撮影テクニック カメラのナニワ 神戸元町店

超望遠レンズの思い出【過去写真とともに使い方を解説】

こんにちは。神戸元町店の清水です。

最近のミラーレスカメラ用レンズの小型軽量化は目覚ましく、焦点距離の長い望遠レンズでも非常にコンパクトで手持ち撮影できるものが多くなってきました。

1980年代までのマニュアルフォーカス一眼レフの時代では買いやすい望遠レンズは135ミリ、長くても200ミリが一般的で、ミラーレンズ(レフレックスレンズ)をのぞくと300ミリ以上は特別な画角でした。

90年代オートフォーカス一眼レフの時代に入るとカメラと一緒にWズームレンズのセットが組まれ、望遠ズームは300ミリ画角が広まっていきました。

しかし400ミリ以上のレンズはその大きさ、重さ、価格面でもまだ特殊な存在でした。500ミリクラスのズームレンズが出現するまでにはここからさらに時間を要しました。

今回は、超望遠レンズが希少だった時代に私が撮影した写真をお見せしながら、その特徴について解説してまいります。



【超望遠レンズの特徴】

それでは「超望遠」レンズで撮影するとどういう写りになるのか、作例とともにご説明して参りましょう。

使用機材 キヤノン EOS7D mark2
      EF70-200/4L IS(320ミリ相当)
ライカ  アポテリートR400/4 モジュールシステム
      アポテレコンバーターR1.4X(896ミリ相当)
      (マウントアダプター、一脚使用)
画角は35ミリ換算です。


○圧縮効果

320ミリ相当
896ミリ相当
撮影地:JR元町 2021年6月

レンズの焦点距離が長くなると、被写体と背景の距離感が「圧縮」されて近く見える圧縮効果というものが生まれます。

300ミリでも遠近感による背景の建物の存在感は出ていますが、896ミリになりますと列車の先頭と後部の高さが近くなり被写体の存在感が増しています。
896ミリ相当
撮影地:JR西宮 2021年6月

この写真では電車の先頭と後部がほぼ同じ高さで坂の様子が強調されています。

○角度をつけた撮影
撮影地全景

まずはヒキで撮ったカットから。この写真の左端付近を超望遠レンズで撮影すると……。
320ミリ相当
896ミリ相当

先の圧縮感でも触れましたが、896ミリの列車後部との遠近感がなくなり、角度を上から眺めると後部が先頭より高い位置にあるように見えます。

撮影地:元町(花隈公園) 2017年11月


○望遠撮影の注意点

望遠になるほど画角が狭くなり、カメラを構えているときからファインダー内での手のふるえが目立つようになります。

写真にもそのふるえが手ブレとして写しこまれやすくなります。昔から「手ブレ限界速度」という言葉ががあり「1/レンズの焦点距離」秒と言われています。

50ミリレンズなら1/50秒、100ミリなら1/100秒となります。

上記の写真であれば320ミリ相当では1/500、896ミリでは1/1000であれば安心と思いますが、被写体が動いているものであれば、手ブレに加えて被写体自体の動きによる被写体ブレにも注意が必要です。

特に昨今の高画素デジタルカメラで撮影した写真はフィルム時代よりもセンサーが敏感な分 許容範囲が狭く被写体ブレが目立ちやすくなっていますのでご注意ください。

【作例】

ここからは今から20年以上前に撮影しました、当時一般的ではなかった400ミリ以上の画角の写真について先ほど記しました超望遠レンズの特性について見ていきたいと思います。

使用機材 キヤノン EOS D60
ライカ  アポテリートR400/4 モジュールシステム(560ミリ相当)
      アポテレコンバーターR1.4X(896ミリ相当)
      (マウントアダプター、一脚使用)
ハッセルブラッド CFi250/5.6 スーパーアクロマート(400ミリ相当)
      (マウントアダプター、一脚使用)
画角は35ミリ換算です。


1 西宮市の甲山展望台より大阪梅田
2002年12月 560ミリ相当

距離にして約20キロの街並みが圧縮された景色です。真ん中の日の当たっている建物は梅田スカイビル。

その左に影になっている白い建物が阪急グランドビルです。今では高層ビルが林立していますが当時はまだ高いビルは多くはありませんでした。


2 同地点よりその下を走る新幹線
2002年12月 560ミリ相当 

カメラを下げて角度をつけた分、背景の街並みがせり上がっています。


3 大阪梅田・阪急グランドビル32階より夕陽 真ん中の吊り橋は明石大橋
2004年10月 560ミリ相当

大阪梅田から明石大橋までは約40キロの距離があります。空気が澄む秋は超望遠シーズン。

太陽や月はレンズの焦点距離の100分の1の大きさで写ります。写真では約5.6ミリの大きさになります。

作例写真の長辺は36ミリになるので太陽が横に6つ並ぶ計算になります。

そして太陽は一日一個分日の出、日の入りの位置を移動します。この3、4日後ぐらいがクライマックスだったかもしれません。

ここ通称阪急32番街は大阪市内の景色を一望できる展望名所でしたが今では高層建築が増え、この景色も他の建物にさえぎられて見れなくなりました。


4 同じ阪急グランドビル32階よりJR大阪の隣の駅・福島にあったプラザホテルとABC放送のテレビアンテナ。
2004年10月 400ミリ相当

ABC放送局は移設し、今はこの建造物はどちらもありません。

バックの鉄橋を阪神電車が渡っていきます。ここから梅田までまだ約5分弱かかります。32番街より高い位置にある新展望名所・梅田スカイビルはこの写真の右手にあります。


5 スカイビルの展望台からABCのテレビアンテナのてっぺんを。背景は大阪港。
2002年12月 560ミリ相当

空気が澄まないと遠くにあるものを引き寄せる超望遠レンズは出番がないように思えますが、このレンズの特性である圧縮効果を利用すれば別の使い方もできます。


6 5月早朝の明石大橋。淡路島の展望台より本州明石付近
2003年5月 560ミリ相当

絞り込んで背景の深度を稼ぐため三脚使用

朝、日の出前の朝もやが立ちこめる時間、その空気を圧縮しました。湿気が多くなりつつある季節で対岸はかすんで見えます。


7 作例6より前の時間、明石大橋のふもとより橋のアップ
2003年 560ミリ相当

 こちらも三脚使用。同じく朝もやの空気を圧縮しました。吊り橋の構造もわかります。

8 陽炎
2003年8月 896ミリ相当 撮影地:須磨-塩屋

夏、目線を地面に近づけて地表に熱せられた空気が束になってゆらめいている様子を。
ここも今では策が高いところまで遮り、このアングルも得られなくなりました。


9 蓮と噴水
2003年8月 400ミリ相当   撮影地:夙川公園(西宮)

角度をつけて対岸をせりあがらせています。

これらの作例ではほぼ一脚もしくは三脚を使用しております。特に400ミリを超えるレンズは大きく重たくなりカメラを支えるのも一苦労です。

しかし最近になって発売されたミラーレス一眼レフ用の超望遠レンズは小型軽量化され手振れ補正機構も搭載されて使いやすくなりました。行動範囲も広がります。

身近になりつつある特殊な画角。狭い画角の中に広がる新しい光景。

是非お試しください。

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