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Panasonic LUMIX S9 製品レビュー【「普段使い」にバッチリなカメラ】

こんにちは~。編集長 中村です。

今回はX(Twitter)にも投稿したこちらのカメラのご紹介です。

噂のフルサイズコンパクトミラーレス・LUMIX S9

クラシックカメラ風のお洒落なデザインに最新の機能を盛り込んだいい感じのやつです。

こちらのデモ機をお借りしていろいろと使ってみました。

新アプリ・LUMIX Labの使用感等も踏まえながらこちらのカメラの魅力をお伝えしてまいります~。

 

【まずは基本スペックを解説】

それではざっくりスペック解説から。

イメージセンサーの有効画素数は約2,420万画素であり、2023年2月に発売されたLUMIX S5IIと同等になっています。

もちろん、S5IIより採用された像面位相差AFをこのLUMIX S9も搭載!

S5II・S5IIXにファームアップで入った被写体認識AFも搭載されており、従来までの人物認識・動物認識に加えて「車認識」「バイク認識」「動物瞳認識」が追加されています。
今回はLUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.がセットとなった高倍率ズームキットをお借りしています。

高倍率ズームレンズとしては破格のコンパクトさを誇る28-200でも「レンズのほうがデカい」ように見える不思議……。

※なお、LUMIX S9発売キャンペーンで無料プレゼント(太っ腹!)されたパンケーキレンズ・LUMIX S 26mm F8もお借りいたしましたが、こちらのレンズは京都店 亀田にレビューを委ねております(乞うご期待!!)
S9はビューファインダー(EVF)を省いたことで重量約486gと極めて小型軽量なカメラに仕上がっています。

このコンパクトさで5軸5段のボディ内手ブレ補正を搭載しているというのはなかなか強烈なスペックですね。

グリップ部も削ぎ落されてM型ライカ風のフラットデザインとなっていますが、右手の親指が引っかかるようにサムレスト的な出っ張りが設けられています。

とはいえちょっと握りづらさは否めないので、サードパーティー製のハンドグリップを装着したほうが使いやすいかも。

【他の小型軽量フルサイズ機と比較】

このLUMIX S9の一つ大きな特徴として、物理的なシャッター機構を搭載しないメカシャッターレス仕様となっていることが挙げられます。

わたくしの私物カメラSONY ZV-E1も同じくフルサイズセンサー・ボディ内手ブレ補正搭載でEVF・メカシャッターレスですので、並べてサイズを比較してみました。
パッと見のサイズ感はそこまで変わらなそうですが、横から見るとグリップのぶんZV-E1のほうがちょい大きく見えますね。

LUMIX S9は重量約486g、SONY ZV-E1は重量約483gと重さもほぼ同等となっています。

EVF・メカシャッターレスのフルサイズ機としてはほかにもSIGMA fpなどが有名ですが、あちらは重量422gとさらに軽量。

ただし、fpにはボディ内手ブレ補正機構が入っておりません。

また、他には例えばCanon EOS R8はEVF・メカシャッター付きでボディ重量約461gとなっております。

その代わり、このEOS R8もボディ内手ブレ補正は搭載されておりません

【使用できるアクセサリーに制限あり】

メカシャッターが搭載されていない他にも特徴的なのが、アクセサリーを装着するためのシューはあるものの、ストロボを同調させるための電気接点がないコールドシューになっているところ。

写真を撮る時にカメラと連動してストロボに発光タイミング・発光量を指示するすべがないため、ストロボの瞬間光を照明として使うことができません。

S9発表時にここが賛否両論を呼んだポイントであり、確かに明確なデメリットではあるのですが……。

しかし、カジュアルに普段使いのカメラとして使うのであれば「ストロボは使えない」という割り切りもそれはそれでアリだと個人的には思います。

このあたりはメカシャッターなしのデメリットとあわせてまた後述します。
また、アクセサリー絡みでもう一つ述べますと……。

S9には外付けマイクを装着する3.5mm端子は備えられていますが、ヘッドホン端子はありません。

モニタリング用のヘッドホンを接続して動画に入っている音声を確認しながら録画する、といったことはできませんのでご注意を。

録音レベル表示を見て判断するか、ZOOM M3 MicTrakのようなマイク一体型の外部レコーダーを繋いでそちらからサウンドチェックするなどの工夫が必要ですね。

【作例とともにファーストインプレッション】

ここからは実写作例とともに具体的な使用感をお伝えしてまいります。

まずはLUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.を装着して撮影。フォトスタイルはシネライクV2を使用。
コンパクトでズームレンジも広く、非常に好評で品薄が続いているこちらのレンズですが、画質もなかなかいい感じです。

小柄なS9と組み合わせても片手で取り回しが効くため、コンデジの延長線上のような感覚で気軽にパシャパシャ撮れるのが楽しい~!
S9と似たようなコンセプトのカメラであるSONY ZV-E1を使っているわたくしとしても、「やっぱりコンパクトで気軽に使えるカメラはえぇのう」と改めて思いました。

EVFなしでストロボも使えない、と機能面はいろいろ制約がありますが、出先に持って行って気軽に使う分にはやっぱり小型・軽量・コンパクトが正義なんですわ。
続いて、ライカチックなデザインを活かしたかったのでマウントアダプター経由でライカMマウントレンズ・ズミクロン 50/2(第三世代)を装着してみました。

……いいじゃん!
せっかくなのでライカレンズで新しいフォトスタイル・LEICAモノクロームを試してみます。

これまでLUMIXのフォトスタイルで白黒のものはモノクローム・L.モノクローム・L.モノクロームD・L.モノクロームSの4種類がありました。

このLEICAモノクロームは、2023年10月に発売されたLUMIX G9PROIIから新しく追加されたフォトスタイルになります。

従来までの4種類のフォトスタイルと比べて、コントラストが高すぎず低すぎず絶妙なバランスですね。よい。
水面の反射を撮ってみましたが、諧調・質感ともに素晴らしいですね。

ぜひ白黒好きな方に一度使ってみていただきたいフォトスタイルです。
逆光を受けて輝く謎のオブジェクトを撮影。

EVFがないとこういう真逆光のシーンではけっこう辛いのですが、LUMIXはMFピント拡大が見やすいので何とかなりました。

MFピント拡大の仕様はメーカーごとにいろいろありますが、拡大表示の大きさや表示位置を自由にいじれるLUMIXの方式は個人的にだいぶ使いやすいなと感じます。

見た目だけでなく、機能面でもオールドレンズと好相性ですね!

【新アプリ登場で使いやすくなったリアルタイムLUT】

さて、LUMIX S9の目玉機能としてあらためてフィーチャーされているのが、LUMIX S5より実装されたリアルタイムLUTです。

こちらの使用感等々もお伝えしていければと思います。
前述の通り、リアルタイムLUT機能自体はすでにS5IIから搭載されているのですが……。

今回、機能を利用しやすいように専用ボタンが設けられました!

この「LUT」ボタンを押すと、フォトスタイルを即座にリアルタイムLUTへ切り替えることができます

そして、リアルタイムLUTを使いやすくなったこのS9と同時にリリースされたのが新アプリ・LUMIX Lab

このアプリによって、リアルタイムLut機能が使いやすくなっただけでなく、写真・静止画にLutを活用しやすくなりました!

そもそもLUTとは?」というお話からしますと、LUTは「Lookup Table」を略した言葉になります。

Lookup Tableという言葉ですが、Excelなどで使われるのを聞いたことがあるかもしれませんね?

そう、LUTとは「ある入力値に対して別の値を出力する対応表」であり、対応表に応じてデータを変換する計算式のことなのです。

このLUTを画像や映像に適用すると、画像の色や明るさを「対応表」に応じて変化させます。

これにより、画像編集ソフトのプリセット機能のような使い方ができるのがLUTになります。
それではLUMIX Labの画面をお見せしながら機能を説明してまいりましょう。

まず、このアプリでは様々なクリエイターが作成したLutを無料でダウンロードすることができます。

以前から公式サイト・LUMIX BASE TOKYOの「LUMIX Color Lab」よりLutやプリセットをダウンロードすることができたのですが……。

会員登録が必要であり、ダウンロードしたLutをSDカードに保存してカメラに読み込ませる作業も必要であったため、若干手順が煩雑な印象が拭えませんでした。

ところが今回のLUMIX Labは、このアプリとカメラをBluetooth接続して簡単にLut転送・カメラに登録できるようになりました!
こちらはLUMIX Labでダウンロードしてカメラに転送したLut・Teal Flat-Sを使って撮影したものです。

ティール&オレンジという映画で非常によく使われるカラースキームがあるのですが、そのエッセンスを取り入れつつも使いやすくしたようなLutがこちら。

写真の暗い部分や青色の部分の色をティール(青緑)に偏らせ、明るい部分はオレンジに寄せるのがティール&オレンジの色づくりです。

明るい部分と暗い部分で色のコントラストが強くなり、非常にインパクトのある画作りになります。

ただし、場合によっては明暗や色のコントラストがきつすぎる画になってしまうこともあるのですが……。

こちらのLut・Teal Flat-Sは、ティール&オレンジをベースにしながらも程よくコントラストが低くなるような画作りになっており、非常に使いやすくなっています!
LUMIX Labでは、ダウンロードしたLutを用いてアプリ内で画像や動画を編集する機能も備わっています。

その他、トーンカーブなどのベーシックな画像編集機能はひととおり使用可能です。

カメラからの画像転送もだいぶサクサクなので、撮影した画像をスピーディーに編集してSNSなどに投稿できるのはなかなか快適ですね~。

しかも、編集設定からLutを作成してそれをカメラに転送して使用することも可能!

自分好みの色を、撮って出し未編集ですぐ得られるというのはかなり楽しいです!!

【S9のデメリット① フリッカー現象】

さて、ここまでS9の良いところについて述べてきましたが、悪いところについても触れていきましょう。

まず、メカシャッターレス仕様であることが発表されたときに懸念の声が多く上がったフリッカー現象について。

まず結論から言うと、フリッカーはバッチリ出ます

「フリッカー現象」とは、蛍光灯のような人間の目が捉えることができないほどの速さで点滅している光源下で写真撮影したときに起こるものです。

照明が点灯した瞬間と消灯した瞬間が写真に同時に写ってしまい縞模様のようなものが写真に入ってしまうことを指します。

物理的なシャッター機構を用いて露光開始~終了をコントロールするメカシャッター方式の場合、シャッターが動いて露光が完了するまでの時間が光源の点滅よりも早いため、あまりフリッカー現象は問題になりません。

しかし、電子シャッターの場合は違います。

電子シャッターは、CMOSセンサーの1ラインごと順繰りに画素中の電荷リセット→露光→電荷読み出ししていくことで物理的なシャッター機構と同じように露光時間をコントロールして画像を撮影する方法です。

しかし、1つの列が読み出しが完了するまで次の列を読みだしていくことができないという欠点があります。

そのため、最初のラインからスタートして最後のラインが読み出し完了するまでの間が蛍光灯の点滅よりも遅いため、フリッカー現象が目立ってしまいがちです。
ですが、シャッタースピードを蛍光灯の周波数(東日本なら50Hz・西日本なら60Hz)に合わせることで電子シャッターでもフリッカー現象はおさえることができます

そしてISOオートに設定して撮影しているぶんにはフリッカーが出づらいシャッタースピードにカメラが自動で設定してくれます

なので、S9を使っていてもフリッカーをそこまで過剰に恐れなくてもよいとは思います。

ただし、夜景撮影などでISOを高めに設定したまま蛍光灯のある室内で撮ったりするとシャッタースピードが速くなりすぎてアウトな場合も多いです。

わたくしもメカシャッターレスのカメラ(SONY ZV-E1)を1年ほど使ってきて、何度もフリッカーに苦しめられてきた身ですので……。

撮影した画像を随時きちんと見返してチェックしたり、撮影画像プレビュー機能をONにするなどで対策しておきたいところです。

【S9のデメリット② ローリングシャッター歪み 】

続いて、電子シャッターのもう一つのデメリットであるローリングシャッター歪みについてもちょっとだけ説明。

そもそも、先ほど説明した「1ラインごとに順繰りで画素を読みだしていく」方式を「ローリングシャッター方式」と呼ぶのですが……。

前述の通り、1ライン目から順番に読み出ししていくと、トータルの読み出し開始から読み出し終了までにはラグが発生してしまいます。

そのため、素早く動く被写体を撮影する時などは、最初に露光&読み出しした時の被写体の位置と、最後のほうに露光&読み出しした時の被写体の位置にズレが発生します。

これにより、斜めに歪んだような写真が撮れてしまうのがローリングシャッター歪みという現象です。

上の画像は、走っている電車の車内から外を撮ったものですが、ホームゲートが大きく斜めに歪んでしまっているのが分かりますね。
しかし、これは狙って撮ろうとしないと日常的なシーンではほぼ発生しないので、正直そこまで気にしなくて良いのではないんじゃないかというのが個人的な意見です。

非常に高速で動いている被写体を撮ったり、焦点距離の長いレンズで動いてる被写体をアップで撮影したりする場合ぐらいしか気になることはまずないでしょう。

上の写真はホームに入ってくる電車を200mmで撮影していますが、この程度だったらまったくローリングシャッター歪みは発生していないですね。

この程度のスピードで動く被写体であれば問題ありません。

【S9のデメリット③ ストロボが使えない 】

そして最後にストロボが使えないという点について。

これも電子シャッターによるストロボ同調速度の制限があるため「どうせストロボ使いにくくなっちゃうから接点なくそうか」という要因もあるのでしょうが……。

そもそも近年では、安価で高品質なLEDライトが普及したため、動画撮影用の照明はLEDが使われることが多くなっています。

そういう背景からすると、動画分野に力をいれているLUMIXブランドとしては「照明はLEDライトを使えばいい」という「割り切り」は合理的な発想だとわたくしは思います。

もちろん、LEDライトのような定常光はどうしても光量の面でストロボに劣るところがあり、電源確保の大変さまぶしさが被写体へ負担をかけるなどデメリットもあります。

そのため、例えば「バチバチにポートレート撮影したい!」という方にS9はちょっとおすすめできないですね……。

しかし、お出かけ先でテーブルフォトを撮るとか、LEDを一灯だけ手に持ってキーライトにしてポートレート撮影するとか、そういった使い方ならストロボが使えなくてもあまり困らないと思います。

【カジュアルに "遊べる"カメラ】

という感じで良いところ・悪いところをそれぞれ挙げてきましたが、トータルでの使用感は「気軽に使えるカメラでよい」というところです。

撮りたいシーンや被写体によっては不便もあるとは思いますが、ちょっとお出かけする時に持って行って気軽にいろいろ撮りたいという方にはかなりおすすめできるカメラですね。
リアルタイムLUT機能も、LUMIX LabのおかげでLUT入手・登録が容易になったおかげでだいぶ使いやすくなりました。

静止画・写真編集用ソフトでLutが使用できるものはそこまで多くない現状ですので、LUMIX LabおよびリアルタイムLUTでこれまでにない色づくりを体感できるのは非常に刺激的です。また、クラシカルなデザインのボディですので、マウントアダプターでオールドレンズを付けて撮影するのにもぴったり。

「このレンズを付けてこのLUT使ってみたらどうなる??」などいろいろ試せるのがとても楽しいです。
総じていろいろと自分好みにカスタマイズして「遊べる」余地があるのが魅力的なカメラです。

ただし一方で「はじめてカメラ買います!」というユーザーに対して無条件でおススメできるか?は微妙なところかなと。

S9はフルサイズミラーレスとしては比較的お手頃価格となっていますが、+4万円だしたらS5IIも買えちゃうわけですし……。

もちろん、小型軽量・コンパクトという部分ではS9が勝っているところではあります。

しかし、スペックの総合的な完成度が高いS5IIのほうが最初は「使いやすい」んじゃないの?と思ったりしますね。

また、本格的な動画撮影も検討している方でしたら、放熱ファンとヒートシンクの入ってるS5IIのほうが熱トラブルの心配や記録時間制限もないのでおすすめしやすいかなと。

ここら辺は用途許容できるサイズ感などと相談してご検討いただくのが良いかと。
とはいえ「刺さる」方にはバッチリ刺さる製品に仕上がっていると思いますので、発売とともに注文殺到の大人気商品となったのは頷けるところですね。

普段使い」の1台として、良くできたコンセプトのカメラですので非常におすすめです。


ナニワグループオンラインほか各店店頭でもご注文承ります。

現在では供給状況もだいぶ安定してきておりますので、デイリーユースのカメラが欲しい方はどうぞご検討ください!

詰め込みすぎてまた今回も長くなりましたが最後までお読みいただきましてありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう~!

【おまけ】

個人的にスマホ用写真編集アプリとしてLUMIX Labはけっこう気に入ってます。

他社メーカーのカメラで撮った写真も取り込んで編集できますので、試しにLutあててみると思わぬ「化学変化」があって面白いですね。
元画像はこちら。Lut・Teal Flat-Sを薄くあてています。

青色が青緑っぽくシフトしていい感じですね。いい感じに色が「濁る」ことで深みが出ています。

LUMIXのカメラを持っていなくても、アプリだけ入れて使ってみるのも良いと思いますよ!

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