年。
時代はまさにいろいろな転換点の中にありました。実は世相も現在と非常に良く似ている事ばかり。。
・日経平均株価が初の1万円突破!
・新紙幣の登場!
・長く続いた第2次オイルショックからの脱却!
ここから日本は急激な成長を見せ後にあの『バブル景気』がやって来る、そんな華やかな時代の入り口でした。
その頃のキヤノンと言えば今もカメラ史に燦然と輝くAE-1を始めとする「Aシリーズ」で業界トップの位置を確立し、カメラ小僧達からは大きな支持を得ていました。
Aシリーズの成功はキヤノンにとっても大きな意味がありました。
それまでカメラは「大きく、重く、扱いにくい」代物でありました。それを徹底した電子化を図る事で「小型、軽量、簡単」を実現させます。
時代のニーズを上手く取り込みそれを具現化し実現させた先進性があったからと言っても良いと思います。
【時代の流れに乗りながらも。。】
一躍トップランナーの地位を得たキヤノン。
先進性やニーズを掴む事を最も得意としてきただけに様々な思いが社内で交錯していたのでしょう(あくまでも想像です(笑))
そうした流れの中でこれまた大ヒットしたAE-1プログラムを境として苦悩する姿が浮き彫りとなります(これも想像です(苦笑))
それまでAシリーズで信条としていたシャッタースピード優先AEを、次モデル以降は絞り優先AEを採用。。
おそらくはシェア拡大と市場ニーズに合わせての戦略ではあったとは言え、この頃から急速にAシリーズの勢いと魅力が陰りを見せます。
「何とかしなければ。。(-_-;)」
と思ったかどうかは分かりませんが、「A」に代わる新シリーズの開発がスタートします。
【新シリーズ「T」が誕生。。】
そして迎えた1983年に「T50(オートマン)」を発売。
それまでカメラの外装と言えばいかにも金属の塊風であったのを、エンジニアプラスチックを採用し大幅な軽量化とコストダウンを実現します。
機能はプログラムAEのみと超割り切り!(^^;
従来の一眼レフの在り方を見事に?覆すその内容に一瞬話題になります(笑)
「マジか!?」
この突拍子のない割り切りが特にキヤノンファンの不安を煽ります(ファンが不安て。。)
簡単過ぎて面白味の欠けるヤツとなってしまったオートマン(苦笑)
焦ったのはファンだけでなくキヤノンもでしょう(たぶんですけど。。)
どうするキヤノンてか開発陣(いつものお約束)
ならばと翌84年4月にシリーズ2号機となる「T70(インテリジェントシューター)」を発売するのです。
【シンプルかつ機能あふれる新型機】
新シリーズの期待を背をって登場したキヤノン T70
どのようなカメラだったのでしょうか
先ずは基本スペックから。。
発売年月:1984年 4月
・型式 電子自動露出制御式35ミリ一眼レフ
・マウント FDマウント
・シャッター B・2-1/2000
・電源 :1.5V単三2個使用
・寸法 幅151mm 高89mm 奥行49mm
・質量 580g(電池込み)
・価格 69,000円
基本スペックは当時のごくごく平均点なカメラ(1/4000が出始めていた頃に1/1000は見劣りしますけども)
しかも、AE-1など従来の機種から幅が10ミリデカくなっています。
これには訳があって、オートマンで初採用された自動巻き上げに加えてこのT70では自動巻き戻しも採用!(決して早くないワインダーにけたたましいモーター音はご愛敬。。(^^;)
これによって巻き上げレバーと巻き戻しノブが無くなって、ペンタ部がスッキリとしスタイリッシュなデザインとなります。
新機能はそれだけではありません!
・プログラムAEは標準・ワイド・テレの3種類採用!
・測光方式を中央部重点・中央部分測光の2つ搭載!
・別売コマンドバックにより6種類のデーター写込&3種のタイマーコントロール
を実現
それらをボタンとレバーで操作し全て液晶パネルで表示する先進性!
そしてカタログやCMなど広報活動にはあの『AKIRA』で話題となった大友克洋氏とタッグを組み大々なプロモーションを実施!
話題にならない訳がない!(超お約束!(笑))
大友氏が手掛けたカタログは話題となり、T70の知名度も販売もグングン上昇となるはずが翌年のアレに木っ端みじんに粉砕されます。。
「αショック!!」
ことごとくこの時期に登場したカメラはこのおかげで端っこに追いやられます。。
スタートダッシュを決めたように思えたT70も日陰の道を進むことになります
【最後に。。】
時代に翻弄されならがも新時代を切り開く為に登場したT70。。
いろいろな試みを手掛けた事で当時は評価が真っ二つに分かれてしまった機種ではありますが、その先進的なデザインでグッドデザイン賞を獲得。
さらにキヤノンとしてはヨーロピアン・カメラ・オブ・ザ・イヤーを初受賞し、社史にその名をきざんでいます。
またその後に続くEOSシリーズの快進撃の基となったカメラとしてもその存在は重要なものであったと思います。。
(了)