皆さん、こんにちは レモン社 横浜店 島です。
レモン社に勤める前はテレビのスタジオで映像の仕事をしていました私ですが、前職の時に気になっていた、あるレンズを今回レビューしていきます。
唐突ですが、皆さんはシネマレンズという言葉は聞いたことあるでしょうか?
シネマレンズとは、読んで字のごとく映画撮影や動画制作の為のレンズです。
普通のスチル用レンズと違う点として、シネマレンズは基本的にマニュアルフォーカスで
フォーカスリングがスムーズなことが挙げられます。
そしてフォーカスエリアがカチッとしておらず、少し柔らかい表現になります。
詳しい方だと、アンジェニューとかツアイスなどがラインナップしているPLマウントのレンズなどが頭に思い浮かぶかもしれません。
どちらかと言うとあまりスチル機で使うイメージは無いかもしれませんが、最近はミラーレス機の動画機能も良くなってきて映像を撮るアマチュアの方も増えてきましたので、手頃な価格でミラーレスカメラ用マウントのシネレンズも登場してきました。
今回紹介するレンズ、『SIRUI Nightwalker 24mm/1.2 S35』は新品価格が大体5万円ほどの非常に安価ながら開放F1.2の非常に明るいシネレンズ。
センサーサイズがスーパー35用(スチル機でいうところのAPS-Cサイズ)でソニーE・キヤノンRF・ライカL・フジX・マイクロフォーサーズ用と多彩なマウントで発売されています。
SIRUIは、動画撮影をしている方にはもしかすると馴染みがあるかもしれませんが、シネマスコープサイズ用のアナモルフィックレンズや三脚などを作っている中国のメーカーです。
【①外見】
鏡胴は金属製でこの価格帯に対してかなり高級感があります。
驚いたのはその軽さ。
ツアイスなど他の昔ながらのシネレンズと比べてかなり軽く、かなり持ち運びしやすそうな印象です。
流石シネマレンズと思ったのは、フォーカスリングや絞りが羽のように軽いことです。
動かす際に粘りや抵抗感などはなく、するすると動きます。
写真愛好家の中では、ヘリコイドは重いのが好きか、軽いのが好きか論争がありますが、
被写体の動きに合わせてピントを繊細に送る、こと映像の現場においてこの軽さは必須な要素です。
フォーカスリングにギザギザの溝があるのはフォーロフォーカスというガチャポンのハンドルのようなパーツを使って操作するためのものです。
【②昼間の作例】
シネレンズを使った撮影ということで、今回は動画機としての使用を念頭において
カメラはSIGMA fpを使い、カラーモード・ティール&オレンジを適応した撮って出しになります。
fpはフルサイズセンサーのカメラですので、DCクロップ(APS-Cクロップ)設定して撮影しています。
まずは絞り込んでの撮影です。
やや低コントラストな写りのレンズなので、柔らかく色がのってこれだけでもMVみたいな表現になります。
絞った状態でも、パキっとした質感は余り見られず、優しい表現が好きな方にはお勧めな緩い画になります。
逆光耐性は弱く、ふんわりとフレアが現れます。
映像の質感としてこの要素は、決してマイナスな点ではなくむしろオールドレンズに近い表現を求めている方には心地よいかもしれない眠たい表現になります。
最近のシネレンズと言うと、canon のsumireなどわざとフォギーな画になったり、復刻ペッツバールみたいにぐるぐるボケな画になったりと何かと変わり玉がありますが、このレンズは思ったよりナチュラルな画だと感じます。
良くも悪くも値段なりのチープさと遊び心を持った中華レンズといった風合いです。TTArtisanなどが好みの方には、気に入って頂けそうな表現です。
絞り開放近くで撮影するとかなり像のぼやけが激しくなります。
昼間でもこれだけ強く周辺部のぼやけが確認できますので、被写体は真ん中に置いた方がいいかもしれません。
【③夜間の作例】
ナイトウォーカーという名前のように夜の街に繰り出してみました(ハロウィンの季節柄、人が多くてなかなか大変でした……)
ストロボやライトは使わず自然光だけで、先ほどの組み合わせで撮影します。
折角なので知り合いに頼んで軽く被写体になってもらいました。
明るいレンズだけあってストロボ要らずでこの明るさです。
全体的にソフトフォーカスになるので瞳にピンを合わせるのが難しく、使うにはコツがいるような感じでした。
大まかに面で合わせて撮るというのがいいのかもしれません
最短撮影距離が0.3mとなっているので、少し寄って撮ってみます。
顔にかかった暗部のコントラストを見て頂けるとわかりますが、かなり階調が緩やかなので映像制作でグレーディングにこだわりたい方にもピッタリな質感になっています
DCクロップをオフにしてあえてケラレのある状態で撮ってみました。トンネルなんかで撮るとこの表現は楽しいですね
fpでDCクロップモードを使うと記録画素数が約1,000万画にまで減ってしまい、画質がやや心許ないです。
本当はより高解像なfp Lの方がこのレンズにはあってるかもですね
個人的にはポートレートより風景とか、都会のネオンとか撮るのがこのレンズの空気感の良さを活かせるかなと思いました。
【④まとめ】
SIRUI Nightwalker 24mm/1.2 S35の総評としては、撮影していてすごく楽しいレンズという事です。
フォーカスや絞りの送りがスルスルと動かせるので、直感的な撮影体験が出来る事が
なかなか面白かったです。
値段やレンズ自体の大きさも手ごろなのでいつもの機材にプラスして持ち歩いても良いかなと思いました。
初のシネレンズには良い選択肢になりそうです。
ややオールドレンズっぽい写りなので、ビデオっぽさのない「フィルムルックな淡さ」を求めている方にはおすすめの一本かもしれませんね。
ぜひご検討ください。
おまけ
せっかく知り合いに被写体になってもらったので私物のカメラとストロボを使ってポートレート撮影をしました。
撮影したのは深夜でしたが、渋谷は沢山の人が写真を撮っていました(流石ハロウィンの季節ですね……)
これからの季節、長い冬の夜に皆様も楽しいカメラライフをお過ごしください。