フィルムの値段が高騰していく昨今。まだフィルム使うの?と言われ続けて10年。
とりあえず現像が身近でできるのであれば続けようと思う。
と友人に言ってから6年が経ちました。
今もフィルムカメラを使っています、レモン社 銀座店の山下です。
今回は普段使いしている「ライカ M5」をレビューしたいと思います。
【孤高のライカ M5】
ライカ初の露出計内蔵カメラにして、大きさ・見た目・ストラップの吊り方と多くのライカユーザーが今までの見た目と違ったデザインに違和感を覚えたに違いない、独創的なフォルムと操作性。
内蔵のTTL露出計はレンズ装着後に巻上げると下から飛び出すギミックとなっており、他の露出計内蔵カメラにも無いユニークな機構付き。
誰が呼んだか、弁当箱。
そんなM5を「大ライカ万歳!」と大空を仰いでさけんだ、木村伊兵衛先生※。
※シュミットの「独創のカメラ ライカ M5」 カタログより
と、賛否両論のあるM5の特徴を書いていきましょう。
【M5の良いところ】
まずは良いところからです。個人的に使いやすと思うところを順番に列挙していきましょう。
①シャッターボタンと同軸にあるシャッターダイヤル
M3から続くM型の中でも、シャッターボタンとシャッターダイヤルが同軸にあるのはM5のみとなります。
他のM型では慣れている方以外はシャッター速度を設定する際、一度ファインダーから目を離し設定する必要がありますが、M5はそのまま人差し指でダイヤル操作が可能。
ファインダー内に速度表示があるため、目を離さずに操作が行えます。
②追伸式アナログ露出計
ライカの露出計搭載機は、M5以降LED点灯タイプへと変わっており、アナログの追伸式露出計を搭載したモデルは「M5」「CL (ライツミノルタ CL 含む)」のみとなっています。
M5・CL共に巻上げるとCdsアーム(測光部)がマウント中央へと移動し、測光が開始され、M5の場合はファインダー底部に出る黒い針と針をクロスさせると測っている箇所が適正露出となります。
LEDタイプに比べて追伸式は露出の値を判別する際、どれくらいズレているか感覚的に分かりやすいのでオススメ。
③ホールディングが良く大型レンズが使いやすい
大柄のボディのため大型レンズを付けてもホールディングが良いです。これにノクチシリーズを付けるのが夢です。
エルマー L3.5cm/3.5 を付けると北井一夫さん仕様になるそうな。
④3吊り使用は縦吊りも横吊りも選べる
M5の初期は2吊りのみで縦吊りしかできませんでしたが、後に横吊りも可能な3吊り仕様も販売され、ファッション性溢れるカメラとなりました。
⑤巻戻しクランクがベースプレートと一体化
露出計のユニットがファインダーブロックの上に組み込まれているM5は、構造上、巻戻しクランクが他のM型と違い上に取り付けられ無かったため、ベースプレートに巻戻しクランクが設けられました。
ボディ同様、クランクも大型になっているため使いやすく、巻戻し後にそのまま開閉出来るので使い勝手も高いです。
【M5の良くないところ】
そんなM5の欠点はなんぞやと言いますと、
①ストロークが長い
Cdsアームが飛び出して露出を測る方式にしたので、Cdsアームを引っ込めないと写真が正常に撮れません。
このため他のM型に比べ、アームを引っ込めるという動作の後にシャッター幕を走行させています。
これが原因でシャッターストロークが長く、シャッタータイミングがワンテンポ遅れる。ような気がします。
②他にはないファインダーのバルサム切れ
M5のファインダーはM4タイプのように0.72倍(書籍によっては0.75倍)のファインダー倍率の物を使用していますが、他の0.72倍タイプのファインダーブロックと構造が違い、バルサムの貼合わせ面が多くなっています。
これがよく言われる「三日月状のバルサム切れ」です。
ファインダーを覗くと気にならないことが多いですが、バルサム切れは無いに越したことはないですね。
③二重象合致部のバルサム切れ
二重象合致箇所に黒くうねうねとカビの様な物が発生することがあり、多くはバルサム切れです。
M4等にも発生しますが、M5が格段に多い気がします。
こちらは接眼すると見えない三日月と違って、ピント合わせでほぼ必ず見るので精神上良くはありません。
無理矢理応用するとしたら、バルサム切れの形を利用した擬似被写界深度ノッチでしょうか。
玄人の方向けになるかと思います。
④露出計用電池が生産完了品
MR-9タイプの電池を使用しますが、現行当時に使われていた電池はすでに販売終了しています。
使用には関東カメラさんから販売されている電圧変換アダプターか代替品電池をお使いください。
⑤スロー1秒が使えない
M5のスローシャッターは最長1/2秒までとなっております。
1秒をお使いになられたい方は他のM型をお使い下さいませ。
ただ、こいつの露出計はバルブで良ければ30秒まで測れますぜ。
⑥一部使えるレンズが制限される
後玉が大きく飛び出るレンズや沈胴式のレンズを沈胴するとCdsアームに干渉しますのでご注意ください。
沈胴式は沈胴しなければお使いになれます。
ただし個体差はあるかと。エルマー90mmの沈胴タイプを使ったときは相性良くなかった記憶がございます。
使えない代表としては、スーパーアンギュロン。21/4とは使用できず、21/3.4の一部も使用できません。
一部ってことは3.4のなかには使えるのもあるんか?と思ったあなた。
使えますぜ。
先達のライカユーザーの皆様がお調べになったであろう情報がインターネット上にもたくさん載っていますが、あるシリアルNO.以降は使用可能な処理が施されているといった物で、使える物はマウントの形状が異なります。
これはM5のアームがレンズを装着していない状態だと飛び上がらないのを逆手にとったというか何というか、
マウントを円状ではなく、途中で切り欠きを加えてレンズ装着を感知できなくした物が使えるようになっています。
M5のレンズ装着を感知するのはマウント底部にある爪状のパーツであり、レンズをマウントするとこの爪が押され、巻上げていくと内部のパーツが動いてアームを飛び上がらせます。
逆にレンズが無いと爪が押されないため、巻上げてもアームが飛び上がらない。
マウントに切り欠きの処理が施されたスーパーアンギュロン M21/3.4はレンズ装着を感知されないので、使用可能となる様です。
ただし、Cdsアームが上がらないので露出計も使えません。それでも良ければという使用ですね。
↑スーパーアンギュロン M21/3.4 対応型の後玉
ちなみにCL(ライツミノルタCL含む)も似たような露出計を採用していますが、M5とは構造が違うので切り欠きがあってもスーパーアンギュロンを使用できません。
M5で使えないレンズの話で言うと、DRズミクロンのヌーキー(メガネ)も部品が干渉するため取り付けられません。
レンズ本体は装着できるのですが、接写用のメガネは装着できないので近接撮影ができません。
マウントを削る、DR用のヌーキーの部品を一部切断する等の荒技を使用すれば使える物は増えるでしょうが、痛々しいので見たくはないですね。
まあ、色んな制限があったとしても良いのですよ。
【作例】
スーパーアンギュロン M21/3.4 1/250 f8
最後に、M5で撮った写真作例をばっとお見せしてまいります。お楽しみください。
エルマリート M24/2.8 ASPH. 1/250 f8
エルマリート M24/2.8 ASPH. 1/250 f5.6
エルマリート M28/2.8 第二世代 1/250 f2.8
エルマリート M28/2.8 第二世代 1/250 f5.6
ズミクロン M35/2.0 7枚玉 1/125 f4
ズマール L 5cm/2.0 1/250 2.0
ローライ プラナー 80/2.8 HFT 1/500 f8
エルマー M90/4 沈胴 1/250 f5.6
食わず嫌いで多くの方が敬遠されているかもしれないM5。一度使うと手放せなくなる一台になるかもしれません。
ブラッククロームよりもシルバークロームの方が多少レア。
極々稀に出る、ライカの正規修理でM6ファインダー搭載に変わっているモデルは買って損はないです。
お持ちでない方は是非!