SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art 使用レビュー【本当に文句の付けようがないレンズ】

こんにちは~。編集長 中村です。

さぁいよいよこいつについて書くべき時が来たか……。
SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art!

少し前の3月末に発表された新製品ですが、いつものようにSIGMAさんからデモ機をお借りいたしました。

またしても長い期間使わせていただきまして、非常にすばらしいレンズでしたので使用感をこちらにまとめていきたいと思います!

■目次
【50mm F1.2としては最小最軽量!】
【まずは開放F1.2の描写を味わう】
【絞り値を変えてボケ味をチェック(F1.2~F5.6)】
【逆光耐性良し フリンジも少なく優秀】
【遠景も近接撮影も死角なし】
【ポートレート・人物撮影にもGood!】
【ちょっとだけFE 50mm F1.2 GMと描写比較】
【文句の付け所のない傑作レンズ】

【50mm F1.2としては最小最軽量!】

さて、まずは簡単なスペック解説から。今回はSONY Eマウント用をお借りしましたのでこちら準拠で解説してまいります。

まず何と言っても特長はクラス最軽量の重量740gを実現したところ!

50mm F1.2というスペックのレンズは各社ともに妥協のない最高級の製品を送り出していますが、そのぶん重量がかさんでしまっているものが多いです。

例えばNikonのNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sは約1090g、CanonのRF50mm F1.2 L USMは950gとなかなかの重量級となっていますね……。

小型軽量化路線では他社よりも一歩先んじているSONYのFE 50mm F1.2 GMは778gと大幅な軽量化に成功しています。

しかし、そのSONYよりも軽い740gを実現しているというのだから驚くべきこと……!

何だったら同じSIGMAの50mm F1.4 DG DN | Artが660gですので、50mm F1.2と50mm F1.4があまり変わらない重さという謎の事態に……。
今回の劇的な小型軽量化は、1枚1枚のガラスを極限まで薄くすることで実現しているとのこと。

前玉側から中を覗くと確かに薄いレンズが何枚も連なっているのが分かります。

また、フォーカス駆動のためのリニアモーターHLA(High-response Linear Actuator)も従来型と比べて片側で約25%の薄型化・重量比約44%の軽量化に成功した新方式のものを搭載。

この新方式HLAによって前後のフォーカス群を別々に動かすデュアルHLA方式を採用することで、コンパクト化とAFの高速化を両立したとのこと!

す……すごい……。
他のArtライン単焦点レンズに準拠してファンクションボタン・AF/MF切り替えスイッチ・絞りクリッククリックスイッチなども一通り備えております。

この写真では見えていないですが、絞りリングロックスイッチもついていますので「A」に設定しているときに不用意に絞り値が変わってしまうこともありません。
今回は私物のSONY ZV-E1に装着してあれこれ撮ってきました。

それでは実写作例とともに描写性能を解説していきましょう!

【まずは開放F1.2の描写を味わう】

F値:1.2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード

それでは最初にいちばん美味しいところ、開放F1.2の描写からお見せしていきましょう。

キリっとした端正な写りで立体感もすばらしい……。そして被写界深度の浅さよ……。

あらためてF1.2開放から滲みやぼやけのないシャープな描写が出てくることにも驚きます。
F値:1.2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード

若干ながら線が細めで柔らかい感じの写りですね。花びらのみずみずしくて柔らかい質感がしっかり伝わってきます。

前にかなり長いこと使わせていただいた50mm F1.4とは写りの性格が全然違うように感じます。
F値:1.2 SS:1/1600 ISO:80 CL:スタンダード

ハイライト・シャドウのトーンはどちらも良好ですが、ハイライト側が少し柔らかく拡散するような写りのため、パキパキすぎない落ち着いた描写となっています。

このあたりの性格も50mm F1.4とはかなり違った写りですね……。
F値:1.2 SS:1/2000 ISO:80 CL:スタンダード

そして何よりも驚くのは後ボケの滑らかさ

後の葉っぱや枝が完全にトロットロになって騒がしさがまったくありません。

各社50mm F1.2はボケ味の美しさを追求したレンズが揃っていますが、それらと比較してもまったく見劣りしない素晴らしい仕上がりです。
F値:1.2 SS:1/2500 ISO:2000 PP:S-Cinetone

いやマジこんなに滑らかなボケある???

ボケの繋がりも自然で、合焦部からスーッと拡散していく感じが素晴らしいですね。
F値:1.2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード

つづいて遠景を絞り開放で撮ってみます。

画面四隅のうち下側は若干ながら像の流れがありますが、F1.2で遠景を撮ってこの程度に収まっているのは非常に優秀ですね。

周辺減光も多少ありますが相応といったところ。

50mm F1.4はあまりにも豪快な光量落ちが発生していましたが、より明るい50mm F1.2のほうが周辺減光が控えめなのはどういうことなんだ……。

【絞り値を変えてボケ味をチェック(F1.2~F5.6)】

↑F1.2
↑F1.6
↑F2
↑F2.8 
↑F4
↑F5.6

段階的に絞り値を変えて撮影してみた画像がこちら。

絞っても描写の性格はあまり変わらない印象です。一貫して線の細い柔らかい描写で、被写界深度だけが変わっていくような感じ。

多少絞っても柔らかめの雰囲気は残っていますので、ピントの都合上絞り込まなければいけない場合でも画の雰囲気が変わらないのは使いやすいですね。


【逆光耐性良し フリンジも少なく優秀】

F値:2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード

さて、続きましては描写性能をさらに深掘りしていきましょう。

まずは逆光耐性ですが、太陽をおもいっきりフレームの真ん中に入れてもゴースト・フレアは特に発生しません。

シビアな光線状況下でも十分に使える性能となっています。
F値:1.2 SS:1/2000 ISO:80 CL:スタンダード

ただし、強い光源を画面端付近に配置するとまれに強めのゴーストが出ることがあります。

この時はフードを装着していなかったのでそのせいでもあるでしょうが……。

フード無しでも大抵のシーンでゴースト・フレアは気にならないとは思いますが、たまに苦手な角度があるようなのでご注意ください。
F値:1.2 SS:1/1600 ISO:100 PP:S-Cinetone

続いて大口径レンズだと気になるパープルフリンジの発生具合をチェック。

こういう輝度差があるシーンだと枝葉と空の境界線に紫色の色づきが発生することがありますが、このレンズしっかり抑制されているようです。

これは非常に優秀!
F値:1.2 SS:1/800 ISO:80 CL:スタンダード

大きめの画面で見るとごくわずかに色づきがある箇所もありますが、拡大しなければほぼ分からないレベルです。

いやはやお見事!

【遠景も近接撮影も死角なし】

F値:5.6 SS:1/250 ISO:80 CL:スタンダード

色々なシーンで撮影してみた作例をお見せしていきます。

F5.6で遠景を撮影してみました。絞ってもシャープネス・コントラストが高くなりすぎず、絶妙に優しい雰囲気になってくれるのがたまらない……。
F値:2.8 SS:1/1000 ISO:80 CL:スタンダード

F2.8でネモフィラを撮影してみました。さすがにここまで近くで撮影する時は多少絞って被写界深度を深くしておきたいところ。

ちなみにこの50mm F1.2 DG DN | Artの最短撮影距離は40cm

最大撮影倍率は1:6.2と特別高いわけではないのですが、一般的な50mmレンズよりも最短撮影距離がほんの少し短いのでその分「寄れる」のは大きいです。

これは本当にありがたいところ!
F値:2.8 SS:1/1000 ISO:80 CL:スタンダード

コントラストが高すぎない写りで後ボケも滑らかなので、花を撮るのにもかなり向いていると思います。

人工物を撮るよりは自然物を撮る時のほうがしっくりくるような感じ?
F値:2.8 SS:1/500 ISO:80 CL:スタンダード
F値:2.8 SS:1/1000 ISO:80 CL:スタンダード

13枚羽根を採用しているのでF2.8 で撮っても玉ボケは綺麗なまん丸です。

今回は季節的に撮れませんでしたが、イルミネーション撮影などでも良さそうですね。


【ポートレート・人物撮影にもGood!】

F値:1.2 SS:1/500 ISO:2000 PP:S-Cinetone

さて、50mm F1.2というスペックだとポートレート撮影に使われる方も多いのではないかと思います。

このあたりのサンプルもお見せしていきましょう。

実家に帰った時に兄のところの子どもたちを撮影してきましたが、ハイライト側の柔らかい拡散ぐあいが非常に美しいですね……。

シャープなのにパキパキすぎない写りで、人の肌を写すのにちょうどいい感じ。
F値:1.2 SS:1/2500 ISO:125 PP:S-Cinetone

デュアルHLAによる非常に素早いAF駆動によって、走り回る甥っ子も容易に撮影できました。

従来までのHLA搭載型レンズも何本か使わせていただいて際にそのAF駆動の速さは実感していましたが……。

デュアルHLA方式になってより効率的なフォーカシングが可能になったようで、体感的にはさらにAF駆動がスピーディーになっているように思います。

また、ブリージング(フォーカス移動に伴う画角変動)もびっくりするぐらい抑えられていますので、動画撮影にもばっちり対応できます!
F値:1.2 SS:1/3200 ISO:100 PP:S-Cinetone
F値:1.2 SS:1/250 ISO:100 PP:S-Cinetone

我が家の専属モデル氏。肌はもちろんのこと、髪の質感や艶も丁寧に描写してくれます。

50mmはポートレートに使うにはちょっと広めの画角にはなりますが、F1.2の大きいボケを活かして画面を省略することも可能です。

手などのパーツを切り取って撮影するのもいい感じですね!

【ちょっとだけFE 50mm F1.2 GMと描写比較】

SONY Eマウントユーザーの方々からすると気になるのは、SONY純正FE 50mm F1.2 GMとどれくらい写りに差があるのか?というところでしょう。

あまり入念に調べる時間が取れなかったのでほんの数カットだけ比較画像を撮っております。

こちらも参考にしていただければと。
↑SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art
F値:1.2 SS:1/4000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光
↑FE 50mm F1.2 GM
F値:1.2 SS:1/4000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光

露出・ホワイトバランスを揃えて同じ位置で撮影してみましたが、かなりはっきりと色味に違いが出ていることに驚きます。

白っぽい石材の部分を見ていただけると分かりますが、SIGMAのほうが暖色寄り・SONYのほうが寒色寄りに写っていますね。

この場合、ニュートラルな発色に近いのはSONYのほうかもしれません。

しかし、SONYのほうは後ボケがわずかに芯があって少し騒がしく感じなくもないです(WEB掲載用の小さい画像なので分かりにくいですが……)
↑SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art
F値:1.2 SS:1/5000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光
↑FE 50mm F1.2 GM
F値:1.2 SS:1/5000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光

続いて寄りのカットでの比較。

この場合だと暖色に寄っているSIGMAのほうが色乗りが良く見えます。

画面上のほうは後ボケになっていますが、やはりSONYのほうはちょっと硬めで二線ボケの傾向がありますね。
↑SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art
F値:1.2 SS:1/6400 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光
↑FE 50mm F1.2 GM
F値:1.2 SS:1/6400 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光

どちらも遠景を開放F1.2で撮っています。

色味の違いはやはり影響してきますね。今回は青っぽい発色のSONYのほうがわずかにヌケが良いように感じます。

画面下の周辺部画質はどちらもちょっとざわっとしていますね。
↑SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art
F値:1.2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光
↑FE 50mm F1.2 GM
F値:1.2 SS:1/8000 ISO:80 CL:スタンダード WB:太陽光

このカットに至ってはもう違いが本当に分からんです……。

正直なところ、どちらも「性能」という観点では優劣は無いという認識で良いと思います。

ただし、詳しく見てみると「発色傾向やボケ味はちょっとだけ違う」ということはお分かりいただけたかと。

【文句の付け所のない傑作レンズ】

という感じに今回もネットリと実写検証させていただきましたが、誇張抜きで文句の付け所がないレンズだと思います。

F1.2の大口径レンズの中では現状では最小・最軽量、描写面での欠点なし。

AFは速くてブリージングもないので動画用にも使えるという、実に素晴らしい製品ですね!
シャープながらも程よく柔らかい写り、滑らかでとろけるようなボケ味によって大口径標準レンズを使う楽しみを存分に味わえます。

このクラスのレンズを検討される方はもちろんレンズの「味」にはこだわりがあるかと思いますが……。

そこにきっちり応えていこうとするSIGMAさんの並々ならぬ努力を感じます……!
ちなみに最短撮影距離が40cmとちょっとだけ寄れるところも個人的には嬉しいポイント。

標準レンズ50mmは最短撮影距離が45cmのものが多く、絶妙にテーブルフォトとか撮りにくいんですよね……。

たった5cmですが、ワーキングディスタンスが取れないシーンでの使いやすさはこれでかなり変わります。
製品価格はなかなか「お財布に優しい」とは言い難い額ですが……。きちんと価格に見合う性能となっているのは間違いありません。

ぜひこの素晴らしさを実際にご自分の目で確かめていただければと……!!
【新製品 シグマ 50mmF1.2 DG DN】貸出し体験会2024 in 京都 会場レポート

ちなみにこないだ亀田と2人でお邪魔したイベントのように、最近はSIGMAさんのほうで機材貸し出し会も頻繁に開催されています。

「まずは一度試してみたい……」という方からするとこれはとても有難いことですね!



こちらのSIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art、もちろんナニワグループオンラインでもお取り扱いございます。

ぜひともご検討ください~!!

それでは今回もめちゃ長引きましたが最後までお読みいただきましてありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう~!!

【おまけ】

以前、SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artをお借りして製品レビューを書いたとき、「絶対にお金ためてこのレンズ買うぞ!」と言ったのですが……。

この50mm F1.2 DG DN | Artも然り、最近SIGMAさんが魅力的な製品を連発してくるのでどれを買ったらいいのかもう分からなくなりもうした。

次は28-45mm F1.8 DG DN | Artをお借りする予定ですのでますます迷います。

わたしは一体どうしたらいいのでしょうか???